7月14日(日)
教員や保育士などによる子どもへの性加害が後を絶たないことから、子どもと接する職に就く人の性犯罪歴の有無を確認する制度「日本版DBS」の創設を盛り込んだ「こども性暴力防止法」が先の通常国会で成立しました。
※DBS(Disclosure and Barring Service):2012年にイギリスで確立した制度で、日本語で「前歴開示・前歴者就業制限機構」の意。
日本版DBSについて、7月13日付の公明新聞の記事をシェアします。
<解説>
■教員らの性犯罪歴を確認 / 26年度めどにスタート
「こども性暴力防止法」では、学校や保育所など子どもと接する事業者に、日本版DBSで教員ら従業員の性犯罪歴を確認することを義務付ける。日本版DBSでは、英国で導入されている制度を参考にしたもので、2026年度をめどにスタートする予定だ。
学習塾や放課後児童クラブ(学童保育)、スイミングクラブなどは、一定の条件を満たせば、制度を利用できる「認定制度」が設けられた。
事業者は、従業員や就業希望者について、こども家庭庁に性犯罪歴の確認を申請し、性犯罪歴がなければ、「犯罪事実確認書」が交付される。
照会の結果、犯罪歴が確認された場合は、事前に本人に通知される。それから2週間以内に退職や内定辞退をすれば、事業者への「確認書」の交付はない。一方、本人が退職や内定辞退をしなかった場合、事業者は「確認書」交付を受け、配置転換や不採用とすることが求められる。
照会できる性犯罪歴の対象は、不同意わいせつ罪など刑法犯だけでなく、痴漢や盗撮といった自治体の条例違反も含まれる。照会できる期間は、拘禁刑で実刑の場合は刑終了から20年、執行猶予の場合は裁判の確定日から10年、罰金刑では納付から10年となっている。
公明党は、子どもたちを性暴力から守るための制度検討プロジェクトチーム(座長=浮島智子衆院議員)を中心に、識者や関係団体と精力的に議論を重ねるなど、日本版DBSの制度設計をリードしてきた。政府が当初示した案では、性犯罪歴の照会期間が最長10年と不十分だった。そこで、公明党が主張し、最長20年に見直された。治療など加害者対策の必要性も国会質問で訴えてきた。
<インタビュー> 早稲田大学 嶋田洋徳教授
■(制度の意義) トリガー(引き金)と離し再犯防ぐ / “条例違反も照会対象”は画期的
―日本版DBSについて。
性犯罪は、何らかの刺激によって誘発されることが顕著であり、犯罪のトリガー(引き金)となる要素から話すことは再犯防止へ非常に重要だ。日本版DBSによって、子どもへの性犯罪歴がある人が子どもに関わる職業に就かせないようにすることによる、再犯を防ぐ効果は大きいと考えている。
私の専門とする認知行動療法の観点から見ても、子どもと加害者を引き離すことは有効だ。例えば、加害者が教員だった場合、子どもと関わらない別の職業を本人に勧めることは、治療的支援における標準的な取り組みと言える。
子どもに関わる職業に就かせないようにすることにつながる日本版DBSの創設については、憲法で保障されている「職業選択の自由」との兼ね合いが大きな課題となっていたが、それを乗り越えられた意義は大きい。加害者の更生の機会を奪うとの批判もあるが、むしろ逆だ。加害者側の治療的支援という面でも、子どもから引き離すことは理にかなっている。再犯を防ぐことができ、生活の安定につながることが期待できる。
照会できる犯罪歴について、刑法犯だけでなく、自治体の条例違反も含んだことは画期的だ。当初、政府内にも条例違反を含めることを困難視する向きもあったが、多くの性加害者が照会対象から抜け落ちてしまう事態が回避できた。これにより制度の実効性がある程度、確保できたのではないか。
■(今後の課題) 加害者支援も力いれて / 国・自治体による継続的サポート必要
—今後の課題は。
国内では被害者支援の比重が大きく占めている。それ自体は、極めて重要なことだ。その上で、被害者を出さないよう、繰り返される性犯罪そのものをなくすため、社会として加害者に向き合う努力も必要だ。性犯罪者には重い刑罰を科す以上に、治療を施す方が再犯防止へ効果的であると世界的にも知られている。
加害者を収容する刑務所などで実施されている性犯罪者処遇プログラムでは、認知行動療法に基づく治療的支援が行われている。この心理的アプローチは十分なエビデンス(科学的根拠)があることが知られており、病院などの民間施設でも広がりつつある。心理療法だけで改善されない場合、一部の医療機関では薬物を使った治療が任意で行われている。
—加害者支援で求められるものは。
国や自治体が、加害者を継続的にサポートしていく枠組みを築くことが求められる。処遇プログラムを受けたとしても、出所後に継続的な支援がなければ、再犯につながる恐れがある。刑務所や保護観察所は法務省、その後にかかる医療機関は厚生労働省と、それぞれ管轄が異なるため、十分に連携できていないところがある。
昨年3月には、法務省により、主に自治体向けに、性犯罪防止への地域ガイドラインが策定された。この中では、性犯罪に対して、刑期終了後も地域社会で支援を継続していく重要性が強調されている。大阪府では、子どもへの性犯罪のうち、出所から5年以内の人を対象に、心理師などによるカウンセリングを行うなど社会復帰を支援している。このような仕組みが各都道府県で整備されれば、再犯防止に大きな効果が期待できる。
■治療への社会資源足りず
—加害者支援はなぜ進みにくいか。
「性犯罪」というと、医師や公認心理師の間ですら敬遠するケースが少なくなく、扱える専門家が圧倒的に少ないからだ。
加害者支援の社会資源が進んでいない状況が背景にある。薬物依存者に対して多くの公立病院で治療が行われているように、社会全体で性犯罪者を治療していくコンセンサス(合意)を徐々に形成することが重要だ。
—政治や行政に期待することは。
そもそも、認知行動療法を中心とした性犯罪者への対処は、法務省が大きな方針を示したことで民間で広がった経緯がある。これを踏まえると、政府が何らかのメッセージを発信するインパクトは大きい。
子どもへの性犯罪を巡り、公明党が加害者治療にまで関心を持ってくれたことは、非常に心強い。今後も取り組みを進めてほしい。
◇
適切な運用がなされるよう、自治体の対応などについて今後確認していきます。
