公明党代表 山口なつお TPPについて語る
■TPP 見切り発車は許されぬ
通常国会の論戦が幕を開けた。国づくりに関わる大きな論点として、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が急浮上している。本来、TPPは、通商によって日本の経済基盤を強化する観点から、建設的で前向きに議論されるべき重要なテーマである。ところが、政府・与党内の合意形成もないまま、菅直人首相が唐突にぶち上げ、早くも先行きは不透明になっている。
◆政府・与党の統一見解を示せ
今国会の施政方針演説で菅首相は「明治の開国」「戦後の開国」に続く「平成の開国」として、6月を目途にTPP交渉への参加に結論を出すと改めて表明。「各党の意見を持ち寄り、議論を始めよう」と呼び掛けたが、社会保障・税の問題と同様、野党の意見を聞く前に、まず政府・与党の統一見解を示すことが先決だ。
TPPは、関税撤廃を原則とする太平洋周辺諸国の自由貿易圏をつくる構想で、米国、オーストラリア、シンガポールなど9カ国が参加する見通しだ。貿易や投資、人の移動など、かなり広範な分野で自由化を協議し、米国は11月の交渉妥結をめざしているようだ。
このうち農業分野の関税撤廃は、全国の農林水産業、自治体の関係者から不安を訴える多くの声が寄せられている。農業だけの問題ではない。新たなデフレ(物価の持続的下落)圧力として作用する懸念も指摘されている。
TPPの経済的影響に関して、内閣府、経済産業省、農林水産省がそれぞれ異なる試算結果を示し、国民は戸惑うばかりだ。一体、TPPは国民生活に何をもたらすのか。そして、「その先」にどのような経済社会を築こうとしているのか。こうした根本的な問題に対し、国民への具体的な説明、情報開示が菅政権に求められているのであって、6月に見切り発車するようなことは許されない。
一方、施政方針演説で菅首相は、貿易自由化と農林漁業再生の両立を訴え、農業者戸別所得補償の拡充を強調した。来年度は補償対象を水田農業から畑作に拡大し、農地の大規模化を支援するという。これまで民主党政権が無視してきた農地集積などの構造改革にやっと目を向け始めたようだが、問題は財源である。戸別所得補償は、農産物の生産価格と販売価格の差額、つまり赤字分を補填(ほてん)するのが基本だ。来年度の農林水産関連予算案が前年度比で削減される中、戸別所得補償制度は42.5%も増加している。仮に貿易自由化で農産物価格が下落すれば、財源がいくらあっても足りなくなるだろう。
さらに、民主党政権の歴代農水相は戸別所得補償制度の法案を「国会に提出する」と明言してきたにもかかわらず、いまだに提出していない。民主党は野党時代、廃案になったとはいえ、法案を国会に提出した。与党になった今、国会に提出できないというのは不可解だ。国会審議で戸別所得補償のさまざまな矛盾を追及されるのを恐れているとしか思えない。予算措置だけの不安定な制度でよしとするのは、あまりにも無責任だ。
◆農業と環境で「緑の産業革命」
TPPへの参加問題に関わらず、公明党は農業再生に全力で取り組む。低い関税率の下で国際競争に耐え抜いてきた野菜や果樹、畜産、花卉(かき)など一定の競争力を備えた品目をさらに伸ばすとともに、水田稲作のような土地利用型農業の農地集積、担い手の確保を急がなければならない。
農業就業人口の減少や耕作放棄地の増大といったマイナス面ばかり強調されがちだが、日本農業には世界屈指の技術力があり、就農を希望する若者も増えている。その潜在力を最大限に引き出し、農業と環境を軸にした「緑の産業革命」の実現に挑む。