昨日は三重県の県西部に位置する名張市(8万2600人)を会派の有志で訪問。住民満足度が80%を超える基礎自治体。亀井市長は元市職員で3期目。市内分権を強力に推進。1年半前からその存在に注目していました。
平成の大合併が推進された時期。同市のお隣の伊賀市との合併について住民投票実施。7割が反対。国からのサポートが無くなることへの危機感および財政非常事態宣言からまちづくりが加速したとのこと。
環境が意識を変え、行動を変えるということかと思います。横浜市も他人事ではありません。長いですが以下はメモです。
同市は2003年度から生活環境について市民意識調査を毎年実施。住民の満足度は毎年80%超。住民満足度を高めるために「市民主権の地域づくり」を「ゆめづくり地域予算制度」を確立し改革を推進。
蜂の巣の駆除等々、なんでも市役所が行うことからの転換。役所でなく地域が動く。自由に使える交付金制度を実施。
地域づくりで最初に取り組んだのが、15の小学校区を単位とする地域づくり組織の立ち上げ。各単位では地元の方が100名から150名がかかわり地域づくり推進。市は従来の補助金を全廃。面積などに応じて各地域に年間約4000万円のゆめづくり地域交付金を拠出。各地域は、高齢者の支え合い、子育て支援、移動手段の確保や防犯対策といった固有の課題を解決するため、交付金を使ってバス会社との運行契約や常夜灯の設置を実施。現さらに、各地域が地域の将来ビジョンを策定。
地域交通確保のためにバス会社・三重交通への補助金年間600万円を拠出していたものが、地域のコミュニティバスにすることにより年間300万円で運行可能に。停留所の増減も地域で決めることができるようになった。
有償ボランティアも確立。地域の中で生活支援サービスを提供する部門を組織。高齢化が進む中、地域での日常の困りごとを地域住民どうしの助け合いで解決することが目的。今となっては生きがいづくりにもなっている。介護保険、国民健康保険料の削減にもつながっているとのこと。
区長制度を実施。区長は市から委嘱。区長にはお金が出るが、自治会長には出ない。自治会長と区長が同一の場合もあれば、別の場合もあった。地域の分裂の因となることが。
第1ステージ:ゆめづくり地域交付金の交付にかする条例策定と使途自由なまちづくり活動費を一括交付。
第2ステージ:組織見直しを実施。以前は、行政事務を委託料、区長会運営等委託料を受けて運営する各町単位の区長制度とともに、ゆめづくり地域交付金を受け事業を行う地域づくり組織の会長委嘱。そして町内会、自治会が存在。
地域づくり組織条例制定後はこれらを見直し、地域づくり組織の会長を中心にした組織に見直し。第三者の力が大きかった。
(現在)第3ステージ:地域ビジョン策定し、市として平成24年度に地域別計画に位置付ける作業を実施。協働事業を推進。市として平成24年度からは庁内に「地域部」を設置。昨日は同奥村部長および新たに配属された地域担当官3名(一人5地区担当)のうちのおひとりである梶本氏からご説明頂きました。今後、人材育成のための「地域づくり大学」の展開を検討中とのこと。
地域の声を反映させる画期的な取り組み。住民自治への本気度が伺えます。大都市だからといって住民自治がおろそかであってはなりません。
また、地域SOSシステムを構築。認知症サポーターとしての活動を活発化し、認知症の方が徘徊できる街づくりを推進。
補助金を渡すという感覚の議会と、使途自由の交付金にしたい市との関係。何に使われるかわからないことが不安であったが、地域づくり組織条例の中で使途について規定。2-3年のうちに落ち着いていった。8万人の街であっても、各地域で事情、課題は異なるため、行政が持っていると公平性の前提で動くので、地域がやることで行政ができないことができるようになったとのこと。市職員も大きく減った。議員の役割については、年に3回、区長との会議の場を設け、地域の細かいことは15名の区長に任せ、全体のことは議会で議論し決定。公選職と地域代表の違いについてもすみわけできているとのこと。
市行政と地域との役割分担は、財政非常事態宣言以降、合併反対を選んだのは市民でもあり、様々な課題や整備等への対応について、地域でできることは地域でやることを推進。市と地域が事務軽減などを協議しながら進めている。
これまで一番苦労されたことは区長と自治会長の関係もあったが、区長制度をやめることが最大の課題だった。第三者の大学の先生を入れて中立の立場で、名張市にとって一番いい街づくりについて議論、検討。これがよかった。これで本制度が大きく前に進んだ。
これからの課題については、特に福祉に力を入れているとのこと。公民館に「町の保健室」をつくった。介護士や看護士等の資格をもつ2名の行政職員を配置。住民の健康づくりに寄与。健康寿命を延ばさなくてはならない。そこで認知症サポーターを増やしている。施設をつくると負担が重くなる。
また、地域コミュニティ交通推進についても詳細を伺いました。各地域がコミュニティバス運営協議会・審議会等を立ち上げ、バス会社に委託する地域もあれば、独自に車両や運転手を準備し運行する地域もあるなど各地各様。市は各地へ年間300万円を渡して各地で運営。赤字分は地域が負担。赤字の1/2を県が負担する仕組みを策定。地域ゆめづくり予算の中でやりくり。各地域はルート、バス停場所、便数、運賃等々を地域で決め臨機応変に対応。交通空白地域、交通不便地域等、市内交通を常に俯瞰し、交通の現状を的確に把握し、住民のニーズに的確に応える地域交通事業となっています。
課題については、以前、交通会社の路線廃止に伴いコミュニティバス運行を地域で検討。スタート時は約60回地域会議を開いたが、やはり行政がやるべきとの地域の声が大半だった。それがなんとかするしかないとのことで地域が動いた。ひとつできると他の地域も動いた。そこに自由に使える地域づくり交付金が入ることで成功に結び付いたとのこと。
只、現状進めいているゆめづくり交付金を使った事業はの成功は市民の力が大きいが、後継者については懸念もあるとのお話もありました。
地域住民の満足度を上げるためには、昨日の宝塚市でも強く感じましたが、顔の見える「単位」というものがあると思います。また、行政と地域の「役割分担」を進めていく必要があります。住民満足度は自治体の規模の大小ではありません。たとえ横浜市が日本最大の基礎自治体であったとしても、重要なのは住民の皆様が安全・安心を感じ、住民福祉が向上しているかどうか。高齢化社会、人口減少社会を経験し、具体な対策を打ってきた自治体からは学ぶべきことは少なくありません。住民自治の推進についてこれまでも議会で主張してきましたが、その思いをより強くした次第です。