生活保護制度見直しへの働きかけについて 1645
日本国憲法第25条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と定め、この権利を具体的に実現するために作られたのが生活保護制度です。当然ながら真に必要とされる方へのサポートを怠ることは許されませんが、しかし、制度を悪用するなどといったことには、公平性の観点からも厳しい態度で挑まなくてはなりません。
横浜市のデータによりますと、平成22年4月現在で、横浜市で生活保護を受けている人は、44,438世帯、60,633人。保護率(保護人員/全人口)は人口1,000人当り16.5人。横浜市の保護動向は、昭和59年7月から平成4年6月までは減少傾向で推移してきましたが、その後は増加傾向で推移しているとのこと。世帯の類型別に見ると、平成22年4月現在、全体の44.5%が高齢者世帯で、ついで、30.2%が生計を支える人が病気や障害を伴っている世帯(障害者世帯、傷病者世帯)。
一方、大阪市の受給者は全国最多の15万人。同市が国に制度改正を働きかけるとの記事が日経新聞に掲載されていました。
「国内の生活保護受給者が3月、1952年度以来、約半世紀ぶりに200万人を超えた。高齢化や2008年秋のリーマン・ショック後の景気低迷を背景に申請が急増。全国最多の15万人が受給する大阪市は「制度が実情に合っていない」と社会保障制度全体の見直しを主張する。5月以降、制度の改善に向け、国と地方自治体の協議が続いており、近く意見をまとめる見通しになっている。
現行の生活保護法は1950年に施行。支給額は年度別に厚生労働省が居住地や世帯人員ごとに基準を決めている。11年度の大阪市の場合、50歳単身世帯は生活費と住居費で月約12万円、30歳の夫婦と3歳の子供の3人家族は約21万円。世帯収入がある場合は、基準額との差額を支給する。
大阪市(人口267万人)の生活保護受給者は6月現在約15万人。11年度予算の保護費は過去最高の約2900億円で全体の17%を占める。政令市では4月時点で横浜市(同369万人)が約6万5千人、名古屋市(同226万人)が約4万4千人となっている。
「全国一受給者が多い都市ゆえに制度の問題点をどこよりも把握している」。5月に始まった地方自治体と厚労省による生活保護についての協議で、出席した大阪市の平松邦夫市長は訴えた。
平松市長が主張する問題の一つは、働く能力があるにもかかわらず、生活保護を継続する受給者についてだ。受給世帯を「高齢者」「母子家庭」「その他」などに分けると、99年度に全国で5万世帯だった「その他」が09年度は17万世帯に増えた。このなかには、実際には働ける人が多く含まれているとみられる。
国との協議の中で、自治体側は「働く意欲を喚起する取り組みや制度が必要」などと強調した。
大阪市などは保護費の全額国庫負担(現在は地方が4分の1を負担)や医療費の一部自己負担を提言。これらの意見を踏まえ、厚労省が中心となり8~9月にも意見を取りまとめる見通し。強制力はないが、法改正へのステップとなりそうだ。
ただ、生活保護は国民の最後のセーフティーネットにかかわる制度のため「色々な意見があり、意見集約が難しい」(厚労省保護課)との声もある。
8月29日には大阪市が周辺自治体や全国の政令市など46自治体の生活保護担当者を招いて意見交換会を開く。市の担当者は「効果的な就労支援策などについて意見交換し、対外的なアピールにしたい」と話している。」
大阪市が主張する全額国庫負担などの主張はその通りだと思います。地方が一部負担しているとはいえ、役人と話をしても、まさに「箸の上げ下ろしまで」という感覚で、国の指導通りに処理しなくてはならない現状。現場のことは現場が一番よく知っています。
大阪市の主張は全国の地方自治体の声ではないかと思います。