ロシア・ウクライナ戦争 「そもそも原因は何だったのか?」について 6352
昨日、横浜市の令和6年度予算が成立しました。着実な執行で、より良い横浜を目指します。
「そもそもこの戦争の原因って何なの?」とは高校を卒業した息子の言葉。終わりの見えないロシア・ウクライナ戦争。ロシアが侵略したのは事実。当然ながら許されません。只、ある日突然、何事もなくロシアが侵攻を始めたかというとそうでもない。日本のメディアでは開戦後の情報は様々ありますが、なぜか開戦前にウクライナがロシアに挑発を続けていた事実を殆ど報じません。何事にも原因があります。開戦後はは変化の連続ですが、そもそもこの戦争の原因は何だったのか?「侵略した奴が悪い」のは当然として、「戦争を止める」ために、そこで思考を止めては適当な判断ができないように思います。
2022年2月開戦の4か月ほど前から「きな臭い」報道が出始めていました。改めて確認したいと思います。
2019年5月、コメディアンだったゼレンスキー大統領の就任時の支持率は75%超。絶大な人気を誇りました。しかし、翌年には30%台に。
2021年10月上旬、世界中を駆け巡った「パンドラ文書」問題。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した資料から、世界の政治指導者らがタックスヘイブン(租税回避地)を利用した取引にかかわっていたことが明らかに。そこにゼレンスキー大統領の名も含まれ、支持率はさらに落ちていきます。
その後、2021年10月26日、ウクライナ軍は紛争地域で親ロシア派にドローン攻撃を実施。ゼレンスキー大統領は「ミンスク合意2」の破棄を表明。元々、大統領はこの合意には反対していたそうです。
「ミンスク合意」について。ウクライナのドネツク州、ルガンツク州で親ロシア派住民との間で続いていた内戦。2014年に前大統領の時にドイツとフランスの仲介で「ミンスク合意2」(2度目の合意)により停戦。この合意は、国連に登録され、国際社会に認められた合意書となっています。ここが両国交渉の出発点かと思います。
ウクライナ軍が行ったドローンによる攻撃は、ミンスク合意2が強化された2020年7月に協定違反となっていたため、ウクライナは欧米諸国からも批判を受けます。この禁止行為がロシアが軍事行動を起こす原因なったともされています。
開戦直前、支持率は17%まで落ち込む。しかし、開戦後は90%を超える急上昇となります。
いずれにしましても、戦争が続く限り、人は死に続けます。「ウクライナに勝利を」との気持ちはわかります。只、勇ましい西側の報道はあるものの、圧倒的な軍事力の差。当初から殆ど奪還できていない領土。米国もEUもウクライナが勝利するほどの武器は供与しない「管理された戦争」。その上、今秋の大統領選挙次第で米国はこの戦争から手を引くともされている現実。そして、米国・G7の優位性が低下を続ける世界経済情勢。
個人的には、勝ち目のない戦争で死者が増え続けているということが現実ではないかと思います。
そうした現実を前に、日本の報道などでは「こういう状況で、今後の戦況はこうなるでしょう」「ロシアが悪い」といった話はあるものの、「どうしたら止められるか」とか、「何とか止めよう」とする意志を感じません。
ゼレンスキー大統領と同じように「勝つまで戦う」とする考え方や、「今こそウクライナに日本の武器を送れ」とする主張がある一方で、「ロシアに譲歩するようなことは言えない」ので、このまま「仕方ない」とするしかない、との考え方もあるかも知れません。
しかし、それでは死者が増えるばかり。
何を優先するか。死もやむなしか。人の死を止めるか。究極の選択において価値観が問われます。
いずれにしましても、戦争は両国の問題。「火薬庫」などと称される場所で、「現状変更」を求めて行動した場合、火がついてしまいます。それを止めるには、双方がその後の変化、結果を受け入れ、「折り合い」をつけるしかありません。
現実的に、元に戻す、ということは極めて困難だと思います。
やるべきことは「戦争を止める」「早期停戦」だと思います。
私の知る限りですが、開戦前から国内外の情報をもとに継続的に事実を示してきたのは作家の佐藤優氏でした。佐藤氏の見解を否定的に捉える話はあるものの、示されているこれらの事実について、否定した見解を聞いたことがありません。
同氏が出演したラジオ番組からです。わかりやすいので引用させて頂きます。(2022年2月20日開戦前の2月4日に放送された文化放送くにまるジャパン極から)
野村邦丸アナ「ロシア、ウクライナ国境、これが非常に緊迫状況にあるという情報がどんどん入ってきてますが、佐藤さんいかがですか?」
佐藤「たしかに情勢は緊迫してますけど、その原因は双方にありますね。ベラルーシにロシア軍を大量に展開するのは、NATOがポーランドに追加的な派兵をするから。そういったことを言ってるアメリカ軍が大規模な派兵をするなら、それに対抗していこうという要素が強いですね」
邦丸「対抗措置ですね」
佐藤氏は、今回の問題のきっかけとなったウクライナの東部のドネツクス州とルガンスク州について解説する。
佐藤「ウクライナが最初に、ロシアが攻めてきて大変だと言ってるんだけれども、実はウクライナの国境に10万人のウクライナ軍を配備してるんですね。問題の根源はドネツクス州とルガンスク州というところ。ここは住んでる人はロシア系の人で親ロ派の武装勢力が実効支配してるわけです。その人たちはウクライナから離れてロシアに行きたいと思ってるんですね。ただ、プーチンは併合するようなことはしてない。ただし、ウクライナはそこに無人飛行機を飛ばしたりしてかなり挑発してるんですよ」
では、ロシアを挑発するウクライナのゼレンスキー大統領はどんな人物かというと…
佐藤「ゼレンスキー大統領というのは、ポピュリストなんです。元々はコメディアンで政治的な経験は全くない人。ナショナリズムに走って、今、ロシアに占領されてる地域はウクライナの支配の元に戻すんだということで、ドローンを飛ばして挑発を始めた」
これに対し、ロシアのプーチン大統領はどう思っているのか?
