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▶(東日本大震災9年)新たな町へ一歩ずつ/福島・双葉、大熊、富岡町「復興拠点」の一部が避難解除/JR常磐線は14日再開

2020年3月10日

(東日本大震災9年)新たな町へ一歩ずつ/福島・双葉、大熊、富岡町「復興拠点」の一部が避難解除/JR常磐線は14日再開

■つながり再構築、課題重く

 東京電力福島第1原発事故から9年を前に、福島県の双葉、大熊、富岡3町の帰還困難区域のうち、再び人が住めるように整備する特定復興再生拠点区域(復興拠点)の一部が初の避難指示解除を迎えた。14日には、JR常磐線全線再開という大きな節目を刻むが、歳月とともに課題は複雑化している。(東日本大震災取材班 文=渡邉勝利、写真=倉科宗作、大久保尭央)

■時間がかかった

 冬の灰色の寒空からも、わずかな光が見えた4日午前のJR双葉駅前。この日、避難指示が解除され、立ち入りが自由になった周辺には、真新しい駅舎や役場連絡所の様子を見つめる住民らの姿があった。

 町は被災自治体で唯一、全域避難が続いていただけに「時間がかかったが、ようやくここまできた」(伊沢史朗町長)との言葉にも実感がこもる。だが、現時点では水道など生活インフラが未整備で、住民帰還は2年後の春をめざす。

 実際、駅前には震災で壊れたままの商店や民家が残り、荒涼とした光景が広がる。避難先での生活が定着するにつれ、帰郷を望む人も少なくなり、町は鉄路復活を弾みに、新たなまちづくりの具体化を急ぐ。

■交錯する光と影

 双葉町とともに、第1原発が立地する大熊町では、昨年5月に住民帰還が開始。町が「復興の最前線基地」と定めた大川原地区には、役場新庁舎や災害公営住宅(復興住宅)に続き、イチゴ栽培施設や夜間営業の飲食店もできた。

 近く介護施設もオープンする予定で、復興住宅に暮らす森山真澄さん(45)は「私が大好きな大熊町を築いてくれた高齢者の生活を支え、町にも恩返しができたら」と採用面接の結果を待ちわびている。

 町の中心部だった地域の再生も進む。5日には、JR大野駅周辺や県立大野病院、同駅から大川原地区をつなぐ町道などが解除に。常磐線再開に合わせ駅と大川原地区を結ぶバスも運行し、避難先から町民が通いやすい環境を整えるほか、駅前には企業が入居するビルや商店街、住宅団地の整備などの構想も膨らむ。

 とはいえ、現在の大野駅周辺も双葉駅前と同様に、“光と影”が交錯する状態だ。修繕を終えた駅舎や駅東西の広場の前に立つと、荒れ果てた商店や家々が目に飛び込み、震災9年の重みを無言で訴え掛ける。建物の解体に向けて町は、各地に散らばる地権者ら147人と用地交渉を進めているが、今後、補償額の調整など難しい局面が待つ。

 一方、町内には国の除染計画が定まっていない「白地地区」も残されている。国が整備する復興拠点の対象から外れたため、帰還の見通しは立たず、住宅も放置されたまま。町民の多くは「一時帰宅で自宅を見ると、情けない気持ちになる」と肩を落とし、方針を早く示すよう求めている。

■「心が折れそう」

 南へ下り、17年4月に大半の地域で避難指示が解除された富岡町。きょう10日には、JR夜ノ森駅につながる県道や町道も解除となり、桜の名所である「夜ノ森の桜並木」で観桜できるエリアが広がる。

 町企画課によると、町内の居住者数は、2月1日時点で1205人。住民登録者数の13%で、約半数は復興関連の作業員らが占める。3年前に妻と自宅へ帰った70代の男性は、周囲に顔なじみがほとんどいないと嘆き、「震災前のような地域のつながりは、影も形もない。3年頑張ったが、もう心が折れそう。避難先にまた戻ろうか……」と複雑な表情を見せた。

 そんな中、住民が主体となって地域のつながりを再構築する動きも。清水行政区では「帰ってきた人が仲良く」「新しく来た人も住みやすいように」と積極的に声を掛け合い、“新住民”とも交流を重ねている。

 ただ、こうした活動はまれで、町も「帰還者へのサポートが十分にできていない」という。帰還した人をどう支えるのか、難しい課題が突き付けられている。

■取材後記

 希望を胸に帰郷した人が苦境に立ち、孤立感を強めている――。震災9年の取材を通し、目の当たりにした厳しい実態だ。

 若い世代の反対を押し切って帰還した高齢者も多く、声を上げにくい面もある。買い物環境や医療体制の整備はもちろん、コミュニティー形成への支援が欠かせない。今後、移住者を呼び込む施策が拡大するが、理想と現実のはざまで気持ちが揺れ動いている被災者がいることにも心を砕きたい。

コメント 2020-03-10 105402

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