昨朝、奈良北団地前で行われているラジオ体操へ。コロナ禍にあっても、対策をしながら欠かすことなく毎朝6:30。「家の中にいてばかりじゃ、調子が悪くなっちゃうよ」。確かにその通りだと思います。そこは東京都町田市との県境の地域。良くも悪くも、行政の違いを肌で感じる地域でもあります。
先日ご報告しました予算委員会の総合審査では、事前に質問を用意したものの、中には他会派が先に似たような質問をしたり、持ち時間が足りなくなるなどにより、カットしたものもあります。
そのひとつが「横浜特別自治市」についての質問。
横浜市では、国が担うべき事務を除き、横浜市域のすべての地方事務を横浜市が担う「特別自治市」を目指しています。横浜市に限らず、人口が集中する全国の多くの政令指定都市では、人口減少や少子高齢化への対応、老朽化する都市インフラの維持更新など、多くの深刻な課題を抱える一方で、大都市には、海外の大都市との都市間競争に勝ち抜き、国全体の経済成長をけん引する役割も期待されている中、その役割を果たすため、現在の政令指定都市制度の見直しを求めています。
神奈川県では人口約905万人の内、約594万人、66%が政令市(横浜市・川崎市・相模原市)に居住しています。
大事なことは「何のため」「誰のため」。なぜ今「特別自治市」が必要なのか。具体的な課題や事例を通じ、市民にとっての必要性やメリットを確認するなどとして、下記の質問メモを準備していました。ご紹介します。
1.交通系対策
交通安全上、不可欠である横断歩道のラインや、一時停止線の「止まれ」の表示が擦り切れて見えなくなっている危険な場所が、市内の方々で見かけられます。県警察の所管ですので、所轄の方にも大変頑張って頂いていますが、県の財政状況が厳しい中、何年も改善されない場所が少なくありません。
こうした事務は、財源と共に市が移譲を受け、例えば、市が実施する道路補修工事や上下水道の道路復旧工事と併せ近くの横断歩道も修繕すれば、予算的にも効率化できると考えます。
警察事務については、指揮監督を国(警察庁)が担っていることから、地方事務ではありますが、国の事務という性格も非常に強いため、その移譲については法律の改正が前提となります。しかし、警察事務の中でも、特に交通安全対策は、特に住民にとって身近なもので、市の業務との親和性も高いため、移譲に向けた検討を積極的に行う必要があると考えます。
2.財源問題
政令指定都市の制度は、昭和31年にそれまで地方自治法に規定されていたものの、一度も運用されなかった「特別市制度」に代わり、暫定的に作られたものです。指定都市には、大都市として、合理的、能率的に事務を執行するため、一般の市と異なる特例があります。
4つある特例の内、「道府県に代わって仕事をする」との項目があります。政令指定都市は市域において、児童福祉や衛生研究所など、県に代わって仕事をすることとなっていますが、その財源が税制上措置されていないという問題があります。
政令指定都市の市長会と議長会は、国に対して連名で毎年「大都市財政の実態に即応する財源の拡充についての要望」を行っています。これは「県に代わって仕事をしている仕事」=「大都市特例事務」に対し、それに見合う税制上の措置をしてほしいという内容です。
今年度の措置不足額は約372億円。(国から交付税等の措置もありますが、実態に合わず足りてない)税制上の仕組みを見直し、全て横浜市の固有財源である市税で対応できるようになれば、より効率的で効果的な施策が展開できると考えます。
指定都市は、40年以上にわたり、大都市特例事務に対応する税制度の創設について国に要請を行っていますが、税財政制度の仕組みは一向に変わりません。公明党市議団としても、長年にわたり特別自治市の早期実現により、横浜がその果たす役割にふさわしい権限と税財源をもつべきであることを要望しています。
3.権限
2月の県議会で黒岩知事は、特別自治市やコロナ対策に係る事務権限を指定都市に移譲することについて、「住民目線で課題がある」と答弁されました。個人的には、これは残念な見解でした。コロナ対策については、現在の法律の規定上、県知事に権限があり、それに伴い財源もあるのだから、県が対策を行うことは当然なわけで、これだけをもって、県の権限・財源を維持すべきと主張されることについて、県議会議員を経験した私としては、違和感を感じました。
いかなる立場であっても、大事なことは、住民にとってどうなのか。「誰のため」「何のため」の主張なのか。
日本に限らず、自治体が成長・発展する中で、「地域のことは地域で決める」という声は強くなります。国の第27次地方制度調査会においても、「我が国における行政は、国と地方の役割分担に係る「補完性の原理」の考え方に基づき、「基礎自治体優先の原則」をこれまで以上に実現していくことが必要」とされています。