佐藤「去年の時点で35万人がロシア国籍を取っていますから、その人たちが武器を取って戦うわけです。その人たちを見殺しにしたら、同胞を殺したということでプーチン政権は危うくなるわけです。ですから親ロ派が支配している地域に軍事的な進攻をするならば、対抗措置で自分たちの軍隊を入れるぞ!と脅してるわけです」
もし、ウクライナが進攻してきたらどうなるのか?
佐藤「ウクライナが引き金を引いたら、ロシアはすぐに対抗措置を取ります。ですから、今、客観的にやめさせなきゃいけないのは、ウクライナの動きなんです」
さらに佐藤氏は問題解決にむけてこのように話す。
佐藤「親ロ派武装勢力が実行支配している地域はとりあえず現状のままにするという合意がロシア、ウクライナ、親ロ派武装勢力、フランス、ドイツの間で結ばれてます。この合意に従って現状を維持しておけば今回の緊張は解消されるわけです。今回の混乱を冷静に見ると、ウクライナのゼレンスキー大統領のドタバタ。そこにみんなが振り回されてる感じですよね」
続いて、開戦直前の2022年2月18日の文化放送くにまるジャパン極で、緊迫するウクライナ情勢について、解決の鍵を握る「ミンスク合意」について解説されていました。
野村邦丸アナ「ミンスク合意、最近よく耳にするんですけど、佐藤さん教えていただけますか」
佐藤「2014年、2015年、にミンスク合意というのがあります。今、親ロ派勢力が侵攻している地域、これは今のままにしておく。それでその地域で自由な選挙をOSCE(欧州安全保障協力機構)がきちっとしているところで公正な選挙をやってそれで政府を作ると。それでウクライナは特別の統治を認める。だから、自治州あるいは自治共和国みたいなものを作るということですね。それが決まったところで、ロシアが国境警備をウクライナに移す。こういう話です」
邦丸「これは合意しているわけですね」
佐藤「2014年の合意は、ウクライナの大統領とロシアの大統領とドネツクとルガンスクのトップ。ところがその合意をしても全然お互い、言うことを聞かない。翌年、フランスとドイツが相談して前年のミンスク議定書に基づいて新しい案を作って、それにロシア、ウクライナが加わって本部が出来るんです。それを実行するための付属文書が出来まして、その付属文書にはロシア、ウクライナ、OSCE、ドネツク、ルガンスクの代表が肩書なしで署名してるんです。だからみんなこの文書、合意してるんですね。しかも国連で登録されている条約になってますから拘束力を持つんです」
佐藤氏によると、この合意を守っていないのがウクライナだという。
佐藤「ウクライナの今の大統領のゼレンスキー氏が言っているのが、“条件が変わった、ウクライナ国民がミンスク合意は認められないからこれじゃできない、誰が署名したのか知らない”ということ。署名したのは前の大統領。外国と約束したことは守らないといけないわけですよ」
さらにこう続ける。
佐藤「平和維持のためには、ミンスク合意とウクライナ政府がドネツク、ルガンスクの代表と話し合わなければいけない。しかし、ウクライナ側はそういう連中とは話ができないと言って一切対話することを拒否してるんですね。ウクライナの態度にすごく問題があると思うんです」
最近では、EUにおいてフランス・マクロン大統領の主戦論が目立ちますが、EU全体がまとまる雰囲気はないようです。
他方、トランプ前大統領が返り咲けば「すぐに手を引く」とされているようで、先月の米FOXニュースのタッカー・カールソン氏によるプーチン大統領へのインタビューを見ると、停戦に向けての動きが出てきているようにも感じます。このインタビューも世界では注目された内容でしたが、日本ではあまり取り上げられず、またあったとしても気持ちが入りすぎていて、客観的な評価報道はあまりなかったように感じました。
一般論ですが、事実をもとに、客観的な判断ができないと、正しい選択ができなくなります。
あくまでも個人的な印象ですが、日本の多くの報道はかなり米国寄りという感じで、敗戦の歴史からそれこそ仕方ないのかも知れませんが、どうも当初からバランスが気になります。そして、ニュースやTV番組も、どうも勇ましい方向にもっていこうとする傾向が強いように感じます。
与えられた憲法で骨抜きにされた「弱腰の日本」などとされようとも、「平和国家・日本」としての独立国家としての目指すべき姿があると思います。よって専守防衛のため自衛を強化するにせよ、他国の戦争に行って一緒に戦うことを前提とした軍備増強などは反対です。
戦後教育を受け、国際協調の中で平和と豊かさを求める国に生きてきた日本人は、普段は黙っていても、そう考える方が大多数ではないかと私は思います。様々な課題はあっても、現在の平和で豊かな現実を、国のために武器をもって「現状変更」することは求めないと思いますし、それが日本人の民意ではないかと思います。
ロシア・ウクライナ戦争は2国間の争い。どうするかは両国で決めること。
この戦争で日本の武器により殺された人はいません。佐藤氏は、殺傷能力ある武器を出してこなかった日本には、(止めるために)果たせる役割があるともされていました。そう思います。
この先は、「続けることやむなし」でなく、停戦に向けて両国、国際社会が協力して欲しいと願っています。