昨日は市民相談対応の後、桜木町駅前で公明党の憲法記念日街頭演説会。三浦のぶひろ県代表他がマイクを握りました。憲法改正が目的のような話がありますが、あくまで手段。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の実現が目的。しかし、改憲案を見れば個人より国家優先の内容も。変えた後に日本がどうなるのかわからない現実。それで「改憲○か×か」との問いに違和感を感じます。
ところで、公職選挙法が存在する最大の理由は、民主主義の根幹である選挙を、公平かつ公正に、そして自由に行うため。もしルールがなければ、お金がある人が投票を買ったり、力のある人が無理やり投票させたり、ウソの情報が飛び交ったりして、正しい民意が反映されなくなるため。しかし、先の衆院選でのネット宣伝のあり様は、予算のかけ方等々、公平な環境ではなかったとの指摘が少なくありません。
先日、日経新聞「経済教室」に「選挙期間中の切り抜き動画、アルゴリズム停止も選択肢」と題し、立命館大学の谷原つかさ准教授が寄稿されていました。大変興味深い「一石を投じる」内容だと思います。
○大量の切り抜き動画は政党が制御不可能
○意見の偏りなど問題あるが政治参加促す
○選挙中のアルゴリズム停止要求も選択肢
2月の衆院選では大量の選挙関連の動画がYouTube(ユーチューブ)などのSNS上に投稿された。選挙ドットコムの調査によると選挙期間中の関連動画の総再生数は約28億回と、2024年衆院選の2.7億回、25年参院選の17億回を大きく上回る。
総再生数の84%は政党の公式発信以外の第三者による動画投稿だ。さらに第三者の投稿の73%が政治家などの発言の一部を切り抜く動画である。したがって切り抜き動画を中心に据えて以下の分析を提示する。
まずは選挙戦終盤に筆者が取得したデータにより、ユーチューブ空間を概観してみよう。主に動画のタイトルを参考に「ネガポジ分析」を行ったのが図である。各政党に対する発信を好意的な「ポジティブ」、「中立」、批判的な「ネガティブ」に3分類した。
図からは、高市早苗首相を称賛する動画と中道改革連合を批判する動画が選挙期間中のユーチューブをほぼ席巻していたことが分かる。
報道各社の調査により、「投票にあたってSNSや動画を参照した」人は一定数いたことが分かっている。ユーチューブ空間も少なからず有権者の意識に影響したと考えられるわけだ。もう少し解像度を上げて状況を見てみる。
◇ ◇
注目するのは日本保守党とチームみらいである。まず日本保守党は多くのポジティブ動画が流通したが、議席を獲得できなかった。これは同党の動画視聴者が自らの好みに近い動画ばかりが表示される「フィルターバブル」を形成していたためだと考えられる。
英語圏には、党派性の強い動画はごく一部のユーザーが大部分を回しているという研究報告がある。日本保守党はこのケースだったとみられる。
他方、チームみらいはユーチューブ上での存在感はほぼなかったにもかかわらず、11議席の獲得と大躍進した。近年では珍しい、ネット地盤に頼らず議席を伸ばした新興政党といえる。一部の有権者はいまだSNS以外の要素で投票先を決めていると示唆される。
次に「推し活」にもたとえられる高市首相の人気が自民党の得票に影響したのかどうか。動画サイト上でのポジティブな存在感はもちろん一定の影響はあっただろう。しかし「動画視聴が何回増えると投票確率が何%上がる」かを明らかにするには、綿密に設計した実験や調査が必要となる。
現段階で言えるのは少なくとも2つのメカニズムが重なった可能性だ。第一に高い内閣支持率を背景とした高市首相への需要が先にあり、それに応える形で称賛的な動画が大量に供給された。第二にそうした動画への接触が、一部の有権者、特に無党派層の支持を誘発した可能性である。
まず前者について。ユーチューブでは再生や検索履歴、クリック、視聴継続などの需要シグナルが弱ければ切り抜き動画はレコメンド(おすすめ)されにくい。動画のおすすめには主に再生履歴が使われていることを運営企業の米グーグルは明らかにしている。
つまり高市首相への関心が高かったため、供給がそれに応えた面があったことが示唆される。
では動画への接触は無党派層の投票を誘発したのか。メディア研究の伝統的な知見から推測すると、既に他党への投票意向を固めていた層への波及は限定的だっただろう。
その上で無党派層には一定の影響を与えたと考えられる。日本の無党派層は有権者の3〜5割ほどといわれる。5%でも動かせば200万票前後が動く計算だ。政党にとって切り抜き動画の拡散は、無党派層にリーチするかどうかが勝負の分かれ目になりそうだ。
動画プラットフォーム上のトレンドは、2024年ごろから国民民主党↓参政党↓高市首相(自民党)と目まぐるしく変化してきた。このうち国民民主の再生数は図で下から数えたほうが早い。24年の衆院選直後は同党の玉木雄一郎代表がユーチューブ空間をほとんど”ジャック”していた。選挙動画の消費サイクルが短いことがわかる。
第三者による切り抜き動画は様々な動機で個人が投稿している。政党側が体系的にコントロールするのは難しい。政党は新しいメディア環境を踏まえた上で有権者とのコミュニケーションを模索する必要がある。
◇ ◇
ユーチューブ空間を占拠する切り抜き動画は、メディア報道で否定的に扱われることが多い。どう考えるかは人それぞれだが、考える手がかりを記しておく。
第一にテレビやネットメディアを切り抜いた動画は著作権的にはかなりグレーである。ユーチューブの規約では権利者が申し立てれば動画は削除されることになっている。著作権の問題がある内容が政治系動画に多いことは、今後議論が必要だろう。
第二に問題は偽・誤情報や誹謗(ひぼう)中傷だけではない。切り抜き動画の長所は情報を短く、見やすく、拡散しやすくする点にある。これは裏返すと文脈の切除になる。発言の前後関係や論点の全体像が落ちれば、明白な虚偽でなくても受け手の印象は変わる。
つまり規約違反として処理できる明白な虚偽やハラスメントと、そうではない印象操作の間にグレーゾーンが広がっている。これはマスメディアにもある程度当てはまる問題だ。
第三に最も難しい問題は、ネットの動画空間が特定の意見に偏っていてよいかどうかである。
25年参院選、26年衆院選では20〜30代を中心に投票率が上がった。政治への関心が薄い層が動画を見て投票に向かったのかもしれない。たとえ偏っていても、政治参加を促しているならば、動画を一概に非難することもできないだろう。
その上で動画の視聴者はアルゴリズムによるおすすめといった、自分の見る動画の基本的な仕組みを知っておく必要がある。これは情報環境に対して自覚的になるということだ。
与野党は偽情報や中傷への対策として、選挙期間中は選挙関連動画から収益化できなくする案などを検討している。これには執行可能性に様々な課題がある。
第一に「選挙関連の動画」が何を指すのかという点だ。提案者は匿名の切り抜きチャンネルを想定していると考えられる。しかし選挙コンテンツを作成するネットメディアや、既存メディアの選挙関連動画をどう扱うのだろうか。これらを例外とするならば、規制対象の動画の線引きは非常に難しくなる。
第二に期間の問題もある。線引きするなら公示日から投開票日までに投稿された動画が対象になると考えられる。しかし公示前に投稿された動画の扱いも検討しなければならない。
筆者は別案も選択肢と考える。選挙期間中はアルゴリズムをオフにするなどの対応を求められないか。アルゴリズムが働かなければ、偏った動画が嵐のようにおすすめされる現象はかなり抑制される。これならば表現の自由との緊張関係も比較的浅いだろう。