雇用形態「世界標準」への変化について 4954
昨朝、友人から1通のメール。「IT企業発の脱ハンコの波を全産業に」と題した日経新聞の社説についてありました。財務系の仕事をしている彼ですが、社会の大きな変化、働き方の変化を示す内容でした。
環境の変化に対応できなければ、生き残れないものが多々あります。そのひとつが「働き方」。日本の終身雇用は、気が利いて何でもできる人を重宝する傾向にありますが、海外では具体的に何ができるか。マネージメントはそれぞれのピースを組み合わせて仕事を完成させていきます。よって採用方法も全く異なり、「何を学んだか」「何ができるか」を具体的に求めます。
今の仕事に就く前、7年は海外駐在で、シンガポール(日立アジア)や中国(日立半導体蘇州)の皆さんと仕事をし、採用の機会もありました。面接時のやりとりでは、こちらが質問するだけでなく、相手は仕事内容を詳しく示した「Job description」を求めます。仕事の内容で報酬が決まるので、当然と言えば当然。
日本ではそこがあいまいで、採用基準も、入社後の評価基準もハッキリしていなことが多い。私の知る限り、人治的なものは他の国ではなかなか通用しませんが、こうしたことが終身雇用と、一致団結で乗り切る「日本流」を支えてきたのかも知れません。とはいえ、コロナはこうした日本の風習にも変化を求めています。
先日、日経新聞が私の古巣・日立製作所の変化について、「世界標準 在宅が後押し 日立「ジョブ型」雇用へ転換 業務内容定め成果で評価」と題して記事にしていました。
「日立がジョブ型雇用の本格採用に踏み切る。成果主義と親和性が高いジョブ型は欧米などに広く浸透する世界標準だ。グローバルの人材獲得競争に有利に働き、生産性の改善への期待も高まる。
現在、日本で主流の雇用形態は「メンバーシップ型」。個々の従業員の業務を細かく定めず、幅広い職種を体験させる。終身雇用を前提にゼネラリストを養成するのに適した仕組みで、長く日本企業の競争力を支えてきた。一方、従業員に「無限責任」を課すことは、長時間労働や低い生産性の遠因ともなった。
ジョブ型は「職務定義書(ジョブディスクリプション)」に業務内容を細かく定める。個人の業績評価が容易で中途採用なども進めやすい。近年、日立は米中企業などと先端人材の争奪戦を繰り広げるが、海外人材には不透明に見えるメンバーシップ型は足かせとなる。
日立のジョブ型導入の取り組みは、中西宏明社長(現会長)時代の2011年に遡る。「グローバル・メジャープレーヤーへの転換」を掲げ、グループ各社で独自にあった人事制度を世界共通の仕組みに集約したのがジョブ型への一里塚だった。だが給与体系などの全面刷新につながる改革は容易ではなかった。今に至るまで職務定義書を作成する職種はデジタル部門などの一部に限られる。
皮肉なことに岩盤を突き崩したのは、コロナだった。在宅勤務ではプロセスへの貢献が見えなくなりチームプレーも難しくなった。従業員の成果を評価する仕組みが必要になり、メンバーシップ型では限界があった。
日立の決断は日本企業全体の方向転換を後押ししそうだ。20年度から幹部級にジョブ型を導入する富士通。コロナ禍を機に全従業員を原則在宅勤務に切り替えたが、時田隆仁社長は「コロナは日本企業が労働時間や勤務地に左右されず、成果に着目した賃金体系に変わる契機になる」と見る。
無論、日本型経営そのものであるメンバーシップ型を変えるのは容易ではない。ジョブ型を徹底すれば、新卒一括採用や年功型賃金の見直しも避けられない。だが今のままではグローバル競争を戦えない。コロナを奇貨として新常態にふさわしい新たな経営の形をつくれるか。トップの決断と実行力が問われている。」
難しい決断も多々あると思いますが、最後の一文の通り、真のリーダーシップが求められるのだろうと思います。
全体で適正なバランスを保ち、前に進むには、環境の変化への対応が重要。環境の変化に対応しなくても何とかなっているというのは、どこかにしわ寄せされて、無理が生じているということを察知する必要があると思います。特に市場にさらされない役所はそうかもしれませんし、国も地方も例外ではないと思います。
社会の仕組みも、組織のあり様も、人間の体と同じだと思います。