昨日は岡山県の倉敷市議会を訪問し、先進的に取り組む同市のファシリティマネジメントの推進について伺いました。
公有建物の維持・管理等に係る基本的考え方、全国の自治体で推進されているファシリティマネジメント(FM)。倉敷市はそのユニークな取り組みから全国的に注目されています。昨日も「実践からはじめる倉敷流ファシリティマネジメント」と題した説明を頂いた後、質疑を行いました。以下はメモです。
平成合併による施設の拡大が重荷に。まず、資産台帳整備が最初の一歩であるものの、地方自治体でそこで躓いているところがある現実を直視し、他の自治体とネットワークを作って一緒に解決しているとのこと。現時点で築40年以上の建物が全体の13%、20年以上が80%。全国的な傾向ではありますが、予算が硬直しているため、このままの状態でスライドする可能性が高いという問題があります。
修繕に予算はかけられない、つぶせるものはつぶしたいが、継続して必要なものは使えなくてはならない。
こうした問題の解決には、トップダウンで進める必要があるとされますが、倉敷流ではトップダウンではなく、方針も作ることなく、現場の実態に基づいた推進を行っているとのこと。
平成19年、民間のFMノウハウをもった人材を採用。「役所は見に行かないで評価、判断している。民間ではありえない」との考えのもと改革に着手。ないものを整備することからスタート。公有財産一元管理、長期修繕計画、履歴の作成。あって当たり前と思われがちですが、公共にはない場合が多い。
平成22年、公会計管理台帳システムの導入で公有財産データの一元化を実現。大きな変化。独自の価値判断ではなく公会計で判断する。
平成23年、民間企業経験者全4名からなる長期修繕計画室を新設。原価意識の高さを強調されていました。
建物点検、修繕予算の総合調整、長期修繕計画の策定、ライフサイクルコストの積算(つぶしたらどれだけプラスになるかも含む)、施設白書の作成。
今や職員向け修繕実施研修会を開くと毎回会場がいっぱいに。
そこには同室への権限付与とともに「情報公開」が大きな力ではないかと思います。長年開けられたことない分電盤に多数のヤモリの卵。ぼろぼろになっても手が付けられることなく、清掃もされることなく放置されていた室外機。「驚くべき施設の現況」と題した問題点を写真付きでご紹介いただきましたが、これを見せられ、解決への道をしめされ、一緒に行動していく。新たなものをつくるのではなく、お金をかけずに元の情に戻していく。
今後、修繕はすべて長期修繕計画室で行い、維持管理業務はすべて一元化するなど更なる改善に取り組むとの意気込み。
市債発行。起債はメンテナンスには使えないが、バージョンアップには使えるというルールがありますが、倉敷市の考え方としては「起債は敵だ」「入りを増やすことを考え、出来なければつぶせ」「起債ができるからやるという発想はしない」「今できないものは将来もできない」とのこと。
「壊す」というのは聞こえがいいが、市民説明は悩ましい問題。実際は壊すことができていないとのこと。真正面から何とかしたいという意思は伝わってきました。
こうした動きの中で市役所の雰囲気は変わってきたのかの質問に対しては、そこは簡単ではないとのこと。しかし、同室が主体となってネットワークを作る様々な取り組みをされている。なんでも変えればいいというものではないと思いますが、変えるべきものもあれば、残すべきものがあるということかと思います。いずれにしても役所の都合ではなく、市民のためになるのかどうかという視点が最も重要です。
修繕したい局側とそもそも修繕を行ってきた建築の間を取り持つ同室。同室ができてから、要求元まかせではなく、予算を出す側が現場を見て、無駄をなくし、スムーズな対策が行われ、成果を上げている話も。
現実問題の解決のためにやるべきことは何かを考えたトップ。民間のノウハウをもつ人材をど真ん中に据え、権限を与えて、意識改革から始め、結果を出している倉敷市。横浜市も技監を中心に進めていますが、学ぶべき点が多々あると感じました。
その後、同市には豊かな自然と優れた歴史的環境を生かした有効な都市景観の形成を実現と、それらを次の世代に引き継いでいくことを目的とした同市の都市景観及び景観条例がありますが、市民・NPO・事業者・行政がそれぞれの役割と責任を持って景観形成に取り組くむことにより、美観地区として地域の活性化につながっており、同地区においては、補助金制度や、固定資産税の減免等が行われています。保全に係る経費、補助金制度、税の減免などについて説明をいただき質疑。
現実問題の解決のためにやるべきことは何かを考えたトップ。民間のノウハウをもつ人材を真ん中に据え、権限を与えて、意識改革から始め、結果を出している倉敷市。横浜市も技監を中心に進めていますが、学ぶべき点が多々あると感じました。
これから名古屋市議会を訪問。施策や事業のICT化の目的として今春策定された「第2次名古屋市情報化プラン」について伺った後に横浜へ戻ります。