10月12日、福生市議会公明党として、山口県山口市の新山口駅北地区重点エリア整備について、山口市産業交流拠点(KDDI維新ホール)を視察しました。
(1) 新山口駅北地区重点エリア整備について
平成17年度に行われた1市4町(山口市、小郡町、秋穂町、阿知須町、徳地町)の合併(平成21年度には阿東町と合併)により誕生した山口市の都市機能(旧山口市に見られる行政・商業・文化等の高次都市機能の集積と、旧小郡町に見られる広域高速交通網の結節点であることによる市街地の形成)を生かす為、都市政策の柱の一つとして「広域県央中核都市づくり」を推進しており、この2つの市街地を広域県央中核都市の核=都市核と位置づけ、にぎわいに溢れ、地域経済の活性化をけん引する広域交流拠点の形成を目指しています。
このような背景から、小郡都市核においては、将来像を「地域を豊かにする経済(ビジネス)のまち」「新たな交流が生まれ、始まる融合のまち」「山口県の陸の玄関にふさわしいシンボリックなまち」として掲げ、これを具現化するプロジェクトとして、「新山口駅ターミナルパーク整備(基盤整備)」と「新山口駅北地区重点エリア整備(市街地整備)」の2つからなる「ターミナルパーク整備」に取り組んできており、新山口駅ターミナルパーク整備としてはフランスの芸術家パトリック・ブラン監修の垂直庭園(壁面緑化)を施した南北自由通路をはじめ、橋上駅舎、駅前広場等の整備を進め、新山口北地区重点エリア整備としては、プロジェクトの総仕上げとして「山口市産業交流拠点(KDDI維新ホール)」を令和3年4月に完成させました。
整備手法については、民間事業者の資金や技術力、創意工夫、ネットワークを生かして設計、建設、維持管理、運営までを一体的に委ねる「PFI的手法」を採用し、公募型プロポーザル方式により事業者を選定していますが、公募に際しては、多目的ホール・会議室・スタジオ・駐車場など、市が求める機能は必須として位置づけを行ったうえで、まちの魅力をさらに高めていくため、市有地を活用し、事業者自らが整備及び管理運営を行う民間収益施設の提案を必須項目として求めるとともに、公共施設の利便性の向上及び市民生活の質の向上に資する独自提案を任意で求める形を取っており、民間収益施設として環境配慮住宅、独自提案施設としてライフイノベーションラボ(健康産業支援施設)、アカデミーハウス(人的交流施設)が整備されています。
また事業スケジュールに関しては、平成28年度から約5年間と非常にタイトなスケジュールでこのような規模の開発・整備を行ったことは驚きであり、相当なご苦労もあったものと感じました。

(2) KDDI維新ホール(山口市産業交流拠点)について
産業交流施設(KDDI維新ホール)は、最大2千人を収容できる可変型のメインホールや、大小12の連結利用も可能な会議室をはじめ、人と仕事にめぐりあい、新たなビジネスの創出を支援する産業交流スペース「メグリバ」、健康づくりとヘルスケア関連産業の創出を目指す「メディフィットラボ」、シェアハウス型の若手人材育成施設「アカデミーハウス」など、産業と交流をキーワードにした様々な機能で構成される多機能複合施設です。
構成施設の機能については以下の通りです。
多様なMICE(企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字を使った造語で、これらのビジネスイベントの総称)の新拠点として、2,000席(県内最大)の収容能力を有し、可変型の座席により、座席収納時には1,000㎡程度の平土間としての利用などが可能で、一定レベルの通信、音響機能も有しており、コンベンション、展示会、音楽コンサートや演劇、ライブビューイング、市民活動の発表の場として利用が見込まれます。
多目的であるため、利用方法・人数によっては会場の空きが気になる場合も想定し、暗幕を座席上に配置し空間を仕切れるようになっており、演者と観客の双方が気持ちよく利用できる工夫がなされている点に注目しました。
多種多様な交流でビジネスチャンスに「巡り合える場所」として、実践的なビジネス支援とともに、セミナー・イベント等の開催を通して、新たな交流やビジネスコミュニティを日常的に生み出し、テストマーケティングの場として、シェアキッチンやチャレンジショップ等の事業を展開するとともに、デジタル人材の育成やネットワーク化、デジタル技術を生かした仕事の創出を目指しています。
施設の構成は以下の通りです。
(コワーキングスペース)
オフィスとして利用できる会員制(有料)のスペース。Wi-Fi環境、メールボックス、複合機等完備。住所利用、法人登記等も可能。
(コミュニティラウンジ)
ビジネスセミナーや交流会、イベントを定期的に開催。商談やミーティングなど、誰でも気軽に利用できるスペースとしても開放。
(カフェ)
地元で焙煎する珈琲豆を使ったドリップコーヒーをはじめ、山口産クラフトビールなど、こだわりのメニューを提供。お弁当の委託販売も可能。
(シェアキッチン)
「自分でお店を開いてみたい」という人なら誰でも低リスクで飲食店にチャレンジできる場所。本格的開業に向けた実地トレーニングの場として運営。