「補完性の原理」とは、行政が行う事業はまず住民に最も身近な基礎自治体が行い、それができない場合に広域自治体が補い、広域自治体ができない場合は最後に国が補うという考え方。この考えの下、これまでも横浜市は県からの権限移譲を進めています。
「地域のことは地域で決める」とは青葉区では当たり前に聞く言葉ですし、成熟した社会にあっては当然のことで、日本全体はそうした考え方に基づき動くことになっています。
もし、最前線の基礎自治体の声を真摯に聞かず、今の時代にお上のような気分で物事を考えているとしたら、日本においては、それは間違いだということになります。
昨年12月の横浜市神奈川県調整会議において、「コンビナート地区の高圧ガスの許認可権限」について、具体的な課題を協議すること。また、「崖の安全対策」について、事務権限の移譲について住民目線に立って、今後協議を進めていくことを首長間で確認され、事務レベルの協議が速やかに開始されていることは評価しています。
一方、知事は、この調整会議において、「市町村への権限移譲については、住民目線で考え、地域に必要なものであれば、特段の支障がない限り移譲していく」旨の発言をしたとのことでした。そうしたことからも、現在の法体系に基づく、事務権限や財源に固執することは「どうなんだろう」と思います。
具体的な例として、災害救助法改正の件について取り上げます。
かつて災害救助法に基づく大規模災害時の避難所開設や仮設住宅の設置などの救助事務は知事に権限がありました。住民目線の迅速な対応に課題があったわけです。
約25年前の阪神大震災、10年前の東日本大震災、5年前の熊本地震などの経験を踏まえ、指定都市は、長らく救助実施事務の権限移譲を求め、平成30年に念願の法改正が実現し、内閣総理大臣が指定する指定都市(救助実施市)に移譲されることになり、横浜市は同年4月に救助実施市に指定されました。
長い期間の調整過程では、移譲をする側の知事会からも色々な意見がありましたが、権限を指定都市に移すことで、結果的に市民の安全安心につながり、柔軟かつ機動的に対応できることを示した好事例となっています。
こういった具体的な効果を県ともしっかりと共有し、「補完性の原理」、「基礎自治体優先の原則」に基づき、県に権限がある事務・権限についても移譲を進められるよう、県との協議もこれまで以上に進めていかねばなりません。
4.制度疲労
指定都市制度ができたのが1956(昭和31)年。今年で65年。その時生まれた人は、年金をもらう年齢になっています。一方、現在の47都道府県の形がほぼできたのが約130年前。その間、市町村については、明治・昭和・平成の大合併などにより、数は大幅に減少しています。平成の大合併が始まる直前の1999(平成11)年度末では、3,232であったものが、1,718とおよそ半減しているのに対し、都道府県の数や範囲は変わっていません。
かつては、道州制の議論もありましたが、現在は沈静化しています。住民ニーズや社会環境が変化を続ける中、県や市、役所や地方自治の仕組みが変わらなくていいなどということはありません。
変化に対応できる体制を整える必要があります。
一方、コロナ禍において、各都道府県によって、広域自治体である都道府県と基礎自治体である市町村の分担領域は大きく異なっていることも明らかになりました。
例えば、徳島県や佐賀県では、市が設置する保健所はありませんが、神奈川県内に設置される10保健所のうち、6か所が市の設置、4か所が県の設置となっており、また、カバーする人口の割合で言えば、市の管轄が77%、県の管轄は23%となっています。
もはや、全国一律の自治制度ではなく、地域の実情に応じた地方自治制度の確立は必須であり、その突破口として特別自治市を実現すべき状況にあります。
5.メリット
一方、特別自治市は、決して横浜の独り勝ちではなく、その実現により、例えば、将来的に周辺市のごみ処理を連携して一緒に検討するなど、お互いが住民に身近な基礎自治体として抱える懸案事項の解決に向け取り組んでく必要があります。教育、福祉分野の連携も大事です。 近隣自治体、神奈川県や日本全体にとってもメリットがあるということを示していく必要があります。
メリットとは、地方自治法第1条に規定されている「住民の福祉の増進」に他ならず、ここを目指すこと以外の自治は、自治とは言えないものがあります。
今後の人口減少、超高齢化を考えると、何も手を打たなければ、横浜市も神奈川県も沈没してしまうことを大変危惧しています。
誰のための政治・行政なのか。「現状のままでよい」とすることは、誰のためになるのか。
今こそ、60年以上も変わらない制度を改革し、具体的かつ説得力のある説明により、特別自治市実現に向けた機運の醸成を図るべきと考えます。