ある企業が目指す「豊かな理想社会」について 3553
昨日は午前中2件の市民相談に対応したの後、午後から寺家町で党支部の会合。夕方から区内10か所のお祭りへ。
今月の日経新聞「私の履歴書」は、タイのチャロン・ポカパン(CP)グループのタニン・チャラワノン会長が連載されていました。中国国内では「正大集団」の看板がとても多く、大変有名な企業グループですが、元々はタイの会社。CPはタイで一番大きな民間企業グループで、畜産などの農業・食品、コンビニエンスストアなどの小売り、携帯電話などの通信の3事業が主力。日本のコンビニの総菜コーナーでもCPの製品が鶏肉や豚肉を使った総菜がパックに入って売られており、黄色の円のなかに赤い字でCPと記されたマークがあればそれはCPが生産に携わった商品だそうです。
CPが日本のコンビニや食品企業と手を組み、タイで半加工して輸出し、日本の食卓を変えた企業ともされています。1973年にタイから鶏肉を日本に輸出開始。80年代にはエビの養殖にタイで成功し日本への輸出。日本の消費者に鶏肉やエビを手ごろな価格で提供し、鶏の空揚げやエビフライを気軽に食卓にのせられるようにした企業。
そのCPの会長が、「私の履歴書」の最終盤で「豊かな理想社会」と題して掲載されていました。ご紹介します。
「私の夢を実現する試みが中国・北京の郊外で始まった。北京の北東に位置する農村、平谷に2012年4月、鶏卵生産工場を稼働させた。工場という言葉を使ったのは飼料配合から出荷まで機械で自動的に運営しているからだ。1日に300万羽の鶏から240万個の卵を採取する。
伝染病を予防するために工場は外部と完全に遮断し、密封している。飼料はタンクからパイプラインを通じて鶏舎に運び、鶏に与える。産み落とされた卵もベルトコンベヤーで集荷場所に運ぶ。自動車工場のようなロボットのアームが卵を荷台に積んでいく。すべてをコンピューターで自動制御している。
300万羽の鶏から出るフンは有機肥料として周辺に広がる果物畑にまいている。年老いて卵を産めなくなった鶏は食用に加工するほか、ワニを養殖するえさとして利用している。資源の再利用で周辺環境を保全すると同時に運営コストを引き下げた。
あたりは農村で働き手はいっぱいいるのだが、工場内では数十人も働いていない。実は周辺の約5千人の農家には工場を運営する企業体の株主になってもらった。工場の利益を株主農家に分配する仕組みをつくり、工場の黒字、赤字にかかわらず株主に一定額の配当を保証している。
CP(チャロン・ポカパン)グループは鶏卵工場そのものではもうからなくてもよいと考えている。グループ内の飼料、種鶏、食品加工など別部門で利益を確保でき、川下の小売りでも利益を上げられるからだ。20年後には工場の所有権も農民らで構成する企業体に移譲する。
労働力があふれる中国の農村部にオートメーション工場をわざわざつくる意味がどこにあるのか。いぶかしく思われるかもしれない。この方式は第一に農村の所得向上につながる。農家を労働者としてのみ雇用するのではなく、株主にした。株主農家は配当収入だけでなく、別の仕事をすればそこからも収入が得られる。単なる工場労働者ではそれほどの収入は得られない。
第二にこれから始まる中国の少子高齢化の備えになる。中国は昨年まで続いた一人っ子政策の影響で農村部ですら若い働き手が少なくなっている。日本を先頭にアジア各国で少子高齢化が進んでおり、アジアでもオートメーション工場は不可欠だ。機械に生産を任せれば、素人の労働者による効率性や安全性を損なう行為もなくなる。
私はロボット、さらにロボットを動かす人工知能(AI)の技術に注目している。人類は道具を使いこなすほどに生産力を増してきた。私の父は1週間の7日間を休まず働き続けたが、私は日曜日に休む制度を導入し、ついで週休2日制に改めた。休日を実現できたのは機械を使って生産性を引き上げたからだ。ロボットの利用がますます増えれば週休3日制を実現できる。
21世紀はロボットが人類に代わって働き、労働の苦しみから我々を解放してくれる時代だ。ロボットを使って生産すれば物質はありあまるようになる。共産主義や社会主義は理想だが、物質が足りないなかでは実現に困難を伴う。物質がありあまるようになって初めて人類は理想社会を実現できる。私はビジネスという手段で理想社会を追い求めていきたい。」
この1ヵ月、読ませて頂く中で感じたこと。前に進もうと動き出せば、多くの課題が出てくるのですが、それを果敢に乗り越え、より良くしようと行動する姿がとても印象的でした。勉強になりました。