毎日新聞によりますと、財務省は今月10日、国債と借入金、政府短期証券を合わせた国の借金が、10年12月末時点で919兆1511億円となり、過去最高を更新したと発表。前回発表の9月末時点から10兆2894億円の増加。借金を国民1人当たりに換算すると、約721万6000円。
借金の増加は、社会保障関係費の増大などで膨らんだ予算を国債増発で賄ったことが主な要因。建設国債や赤字国債などを合わせた普通国債の残高は、14兆3424億円増の628兆1558億円。財政投融資の財源に使う財投債なども含めた国債全体では753兆8080億円となり、12兆5202億円増。
国の借金をめぐっては、政府が1月、11年度末には997兆7098億円に達し、1000兆円の大台に迫るとの見通しを国会に提出しています。
借りたものは返さなくてはなりません。難しい言葉で様々表現されることがありますが、なすべきことは収入を増やすことと、使うお金を減らすしかありません。その順番が問題であることは言うまでもありません。しかし、普通の家計で考えれば、今の生活を見直すことから始めるのではないでしょうか。
日経コラム「大機小機」が「財政再建論議に欠けているもの 」と題し指摘していました。
内閣改造で与謝野馨氏が経済財政担当相として入閣したころから、財政再建論議が活発になってきた。また、日銀の白川方明総裁も財政問題に警鐘を鳴らしている。
しかし、最近の財政再建論議は、4つの点で危うい。第1に現状把握だ。確かに日本政府の総債務は巨額であり、よく取り上げられるのも国内総生産(GDP)比での総債務額の数字である。ただ、日本政府は世界でも類を見ない額の資産を保有しており、債務と資産の差額である純債務でみるならば、総債務ほどひどいわけではない。財政状況が悪化しているのは事実だが、現状を誇張しすぎると対応も間違えやすくなる。
第2に政策の目的だ。財政再建は財政のためにあるのではない。財政再建が重要なのは、政府債務の持続可能性など財政の問題が経済に悪影響をもたらすかもしれないからだ。重要なのは経済であり、国民生活である。それゆえ政府債務をGDPとの比率でみているのであり、必要なのはGDPの拡大だ。
第3に手段が問題だ。財政再建を財政赤字の解消に限ると、歳出の削減と歳入の増大が必要になる。日本の財政が悪化したのは、長期停滞による名目成長率の伸び悩みによる税収減少と、社会保障費の増大による。日銀総裁はインフレは財政問題を解決しないという。しかし逆にデフレが続き名目成長率が伸び悩む限り、財政再建は不可能である。
最後に財政再建の手順だ。米ハーバード大学のアレシナ教授らの研究が明らかにしたように、経済協力開発機構(OECD)諸国における成功した財政再建には一つのパターンがある。それはまず歳出削減を集中的に行い、その後に増税を行うというものだ。増税を先行させる場合はほとんど失敗に終わってしまう。
その理由は、増税を唱える政党は選挙に勝てないという政治経済学的なものだけではない。いったん増税しても、歳出削減を通じて支出増加を止めない限り、さらなる増税が必要になる。
現状、目的、手段、手順についての正確な理解を欠いたまま政策を遂行しても、失敗に終わるのは確実である。とりわけ税と社会保障の一体改革の名のもとに、支出には切り込まず消費税増税を前提とする現在の議論には大いに不安を覚える。財政再建の成功を心から願う国民の一人として、財政再建論議の仕切り直しを求めたい。」
歳出削減への政治力と説明能力、そしてビジョンを示すリーダーが必要と考えます。