地方の選択「町も住民もスリムに」ついて 2671
昨朝、ご挨拶に伺ったある企業での会話。「人が生きていくために必要なことと、街が発展するために必要なことは違う場合がある」「両方兼ね備えることができればいいけど、二つの考え方を基本にするなんてのは簡単なことじゃない」「考え方はの基本はひとつになるはず。今は前者で物事を決めていくときになっているんじゃないか」税の使い道を決めるときの考え方についてのお話でした。
青葉区周辺の都市整備計画では、市営地下鉄3号線のあざみ野駅〜小田急・新百合ヶ丘駅までの延伸や東名高速・横浜青葉IC〜第三京浜・港北ICまでをつなぐ北西線事業などの首都圏交通網を整備する大きな事業から、老朽化したインフラの整備や安全安心のための河川・道路整備など、街づくりは多岐にわたります。しかし、将来的な労働人口の減少や税収減などの社会構造の変化からして、従来の通りの考え方の延長線上で計画・実施するには無理があります。
予算が「ある」ことを前提に考えるのは簡単な仕事ですが、「ない」ことを前提としていかに知恵を出していくか。そこに価値があるのではないかと思いますし、人材の評価基準もそうあってもらいたいと思います。
日経新聞「インフラの将来」というコーナーが「地方の選択」と題して連載しています。ある日に「町も住民もスリムに」との記事がありました。
「2月上旬、岩手県大船渡市を訪ねた。JR大船渡駅から海側を見ると、東日本大震災で津波に襲われた平地は、新たにスーパーや飲食店など60店舗が入る商業区域を造成中だった。敷地は東京ドーム約2個分で10分もあれば歩いて回れる。駅の山側には復興住宅を建てる計画だ。
宮城県山元町、熊本市――。地方では町のコンパクト化に動く自治体が相次いでいる。2007年に財政破綻した北海道夕張市は炭鉱付近にあった居住地を中心部に誘導する。
10万人規模の地方都市は500メートル以内に医療機関のない世帯が6割と大都市より20ポイントも高い。このままだと通院に困る高齢者が増える。根本祐二東洋大教授は「居住区と商店街が近ければ車がなくても暮らせ、水道や道路などの更新費も抑えられる」と話す。問題はどの自治体が計画を主導するか。近隣との調整というハードルが待ち受ける。
「信頼できない」。昨年12月、森雅志・富山市長は怒りをぶちまけた。隣の射水市が米系ディスカウント店を郊外に誘致したのだ。
富山市は車を使わなくても暮らせる町を目指し、路面電車を張り巡らせた。そんな富山市から見ると、射水市の郊外開発は車社会への逆戻り。両市は都市計画を調整してきたが、射水市は「射水市としてのまちづくりを進めたい」(夏野元志市長)。調整役の富山県は「誘致を止める権限はない」(都市計画課)という。
一筋縄ではいかない町のコンパクト化だが、暮らしは確実に変わる。町づくりに沿って郊外から中心街に引っ越した富山市役所の男性職員(34)。通勤は自動車で20分から徒歩7分に変わった。今はスーパーにも歩いて行く。「コンパクトな町は医療費削減につながる」と久野譜也・筑波大教授は効用を指摘する。
同教授は新潟県見附市で平均70歳の380人が有酸素運動を続けた場合の医療費を調べた。3年後の医療費は年27万円と運動しない人より10万円安くなった。「車に頼らない町では日々の暮らしのなかで自然に歩き、健康になる」
日本の人口は30年までに1割減り、3割超が65歳以上になる。将来を直視してスリム化するか、大きな町として踏ん張るのか。選ぶのは、そこに住む私たち一人ひとりだ。」
役所のように、良い意味でも悪い意味でも、民間のような収益、収入を気にすることなく、変化しなくても守られるような組織であるほど、問題の責任所在が分からなくなる、うやむやにする傾向があります。そうした場合、組織内の人々を守れても、一般市民にとっては悪影響にしかなりません。
もちろん、市民のために前向きに積極的に行動する人も少なくありませんが、横浜市が国・県から権限財源を受け、自らのことを自ら決められるよう求めている大都市制度。市民の皆さんにメリット・デメリットをよりハッキリと伝えていく必要があります。また、何事も責任の所在を明確にできる仕組みにしていく必要もあります。またそれは同時に、人材の評価基準に変化をもたらすのではないかと思います。