「脱炭素」のボトルネックについて 5347
昨日の都議選、大先輩・中島よしお都議の応援のため調布市・狛江市へ。昼前に国領駅前で行われた街頭演説には竹内譲政調会長が渾身の応援演説。中島都議は前回選挙での約束した、公立小中学校体育館へのエアコン設置などの実現したことなどに加え、調布・狛江を流れる多摩川・野川の水害対策を熱弁。気候変動の激しい中、護岸補強工事を完了させ、しゅんせつ工事(川底の土砂掘削)、天端舗装(堤防最上部の強化)など災害対策に全力を注ぐ様子を伝えました。住民生活の安全安心は、着実な施策の積み重ねの先にしか実現しません。大勝利を願っています。
ところで、一昨日、横浜市温暖化対策本部との脱炭素に向けた取り組みについて種々打ち合わせました。エネルギー消費量2013年比50%削減など「2050ゼロカーボン(脱炭素)」を掲げる横浜市。
本市の二酸化炭素排出量は年間約2000万トン。2050年にはこれを実質排出ゼロにするとしていますが、その前の2030年に30%削減、1500万トンにするとの目標を掲げています。この達成のため、具体的に何をするか。
排出量の1位は23%を占める家庭部門。業務部門22%、産業部門12%、輸送部門19%より多い状況。産業政策などの大きな話は国に頼るところ大ですが、基礎自治体として家庭部門が最重要。その中でも冷蔵庫などの電力使用がその最も大きな要因。いかに再エネ転換を図るか。過去の取組を踏襲できる状況にはありません。
また、ごみの回収をどうしていくか。下水から発生する温室効果ガス対策等々、様々ありますが、何をするにも市民の皆様への説明、要請とともに、市として規制緩和、補助制度などの効果的、効率的な取り組みが必要。
横浜市役所がゼロカーボンに向け、一体となって取り組ことができるかどうか。
市が最大の努力を重ねることで、市民の理解と行動を醸成し、着実に成果を積み上げていかねばなりません。
ところで、先日、日経新聞が「脱炭素脅かす緑のボトルネック」と題した経済雑誌「The Economist」の記事を掲載していました。再生可能エネルギーへの転換の足かせについて書かれています。
ご興味ある方はどうぞ。
「世界経済が再開される中、モノの供給不足と物価の高騰がありとあらゆるものに影響を及ぼしている。それは台湾製半導体の供給からフランスの朝食の原価にまで至る。中でも注目すべきは、希少金属の供給不足や土地の制約といった供給サイドの問題だ。
これは今起きているグリーンエネルギーブームに水を差しかねない。こうした供給逼迫は一時的な現象にとどまるどころか、今後何年も繰り返され、世界経済を悩ませる恐れがある。クリーンなエネルギーシステムへの移行は始まったばかりだからだ。
各国政府はこうした市場が発する信号に警戒し、今後10年は再生可能エネルギーの容量を拡大すべく、今の民間部門による巨額の投資ブームを後押ししていく必要がある。でなければ各国政府が目指す2050年に温暖化ガス排出量実質ゼロという目標を達成できる可能性は低くなる。
科学者や環境活動家は何十年も気候変動に警鐘を鳴らしてきた。政治家もようやく気候変動を真剣に捉えるようになり、今や世界の国内総生産(GDP)と温暖化ガス排出量の70%強を占める国のほとんどが50年までに排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。この動きを受け、経済界も排出削減に向け従来とは異なる姿勢を見せ始めている。
投資家もクリーン技術のコスト競争力の高まりを受け、投資先企業にエネルギーに関する方針の転換を求めている。独フォルクスワーゲンや米エクソンモービルなど化石燃料時代の巨大企業が投資計画の見直しを迫られる一方、クリーンエネルギーに早くから取り組んできた先駆的企業は設備投資を加速している。
洋上風力発電の世界最大手であるデンマークのオーステッドは設備投資額を今年、前年比30%拡大した。米電気自動車(EV)大手テスラも同62%増額する。環境重視を掲げる投資ファンドには今年の第1四半期だけで1780億ドル(約19兆5200億円)もの資金が流入した。
多くの資源が突然、環境投資に向けられるようになったことで市場に様々な問題とボトルネックが生じている。原材料の需要が急増し、投資家は規制当局の承認が得られた限られた数のプロジェクトに殺到している。
本誌(The Economist)の計算によると、EVや送電線の生産に必要な鉱物5種類の価格は、この1年で2.39倍に跳ね上がった。非合法に木材を伐採する集団はエクアドルの森林で風力発電タービン羽根の材料となるバルサ材を探し回っている。今年2月、英国の大陸棚に洋上風力発電所を設けるために実施された海底リース権を巡る入札では、エネルギー各社がコストを度外視したことから落札額が120億ドルにも達した。
