「ウィズコロナへ成熟社会」について 5439
昨日、コロナ関連の追加議案が上程され本会議。中島光徳議員(戸塚区)が議案関連質疑に登壇。抗体カクテル療法の対応等が議決され、緊急要望してた内容をはじめ、公明党の主張がカタチになりました。
先日、日経新聞に内閣官房参与で川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長が「ウィズコロナへ成熟社会」と題して寄稿されていました。感染症の専門家とされる方々の中で、個人的には最もバランスのとれた説得力のある話をされる先生だと思います。
「流行開始から1年半。他国もそうだが日本はことに新興感染症を被った経験が乏しく、落ち着いた対応ができなかった。2009年の新型インフルエンザ流行の教訓から公衆衛生対策の必要性は指摘されたのに十分実行されてこなかった。
例えば保健所や地方衛生研究所は統廃合が進み縮小傾向にあった。検査や医療、保健所の体制に危機管理的な発想が少なかった。目の前の問題の対処に終始してしまった。
だが現状は欧米諸国に比べると重症者数や致死率は低く、テレビなどでみるような救急車の大行列や暴動などの混乱はなかった。質のよい医療をぎりぎり提供できたともいえるだろう。
コロナは人の病だけでなく社会の病になってしまった。休業補償、救済措置など医学的な処方箋では解決しない問題がある。社会経済、教育や政治、国際経済なども関わり複雑化した。基本的に感染者数全体を少なく抑える必要がある。ワクチン接種が進んでも感染規模が大きくなれば一定数、重症者や死亡者が出る。
ロックダウンのような厳しい措置を可能にすべきだとの意見もあるが、強い規制を課すことには慎重であるべきだ。対策が不十分なごく一部の大規模イベントでクラスター(感染者集団)が生じたからと一律にすべてのイベントを規制すれば、きちんと対応した事業者に大きく影響するし楽しみもなくなる。仮に強い規制を設けるにしても運用は慎重にあるべきだ。
厳しい規制で一度失った自由を取り戻すのは大変だ。個人が自制できるのが成熟した社会ではないか。個人の自覚も必要だ。
例えば飲食や花見が全部禁止ではないけれど、大人数での宴会は避け、換気などの感染対策を励行する、短時間にとどめるといった自制ができる方が望ましい。規制の検討も必要だが、理想に社会を近づけていく努力も忘れてはいけない。
ワクチンはまずは2回目接種の完了が大事だ。ブースター(追加接種)の必要性は出てくると思うが、落ち着いて医学的にみていく必要がある。効き目に影響する変異型も出ているが3回目の接種をしないと意味がないという段階ではない。インフルエンザのように毎年接種を受けるものもあれば、数年に一回でよい感染症もある。研究調査を続けないといけない。
一部に接種を避ける動きもある。個人や身近な家族へのメリットを明確に発信する必要がある。高齢者や小児を守る効果もあるが、自分への利点がわからないとなかなか進まない。リスクとベネフィットの観点から私は接種を勧めるが、接種したくない人は無理しなくてもいい。ただ接種しない人は特に感染対策を実践してもらう必要はある。
このウイルスが完全に消えることはないだろう。コロナウイルスの仲間が原因の重症急性呼吸器症候群(SARS)はウイルスが消え、中東呼吸器症候群(MERS)は中東に限定されている。今回も消えてほしいが、やはり楽観過ぎる。ポリオやはしか、風疹のように、完全にはなくならないが、何十年かけてワクチンでコントロールできるようになる感染症もある。
私の考えるウィズコロナの基本は軽症者は外来医療のレベルで対応しながら具合が悪くなれば一般の入院可能医療機関、重症になれば高度医療専門病院などで対応できる状態だ。日常の医療もきちんとおこなわれていなくてはいけない。医学的に手を尽くした上で、亡くなる人に尊厳あるみとりと見送りができるようにならなければいけない。
迅速に結果がでる抗原検査キットなどを使えるようにするとよい。全てに精密なPCRを使う必要はない。暗算で計算できるのに、計算機やパソコンを持ち出すのは不便なこともある。
妊娠検査薬の導入時も抵抗はあったが、薬局で購入できるようになった。認証制度なども設け、一般の人が費用だけでなく検査キットの性能の限界も理解した上で使い分けられるようにしていくのがよいだろう。
今後の新興・再興感染症に備えるため、専門家の世代交代も必要だ。感染症や公衆衛生だけでなく、正しい情報を的確に伝えるコミュニケーションの専門家も育て、協力して対策にあたる体制が必要だ。」
テレビなどでは「なるほど」思わせるものの全体バランスを欠いた主張、目立つだけのような極端な主張が目につきますが、一方で、日本の置かれた状況を俯瞰し、全体のバランスを取りながら、冷静な判断に委ねるとこうなるということかと思います。
「増えたり減ったり、感染症との闘いは長く続く。正しい情報をもとに、冷静に判断し、感染を低く抑えていくことが大事」
昨春、認知症専門医で横浜総合病院臨床研究センター長の医師・長田乾先生が話されていた言葉を思い出します。その正しさ、変わりません。