前立腺がんと転移対策について 6482
昨日は市民相談対応の後、区内各地の夏祭りへ。今週、年に一度の人間ドックで内視鏡検査や前立腺がん検査など行いました。結果が出るまで分かりませんが、問題なさそう。検査は大事です。
先日、日経新聞コラム「がん社会を診る」に東京大学の中川恵一特任教授が「転移を検査で見える化」と題して寄稿されていました。
「前立腺がんは日本人男性のがんのトップで、男性の9人に1人が罹患(りかん)します。放射線治療の対象となるがんのなかでも、乳がん、肺がんに次ぐ第3位です。
東大病院では5回の通院で治療が完了します。治療に要する時間は入室から退出まで7分あまりで、患部の温度上昇は5百分の1度程度ですから何も感じません。仕事と治療の両立にもピッタリです。
私が非常勤で勤務している栃木県の宇都宮セントラルクリニックで、前立腺がんの検出に有効なPSMA-PET検査が始まりました。おそらく、東日本では初めての実施施設だと思います。
前立腺がんの根治治療には手術と放射線治療があります。治療後はいずれも腫瘍マーカーであるPSAを用いて経過観察を行います。数値が上昇しなければ再発の可能性はほぼないといえますが、値が上昇した場合には再発転移の可能性を考える必要があります。
したがって、本当に再発があるのか、あるとすればどこにあるのかを調べることが重要です。前立腺がんは骨やリンパ節に転移しやすいので、磁気共鳴画像装置(MRI)や骨シンチグラム、FDG-PET検査などが行われますが、再発の場所が特定できないことがしばしばあります。
再発転移の場所が分からなければ、全身に効果が期待できるホルモン療法や抗がん剤などの薬物療法を実施するしかありません。あいにく多くの場合、薬物療法は数年で効かなくなります。
PSMA-PET検査では、前立腺がんの細胞に特異的に発現する「前立腺特異的膜抗原」(PSMA)に親和性を有する薬物に放射性同位元素を結合させたものを投与します。この新しいPET検査によって、従来は診断できなかった転移巣を可視化できるようになりました。
転移病巣の数が少ない状態(オリゴ転移)であればピンポイント照射(定位放射線治療)を行うことができ、わずかな副作用で生存期間を延長することができます。海外ではすでに、根治治療後のPSA再発が疑われる場合にPSMA-PET検査が推奨されています。
実際に私の患者にこの検査を実施したところ、転移の部位が非常に明瞭に描出されて驚きました。従来の検査では難しかった前立腺がん治療後の再発の診断に、非常に有効な検査だと実感しています。
ただ、PSMA-PET検査は保険承認されていないため、自費診療となります。再発転移の場所が特定できると、薬物療法に加えて放射線治療も選択肢に入るため、大きなメリットとなります。早期の保険承認を期待しています。」
ネットで見ると自費検査料金は20万円~25万円のようです。ぜひ、保険適用にして欲しいと思います。