昨日は来年度予算に関する打合せ等の後、幼稚園協会新年の集いへ。能登半島地震に対し、消防、給水、インフラ復旧、行政サービス支援等のため700人を超える横浜市職員が現地に入っています。自衛隊も災害派遣を実施。半島という地域性もあり、人命救助や被災者支援は困難を極めています。自衛隊は被災自治体との連携だけでなく横浜を含め全国から応援に駆け付けた消防、警察、自治体職員とも協力しながら任務を遂行中。400名を超える横浜市消防局のメンバーも一緒に行方不明者の捜索等の活動をしていますが、映像を見るとその困難さがわかります。
公明新聞が自衛隊の災害派遣の現状と課題について、静岡県立大学・小川和久特任教授へのインタビューを掲載しました。小川先生と言えば、日本を代表する軍事アナリスト。地に足の着いた、事実に基づくバランスの取れた分析。多数の著書から学ばせて頂いてます。ご紹介します。
■(能登地震の対応)逐次投入批判は誤り/御用聞き隊員も投入
――今回の災害派遣で「部隊を小出しにする逐次投入ではないか」との批判がある。
小川和久特任教授 災害では敵ではなく地形との戦いという問題が出てくる。個別特殊な事情に即して語るべきことを、大部隊を一気に投入すべきとの一般論で語るべきではない。
狭い半島で、道路は寸断され港も少ない。まずは被災地へのアクセス確保が必要だった。さらに、部隊の早期展開と同時に、大規模な部隊と重機を投入できる環境も整えなければならなかった。この事情を知らずに一般論で逐次投入と言うのは的外れだ。
自衛隊はシー・ベーシング(海上基地)を実施するため、大型輸送艦「おおすみ」を派遣した。そこから、浜辺に直接乗り上げて荷物を降ろすことができる搭載量70トンの大型ホーバークラフト(LCAC)で重機などを輸送する態勢ができた。これは、海上自衛隊と陸上自衛隊が伊豆半島などの防災訓練で何回も実施してきたことの成果だ。
――2日には1万人の統合任務部隊を編成した。
小川 その中には被災者のニーズを聞き取っていく“御用聞き”の隊員が400人含まれている。必要物資をどんどん送り込むプッシュ型支援ではニーズの把握に課題が残りがちだ。その解決のために、自衛官が避難所から無線で実施すべき優先順位を伝えていた。
■(自治体との連携)機能する体制整備へ「顔の見える関係」を
――被災自治体と自衛隊の連携で大事なことは。
小川 私は2012年春から静岡県の危機管理に関わっているが、連携の重要性はずっと言い続けている。
自衛隊は国防のために同じ訓練を年がら年中、繰り返している。それが災害にも生かされる。自治体にはそうした文化がなく、災害対応の態勢をつくっても、それが実際に機能するかどうかのチェックがないまま人事異動で人が替わってしまう。一からやり直しの繰り返しだ。
また、自治体と消防、警察、自衛隊との連携について、それぞれの関係部署との連絡体制の構築だけで終わっている。そうではなく相手の名前や階級を把握し、実際に対話を重ねた「本物の顔の見える関係」の構築が必要だ。
私が米国のロサンゼルス市で危機管理の調査をしていた時、火災現場に向かうヘリと消防車の乗員が、お互いにファーストネームで呼び合っていた。ロサンゼルス市では自治体と消防、警察、州兵(州の軍事組織)が、時に簡素な会食会をして「顔の見える関係」を維持していた。
実際に機能させるためには人間関係をつくることが基本だ。形だけの機能しない防災システムにならないようにする必要がある。
――今後の連携で実現させたいことは。
小川 能登でも部分的には実施されたが、自衛隊の車両や航空機、艦艇に消防、警察の人員・装備を乗せて投入できるようになると良い。
消防、警察、自衛隊は被災地での任務は異なるが、移動手段としてなら自衛隊の大型ヘリや艦艇、車両などの装備を使った方が効率的だ。必要に応じてその逆も実施されるべきだ。
■(危機管理の思想)陸自の適正な規模を議論するために必要
――災害多発の日本で、自衛隊は国土防衛と災害派遣をともに「本来任務」としている。今の自衛隊の体制で人員、装備は足りているのか。
小川 これは危機管理の思想が問われる問題だ。阪神・淡路大震災後にロサンゼルス市に調査に行った時、日本にはこの思想が欠けていることが分かった。消防も警察も自衛隊も災害時は同じ動きをする組織だと皆が思っていた。