(チャレンジショップ)
地元名産品や手作りのクラフトアクセサリー等、ギャラリー的に商品の展示や販売に活用できるスペース。
これまでも創業支援の観点からシェアキッチンやチャレンジショップについては議会でも提案してきましたが、このようなスキームは非常に有効性が高いと感じました。また、同じフロアに公的機関(商工会議所、ハローワーク等)も併設されており、多様な就労、創業等の相談支援が可能となっています。また、視察時にカフェで市民講座を行っていましたが、参加者は若者だけということはなく、様々な人の繋がりを作る、まさに「巡り場」であることが伺えました。
健康づくりとヘルスケア関連産業の創出拠点として、医学的視点を取り入れた運動プログラム等を提供・実践するメディカルフィットネスを整備し、施設内の整形外科クリニック等との連携により、市民の健康寿命の延伸や健康経営の促進等を目指しています。また、山口県等とも連携し、ヘルスケア分野の新産業の創出に向けて取り組んでいるとの事。
ここでは「メディカルフィットネス」という手法を取り入れているところにまずは注目しました。整形外科を併設、連携し、医療控除の対象にもなるため、一次予防医療の観点から有効であり、健康寿命の延伸という目的に対し広い世代の利用が期待できます。
シェアハウス型の若手人材育成施設として、学生や若い社会人等を対象に、居住型の人材育成施設(21戸)を整備し、1年間の共同生活における他者・地域との共生や、専門家がバックアップするPBLやキャリア開発プログラム等を通して、地域をけん引する次世代のリーダーとなり得る自律した人材の育成とコミュニティの醸成等を目指しています。
ここでは、アカデミーハウス独自のプログラムとして、哲学をベースとした時間共有型のキャリア開発プログラム「P.C.Tプログラム」(Plilosophy-based Career Development Through Time Sharing)を採用・実践している点に注目しました。PBL(Project Based Learning)、いわゆるアクティブラーニングの手法を用いて、哲学的思考を習得した上で、目新しいアイデアや手法による課題解決を実践し、プロジェクト進行の全プロセスを通じて課題解決能力、ファシリテーション、リーダーシップとフォロワーシップ、マネジメントなどのスキルを学ぶことで、地域・組織をけん引していける人材育成を目指しています。また、地域コミュニティや地元企業・団体との交流や連携企画を通じ、双方向な地域振興の促進を目指しており、地域の発展に寄与する、地域人材を育成することにもつながっているものと思われます。
地域の若手人材育成をシェアハウス型で行うという事例は聞いたことがなく、非常にユニークであり、これには、『デジタル社会に必要なスキルを身につけるのは個人でできることだが、コミュニケーション能力や自己肯定感の向上、いわゆるあの非認知能力を伸ばすためには個人ではなく集団によるアプローチが必要』という考えがあります。年齢や業種も多様な人たちと1年間共に過ごし、学び、実践する。この成果等について、今後更に調査する必要があると感じました。
これらの施設の事業費については、プロジェクトマネジメントや基本設計、実施設計、工事監理、建設工事、備品、建築確認申請手数料等で110億800万円、財源については、国費(社会資本整備総合交付金、地方創生推進交付金)、起債(公共事業等債、合併特例債等)、一般財源等(合併特例基金、地域振興基金等)で110億800万円との説明でした。
また、管理運営体制については、維持管理・運営JV(森ビル都市企画(株)、(株)コンベンションリンケージ)を指定管理者として置いていますが、産業交流スペース「メグリバ」のみ(株)ツクリエを指定管理者としています。これには3年、あるいは5年といった期間で成果が出る事業ばかりではない為、JVの指定期間を15年間、ツクリエの指定期間を3年間と定めているためです。また、公的機関等オフィスとして、山口商工会議所、広域ビジネスサポートセンター、山口しごとセンター、山口新卒応援ハローワーク、山口県福祉人材センター、公益財団法人やまぐち産業振興財団が入居していますが、この部分についてはそれぞれの機関が運営を行っているとの事でした。

事業費110億超と非常に多額の費用がかかった施設ですが、多様なMICEの新拠点としてのメインホールを中心に、しっかりとしたコンセプトに基づく特徴的な施設と様々なアイデアで独自事業を展開することで利益を上げ、市の持ち出しとしては年間約4億程度との説明がありました。市内外からの誘客により「稼げる施設」であることは、にぎわいを創出し、持続可能な施設であるために必要なことであり、この点をいかに担保するかが重要であると改めて確認しました。
福生駅西口地区再開発事業においても、公共施設の集約により総量抑制に伴う維持管理費等の縮減に寄与するものであることはもとより、事業費をいかに回収するか、市の負担を抑えていけるかという視点が求められます。
今回の視察成果を今後の福生市における事業展開へのより良い提案につなげていきたいと思います。