私の朝はトーストとヨーグルト。ジャムかハチミツ。あざみ野駅近く「サント薬局」。私より若く、俳優かと紛うご主人は薬剤師。普通に薬を売っているだけの薬局ではなく、先代から開発してきた様々な健康食品もあります。先日ハチミツを購入。稀なルートで調達されたハンガリー産。間違いなく美味しい。コロナのこの事態に「いつでも医療現場へ」とご主人。長年、地域を支えてきたサントさん。頼もしいです。
「エッセンシャル・ワーカー」とは、外出自粛のこの時も社会生活を維持するために働く人のこと。医療・介護関係者、保育、物流、スーパー、ゴミ収集、清掃、宅配、郵便、電気、水道、ガス、ガソリンスタンド、農家、教職員、警備、公務員等々。
うちの長子は、病院の看護師ですが、今、寮と病院の間を行き来しながら、新型コロナウイルスに感染された患者さんのお世話をしています。結構な装具のよう。また、妻は特別養護老人ホームのヘルパーとして、要介護5のご高齢者のみなさんをサポートしています。うつってはいけない、うつしてはいけない。
一部のマスコミは、「現場の苦悩」などとして「文句」のような言葉を並べ、現場のすべてであるかのように伝えています。「寄り添っている」ということなのかもしれませんが、それはごく一部のこと。そうした言葉以上に、現場の殆どの方々は、それぞれも大変な状況の中、みんなで力を合わせて、患者さんのため、社会のために、何とかこの危機を乗り切ろうと前を向いて頑張っています。また、こんな時だからと現場に復帰された看護師、介護士も少なくありません。ごく一部の声を、すべてであるかのように伝えることは、その役目を果たしているとは思えませんし、現場のモチベーションを下げているようにも感じます。
泣き言を言って、暗くなることはあっても、良くはならない。「伝えること=良くすること」ではありませんが、「なぜ現場で頑張る人々がいるのか?」。その「真実」を伝えることがジャーナリストの大事ではないかと思います。
網羅性が欠如した情報を伝えるマスコミは、社会における偏見や差別を増幅させる種になっています。コロナ危機を通じ、従来にも増して、それが日本社会へ与えている悪影響は計り知れません。
私が大学在学中に来学されたジャーナリストの故・筑紫哲也氏が、マスコミの役割について講演され、伺ったことがあります。「NEWS23」が始まる以前、朝日ジャーナルの編集長を終えられた頃だったと思います。筑紫さんがそうしたマスコミをどのように感じられるか。恐らく「社会正義ではない」とされるのではないかと思います。
「エッセンシャル・ワーカー」の使命感や責任感を胸に社会を支えていることへの感謝が広がる一方、そうした人々への感染拡大リスクが懸念されていると共に、ウイルスへの無知ゆえの不安や恐怖による過剰な行動が、偏見や差別につながっています。
先日、中国新聞の社説が、「<新型コロナウイルス>偏見と差別『誰もがうつる』認識を」と題し、地に足の着いた情報を、しっかりとまとめて掲載されていました。
「新型コロナウイルスの感染が広がる中、医療関係者やその家族への偏見や差別が深刻になっている。政府の感染症対策専門家会議の尾身茂・副座長がおとといの会見で強調した。感染リスクに加え、誹謗(ひぼう)中傷にさらされて離職につながっている。医療機関の休診や診療差し控えも生じかねず看過できない。
医師らが感染した兵庫県内の病院では、職員や家族らが差別された。引っ越しする時に業者からキャンセルされたり、タクシーに乗車拒否されたり…。
連合の調査では、病院受付のパートもしている人が別の職場で「ばい菌をまき散らすから来るな」と言われたという。
いわれなき人権侵害であり、断じて許されない。医療関係者は感染のリスクにさらされながら、命や健康を守るため懸命に働いている。感謝や敬意こそ、私たちは示すべきだろう。
病気の被害者である感染者やその家族への偏見も放置できない。三重県では、家に石が投げ込まれたり壁に落書きされたりする被害があったという。
中国地方にとっても人ごとではない。クラスター(感染者集団)が起きた広島市内の障害者施設では、電話が鳴りやまず、業務に支障を来した。「感染した職員をクビにしろ」といった批判も届いたという。
同じくクラスターが発生した三次市内のデイサービスセンターでも、暴言を吐かれたり、離れて暮らす家族が会社から出勤を禁じられたりしたそうだ。
偏見や差別が広がらないよう広島県の湯崎英彦知事は繰り返し訴えている。13日に出した感染拡大警戒宣言でも、感染者や医療関係者、その家族への誹謗中傷、差別は絶対にやめてほしいと「県民への要請」の中に盛り込んだ。
感染者のプライバシーをインターネット上で勝手にさらそうとする動きも目立つ。中傷を恐れて感染者が濃厚接触者の追跡調査に協力しなければ、感染拡大を防ぐ活動の最大の障害になってしまう。感染を広げる結果にもなりかねない。感染を恐れる気持ちは誰にでもあるだろうが、過剰な反応はかえって社会の不安をあおってしまう。
偏見は、無症状か軽症の感染者を広島市内のホテルで受け入れる取り組みにも影を落としている。県は先週から受け入れを始める予定だったが、ホテル周辺の住民向けに開いた説明会で不安の声が上がって頓挫。別のホテルで受け入れざるを得なくなった。医療崩壊を避けるために必要な備えという視点を住民は欠いてはなるまい。
偏見や差別をなくすには、どうすればいいか―。尾身氏の言葉に耳を傾けたい。新型コロナウイルスは誰もが感染し得ることと、誰もが気付かないうちに他人に感染させてしまう可能性を持っていることだ。
日本赤十字社が紹介している工夫も参考になる。「負のスパイラルを断ち切るために」としてホームページに載せている。生活習慣を保って不安に振り回されない。確かな情報を広め、差別的な言動に同調しない。そうしたそれぞれの立場でできることを行って、負の連鎖を断ち切ろうと呼び掛けている。
私たちが向き合う相手はウイルスであって、誰もがなり得る感染者ではない。再認識して冷静な行動を心掛けたい。」
世界を見ると、必死な思いで社会を支える「エッセンシャル・ワーカー」の間でいま感染したり、死亡したりする人が相次いでいます。
日本は民主主義のもと言論の自由が保障されていますが、このような誹謗中傷があっては社会は回りませんし、普通の生活を維持したい人々の権利を侵害しているとも言えます。こんなことで社会が分断されてならないと思う一方、こうした行為について、個人的には、発信元を放置すべきでないと思っています。
「自由」と「放縦」は異なります。
東京都・小池知事のツイート。「【人権に配慮した冷静な行動を】感染者、医療従事者、またそのご家族への不当な差別、偏見、誹謗中傷は許されることではありません。私たちが憎むべき敵はコロナウイルスです。医療従事者、エッセンシャルワーカーの方々によって私たちの生活が守られています。ぜひ心から感謝し、応援しましょう」。
想像力を働かせて相手の立場を理解し、自らの行動を変えていくことが大事だと思います。