米国で分かったことは、消防、警察は、陸上競技でいうと短距離ランナーで「ダッシュ力」が問われる。どの町にも組織があり、人命救助のために分単位で被災地に飛んでいくことができる。
一方の州兵はどの地域にも拠点があるわけではなく、すぐには被災地に来られないが、誰も「遅い」とは言わない。軍事組織には自力で活動できる自己完結能力が備わっている。期待されるのは最低でも2週間をめどに被災者支援や災害復旧に当たる「持久力」だ。
こうした理解の上で、自衛隊の災害対処能力について考え、定員や予算を決めなければならない。国会で議論して政府を動かすべきだ。
――陸自ならどれくらいの規模が想定されるのか。
小川 陸自の定員は現在約15万人だが、大規模災害の時の最後の砦として世界で6番目に長い海岸線を持つ日本列島に要員を張り付けるなら約25万人必要とされる。いきなり25万人はとんでもない話だが、消防、警察との関係をきちんと整理して国民に問い掛け、進める必要がある。
国民の理解が得られて、少なくとも18万人になれば、国の防衛の任務も放棄せずに災害派遣にも対処できる。
消防、警察を増やしても陸自に期待される任務はこなせない。その問題を考えておくべきだ。
――その他に、消防、警察との連携で必要なことは。
小川 消防は市町村消防、警察は都道府県警察、自衛隊は全国組織であるため、多くの自治体にまたがった大規模災害になると調整が必要になる。少なくとも消防を都道府県単位に再編し、必要な能力を発揮できるか自衛隊、警察との連携のもと、リアルにチェックすべきだ。急ぎ検討すべき課題だろう。
■能登地震での自衛隊
1月1日16時10分頃、石川県能登地方を震源とする最大震度7(マグニチュード7.6)の地震が発生。自衛隊は16時30分以降、自主派遣の災害派遣により航空自衛隊が航空偵察を実施した。16時45分に石川県知事から陸上自衛隊第10師団長に災害派遣要請があり同時刻に受理した。
自衛隊は1日から、各県からの消防、警察の応援部隊の被災地への輸送を開始、2日の10時40分に陸自中部方面総監を長とする、陸海空自衛隊約1万人態勢の統合任務部隊を編成した。
■災害派遣の法制
自衛隊の任務は自衛隊法第3条に「自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする」と定められている。これがいわゆる「本来任務」と呼ばれている。
「本来任務」は「主たる任務」である日本防衛と、必要に応じて公共の秩序の維持に当たる「従たる任務」で構成される。
災害から国民の生命・財産を守る応急的な救援活動である災害派遣は「従たる任務」と位置付けられている。しかし、「主たる任務」の防衛出動が1度も発令されたことがないのに対し、災害派遣は年間500~600件(その大半は、急患輸送)も実施されている。
災害派遣は要請に基づいて実施されるのが原則である。要請ができるのは都道府県知事であり、その他には海上保安庁長官や空港事務所長も可能だ。これに対し、防衛相による災害派遣命令や、派遣要請を予期した部隊長の判断による自主派遣も可能になっている。また、基地や駐屯地の近くで発災した場合の近傍派遣もある。
派遣要請が原則となっている理由として、2023年版『防衛白書』は「都道府県知事などが、区域内の災害の状況を全般的に把握し、都道府県などの災害救助能力などを考慮したうえで、自衛隊の派遣の要否などを判断するのが最適との考えによるもの」と説明している。
要請を受けた防衛相などは、3要件(緊急性、非代替性、公共性)を総合的に判断し、やむを得ない事態と認める場合に派遣をする。」
冒頭の「部隊を小出しにする逐次投入ではないか」との政府批判。これは立憲民主党の泉代表の発言。その後、小川先生の指摘の通り、各紙が専門家などの声を通して、現場を知らない無知な発言等と一蹴しました。
ある自衛隊関係者は「自衛隊の最高指揮官でもある総理大臣の椅子を本当にねらうのなら、軍事の“いろは”、特に兵站の大事さを勉強すべき」(JBpress)と指摘。
被災地復旧のために全力を尽くす今、適時適切なリーダーシップが求められます。
立憲に政権担当能力などないことを露呈した一件だったように思います。