不足しているのは投資案件だけではない。投資対象企業も足りないことから投資資金が限られた再生可能エネルギー企業に集中し、それら企業の時価総額を今やバブルの水準に押し上げている。
再生可能エネルギー価格が消費者物価指数(CPI)に占める割合はまだ低いが、再生可能エネルギーに関連する様々な供給不足が何年も続けば、インフレに拍車をかけることになると金融業界には懸念する向きがある。
驚くべきはこれだけの資金が再生可能エネルギー分野に流入しているにもかかわらず、(50年までに必要なエネルギー投資額に対する実施済みの累計投資額の割合から計算した)エネルギー転換達成率は10%にも満たない。
確かに、目標達成に必要な技術の一部はまだほぼ存在もしていないため投資対象にもならない。だからこそ今、大規模な研究開発が求められている。したがって20年代は、研究開発がほぼ終わった段階の技術を普及させる10年とすべく、多額の資金を投じなければならない。
今後10年で達成しなければならない投資額の大きさには驚かされる。排出実質ゼロに向け、EVの年間生産台数を30年までに20年の10倍に拡大し、充電スタンド数は同31倍に増やす必要がある。再生可能エネルギーによる発電容量も設置数ベースで3倍に増やさなければならない。世界の鉱業各社は、こうした設備やEV製造に不可欠な鉱物の年間生産量を6倍に増やさなければならないかもしれない。米国についていえば、排出ゼロの達成には国土の2%を風力発電や太陽光発電に充てる必要がある。
これら全てを実行するには今後10年間で約35兆ドルもの投資が必要となる。これは世界の現在の運用資産総額の3分の1に相当する額だ。この投資を実現する上で最も役立つのが1990年代以降、世界に革命的変化をもたらしてきた国境を越えて構築された多国間のサプライチェーン(供給網)と資本市場だ。
ただ、この国際的サプライチェーンは十分に機能しているとはいえず、投資額は期待水準の半分程度にとどまっている。しかも投資対象は一部の富裕国と中国に集中している。鉱山各社はこれだけ各種金属の価格が高騰しているにもかかわらず供給の拡大には慎重だ。
投資不足になる最大の理由は、各プロジェクトを実行するための承認を得るのに時間がかかりすぎることと、投資に伴うリスクとリターンがはっきりしない点にある。加えて各国政府が気候変動対策を他の政治的な目的と結びつけて実施しようとすることも事態を悪化させている。
欧州連合(EU)は、EV向け車載電池の調達を域外に依存しなくてよい戦略的自立を目指しているし、グリーン政策予算の多くを経済不振にあえぐ地方に振り向けようとしている。
中国政府は、鉄鉱石や銅などコモディティーの国内価格に上限を設けることを現在の2021~25年の5カ年計画に盛り込むことを検討中だ。バイデン米大統領も自身がこのほど打ち出したグリーン計画で雇用創出と国内製造企業の保護を優先事項にしている。かくして気候変動対策としての狙いが曖昧になり保護主義色を帯びると、必要な投資の足かせとなる。
各国政府はもっと冷静な判断をすべきだ。送電網などの主要インフラの建設や研究開発は国家が支援することが不可欠だ。だが最優先すべきは2つの方法で民間投資の拡大を促すことだ。
第1は投資計画の実施に伴う規制緩和だ。鉱業開発の承認を得るのに必要な年数の世界平均は16年。米国で風力発電向け用地や海底をリースする承認と許可を得るには一般的に10年以上かかる。これが米国の洋上風力発電容量が欧州の1%未満である一因だ。
許認可のスピードを速めるには中央政府による一元的な意思決定が必要だ。このことが、よくある「総論賛成、各論反対」で、いざ自分が住む地域で実施されるとなると地元住民や環境活動家の反対を招くことになるとしてもだ。
第2は各国政府が企業や投資家が抱えるリスクの面から支援することだ。電力の最低価格を保証するなど確実性を高めることも一助となるし、先進各国は途上国の投資を増やすべく低金利で融資する義務を負う。
だがカギを握るのはカーボンプライシング(炭素の価格付け)の制度の普及だ。実現できれば企業は日々、価格の要素を組み込んで様々な意思決定を下せるようになる。起業家や投資家も長期的見通しを立てやすくなる。現在、世界の温暖化ガス排出でカーボンプライシングの対象となっているのは22%にすぎない。国や地域を越えた排出権取引市場も存在しない。
再生可能エネルギーへの転換に向けて様々なボトルネックが生じている現状は、少なくとも脱炭素化が理論から実践段階に移りつつある証拠だ。これを革命に変えるために、今、強力な後押しが求められている。」
殆どの人が必要不可欠と考える環境対策。
その成否は、政治、行政、地域住民等、あらゆる関係者が「総論賛成、各論反対」といった「自分の都合」を乗越えられるかどうかにかかっているように思います。