昨朝は寒い朝でしたが、これからは暖かくなるとか。気候の変化が大きなこの頃ですが、変化に適用できるもののみが生存することができるとの言葉を思い出しますと、昨朝6時過ぎに近所をTシャツ一枚でジョギングされていたあるご主人の強靭さというものを感じずにはいられません。変化に適用するとともに、いかなる変化にも耐えられる力。どちらも大事かと思います。
先日、「岩盤 規制を崩す」という日経新聞の特集で、筋金入りの改革論者として知られる八代尚宏氏(国際基督教大客員教授)と、政府の改革論議にたずさわる大田弘子氏(政策研究大学院大教授)が対談。20年来の課題である規制改革。経済の停滞打破へ、こんどこそ大きく前に進めたいとの趣旨から掲載されていました。
――そもそも規制改革はなぜ必要なのでしょう。
大田氏 規制で栄えた業種はない。改革が進まないと、消費者が企業の競争によって得られる値下げや新商品・サービスの登場といった利益を得られなくなる。企業の方では技術革新が起きなくなり、時代の変化についていけなくなる。
八代氏 結局、規制はいちばん質の悪い業者を守ることになり、新しいことを試みる質の良い業者は損をする。市場競争でよりよいものが生まれるという考え方が大事だと思う。
――どうしたら必要性を理解してもらえますか。
大田氏 長く解決しない岩盤のような規制は、議論している側がプロフェッショナルになってしまっている。形を変えながら続いてきた規制改革会議も、長くなるにつれて一般の人から乖離(かいり)していると感じることがあった。
八代氏 一般の人やマスコミに議論の内容と改革の効用を理解してもらわないといけない。過去の改革で多くの賛同を得られたのは、一部の医薬品のコンビニでの販売。24時間開店しているところで、薬が買えたらどんなに便利かと。こういうわかりやすい規制改革を増やすことだろう。
大田氏 たしかに生活者の支持が得られないと規制改革は進まない。待機児童がワーストだった横浜市では「3年間でゼロにする」と訴えた市長がやれる限りのことをやってゼロに近づけた。そういう身近に感じられる成功例は重要だ。
八代氏 もう1つ、議論の論点整理をわかりやすく明らかにすることの大切さを強調したい。たとえば規制改革会議のホームページに主要な論点の賛成意見と反対意見を検索できるような仕組みをつくれば、国民も正しく改革の必要性を判断できる。
――成果の見せ方もポイントですね。
大田氏 優れたモデル例を示すことで規制改革への理解が広がると思う。医療、農業もそうだが、規制があるなかで現に先進的な取り組みをしている事業者がいる。その人たちが阻害要因と思うものを取り除く見せ方や進め方が必要だ。
八代氏 生活者にわかりやすい規制と言えば、車検もそうだ。なぜいい車をつくっている日本で頻繁に車検が要るのか。政府が検討する「国際先端テスト」で、ほかの国と比較して改革案を練るべきだ。
―小さなニーズをどう吸い上げるかも大事です。
八代氏 細かい規制の弊害は関係者以外は気づかない。個人ではアイデアがあっても、それを吸い上げるシステムがない。
大田氏 その通り。だから小さな規制緩和の要望を受け付けられるよう、規制改革会議でホットラインをつくった。
――改革は安倍晋三政権の試金石になります。
八代氏 アベノミクスの3本の矢のうち金融政策と財政政策は誰も反対しない。だが3本目の民主導の経済成長は痛みを伴う改革が必要になる。首相がそれを明確に打ち出せるかどうかがポイントになる。今は金融と財政で時間を稼いでいる状態。そういう意味で、タイムリミットは非常に明確だ。
大田氏 時間を稼いでいる間に改革を少しでも前に進めないといけない。公共事業で需要を生み出すのは限界がある。だから今なんです。大事なのは。
――どう突破しますか。
八代氏 各省が自発的にやるよう、どう仕向けるかだ。規制改革は法律を変えることであり、改革志向の官僚の力を結集する必要がある。そのためには官僚に対する安倍首相の指導力や発信が欠かせない。
大田氏 規制改革は閣僚同士で意見がぶつかることが多いので、そこの突破も首相のリーダーシップしかない。
是非はあるところかと思いますが、「第三の矢」は現実に必要不可欠であり、しかるべき変化が求められます。冒頭の話とは次元が大変異なりますが、自らの変化と環境の変化を自覚して「変化」していかねばなりません。