「ベーシックサービス」について 5767
昨日、金沢区の並木中学校で横浜市総合防災訓練が行われ参加しました。行政、企業団体、市民の力があってこそ守られる生命・財産。安全・安心は生活の基盤。
一昨日、公明党青年委員会主催の勉強会がリモートで行われ、「ベーシックサービス論からみたソーシャルワークの重要性 〜福祉と自治が響き合う社会をめざして~」と題し、慶應義塾大学経済学部・井手英策教授のお話を伺いました。
ベーシックインカムは全国民にお金を提供する政策ですが、ベーシックサービスはお金を提供するのではなく、子育て、教育、医療、介護、障がい者福祉など、誰もが必要とするサービスを無償化するというもの。必要な人に必要なサービスが届く。所得制限はいらない。人類史的な課題への現代的な対応。
税負担が増える代わりに、例えば大学授業料無償化、介護無償化で個人の負担をなくす。国民皆が安心して暮らせるよう国が責任を持つ。「できるのか?」となりますが、国民のニーズに応え、不安を解消するに足る、現実的なアプローチだと思います。下記はメモです。
生まれてから死ぬまで病院に行かない。学校に行かない。そういう人はいない。全ての人が必要とするものを提供するのがベーシックサービス。全ての人の幸せ、誰もが安心して生きていける社会の基礎となるもの。
日本人の下流と認める人は4%で、93%の人は自分は中流だと思っている。まだ大丈夫だ、自分の責任で生きていけると思っている93%。中間層意識は先進国の中で日本が圧倒的に多い。
(報道される事件・事故を見て、日本は経済的、精神的に余裕のない社会になっていないか。他者へのかかわりを避け、利己的な面が強くなっていないか)
(弱い立場とは何か?中流とは、中間層とは何か? 平均年収、中央値は下がり続ける一方、物価上昇が続く中、教育、介護、医療、住居等、自分の力で何とかなる中流なのか。そうした日本の社会であり続けられるのかどうか)
NHKも加盟し、世界約40か国で様々な調査を行っているISSPの国際比較調査の結果から日本を見る。
下記は反対者の割合を示しています。
政府が「病人が病院に行けるようにすること」に反対するとしている人の数 日本は35か国中1位
政府が「高齢者の生活を支援すること」に反対 日本は35か国中1位
政府が「失業者のくらしを維持すること」 日本は34か国中2位
政府が「所得格差を是正すること」 日本は35か国中6位
政府が「貧困世帯の大学生への支援をすること」 日本は35か国中1位
政府が「家を持てない人にそれなりの家を与えること」 日本は35か国中1位
一方で、OECDの調査結果から、給与で所得格差を小さくする力は、日本は21か国中19位
課税で所得格差を小さくする力は、21か国中21位
驚きの結果。要するに、自己責任を求めながら、弱い立場に置かれた人たちへの無関心さが際立っている日本であることを示している。
93%が自分は中流だと信じる日本。それは、救済主義=格差是正論は限界だということを意味する。
格差は少なくすべきだが、貧しい人にお金を能えば格差は小さくなる。金持ちに課税すれば格差は小さくなる。しかし、どこまでやったらいいのかわらないのが現実。当然ながら、共産主義が目的ではない。必ず格差は残る。どこまでやるかを示さず、格差是正を訴えるのは無責任。
格差があるかないかが本質ではない。貧乏だから病院に大学に行けないというのは間違った格差。全ての人が望めば競争に参加できる社会をつくる。その基礎がベーシックサービス=品位ある最低保障、品位ある命の保障。
このための財源論も明確。増税してうれしい人はいないが、例えば、大学授業料無償化(2.5兆円)+介護自己負担無償化(0.9兆円)=消費税1.2~1.3%がかかる。100円のものを買ったときに103円になるが、その3円で大学授業料が無償となり、介護費用の心配もなくなるということなる。目的を明確にして生活を守り、安心につなげる。
生活保護は人権。恥ずかしい金ではない。でも人から助けられるということが、どれほど人の心を傷つけるか。助けられる人には屈辱が刻み込まれる。穴を埋めていく。誰も落とし穴に落ちない社会をつくる。弱者を生まない社会をつくりたい。だから絶対に保証しなくてはないものがある。品位ある最低保障とは、最低限の保障のことではない。
例えば、高齢者となり、年金生活をしていても、将来の介護費用が不安だから働いているという人がいる。ベーシックサービスを整えれば、安心して老後を送ることができる。
ベーシックサービスを無償化する。しかし、それだけでは足りないものがある。これをやったからといって、地域の中で孤立している人が幸せになるわけではない。引きこもり、不登校はベーシックサービスで救えない。外国人、障害者等々、ベーシックサービスで人権は守られない。
人と人の間で生きている人間、ベーシックサービスには限界がある。ソーシャルワークの必要性を強調。人々や様々な構造にはたらきかけることが大事との力強い主張。
ベーシックサービスと品位ある命の保障は、最小コストで最大幸福を目指す。
自分と他者の幸福を交響させ、人間の偉大な力をさらに発展させると展開されました。
これまでも公明党としてベーシックサービスについて取り上げ、消費税を財源に幼児教育保育の無償化を実現してきました。当初は反対の声もありましたが、現在ではこの無償化が良かったと半数上の方が朝日新聞の調査でも評価しています。今後さらに幅を広げ、政策の中核になっていくであろう話だと感じました。
昨日の防災訓練でも消防団の皆さんが活躍されていましたが、全国的にも人手不足は深刻な問題。ここにもベーシックサービスとしての取り組みの必要だと思います。
大変勉強になりました。何より感動したのが、井手先生の「熱」と「力」。そして「勇気」。
何のために学ぶのか。何のために体裁や恥を捨て、沈黙でなく発信し、学者として闘うことを決めたのか。伝わりました。
言葉だけではない「行動の人」。
世のため、人のために「言論で闘う」。議員が最も見習うべきことだと感じました。