私は児童虐待防止について千葉市議会 で取り上げるため、2016年1月に児童相談所 に泊り込んで視察しました。

視察と言っても、ジャージを着て、児童には議員とは言わずに、職員の見習いとして扱って頂きました。
できるだけ、児童や職員の現場の生の声や姿を知りたかったからです。
夜間指導員に準ずる扱いなのか?児童たちからは「ヤシさん」と呼ばれました(笑)。
あれから随分たちますが、その視察結果を踏まえて行った議会質問について、いまだにお問い合わせを戴くので、それらを中心に紹介します。

 

 

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まずは現場の様子です。
写真では時計が23時を超えています。
虐待通告のあった現場から職員がこの時間に 児童相談所 に帰ってきて、迎え入れた幹部も立ったまま緊急受理会議。
そして、翌朝に児童を保護する流れを意思統一、それから報告書作成。
更に24時には非行の身柄付通告で児童1名が児相へ…
20時半に1歳半の被虐待を疑われる乳幼児が入所したばかりなのに・・・・
本当に大変な職場だ…

議会質問①
児童相談所の一時保護所に「個室」の増設を求め、男女各3室ずつが増設されました。
当時はまだ「個室」のイメージが悪く、児童養護の重鎮の方から当方への御批判も戴きました。
心的葛藤を抱える児童、思春期と幼児との混在状況、多動的特性、インフルエンザ等の医療対応…個室の必要性は明らかで、現在ではかなり理解されてきていると思います。

 

 

男子個室③

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質問②
一時保護所の児童に対する学習支援を求めました。
児童相談所 からは学校に通えないので、児相で保護されている期間(当時の全国平均在所期間は約30日間)は、児童が勉強する機会を児相で保障する必要があると考えました。
グランドの隅に学習室を建て、教員OBのNPOによる協力もあり充実に向かいました。

 

 

男子学習スペース(外①)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質問③
児童相談所 の強化と言うと児童福祉士や児童心理司の大幅増員で解決するかの印象をもたれやすいのですが、問題はその専門性を発揮できる体制です。
当時の職員の平均従事年数が約3年であることと、この分野のスーパーバイザーには10年以上の経験が必要であることを明らかにし、改善を求め、市も必要性を認めました。

③の補足
児相経験者の庁内配置は慢性的な人事課題ですし、全国の市立児童相談所 の多くは、市内に1か所しかないため、転勤先の児相を複数有する県立児相よりもスキルアップを図りにくい構造があります。そのため研修等で自助努力されていますが、自治体間の交流等も必要かと考えます。

質問④
児童相談所 は法的な争点が生じやすい業務にもかかわらず、福祉系の職員にとって法的対応は専門外です。
そこで弁護士の配置を求め、平成28年度から嘱託職員として児相に配置されました。
児相を守るだけでなく、福祉が時に陥る「良かれと思っての行動が、結果的に権利侵害」を防ぎたい想いもありました。

質問⑤
児童相談所 の一時保護所に限らず、「施設」というものは構造上閉じた生活世界になりがちなので、施設運営に外部評価の導入を試行するように求めました。
これはかなりレアな取り組みで、運営サイドには大変しんどい話ですが、意外にも市の答弁は即実行したいとのことで、翌年度に試行し結果を検証へ。
その過程で地元の専門家からの意見も一時保護所の運営に反映されるなど、貴重な機会になりました。

(写真は長年の懸案だった畳を、外部評価委員の方々が知恵を出して新調してくださったものです(感謝))

 

 

畳の新調

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質問⑥
児童相談所 で生活する児童から不安や不満を「聴く姿勢を大人側が常に示す」必要があると考え、食堂の隅にあった目立たない意見箱を目立たせ、当直に関わらない幹部職員が中身を確認するように求めました。当直する職員には言えないこともあるからです。所長が毎朝見ると答弁(!)これも意外なほど積極的な答弁でした。

 

意見箱tw分

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質問⑦
保護者が保護に不同意で、法定の保護期間(2カ月)を超えた一時保護については、法改正により家裁の承認が平成30年度から必要になりましたが、当時から私は保護期間の長期化が課題であるとして、法定期間を超えて保護している児童には、本人が特段希望していなくとも、弁護士の聴き取り調査を行うように求めました。
親も頼れない児童には、児相の職員とは別に、味方となる大人が必要と考えました。権利擁護と心情の安定のためです。

質問⑧
現在、児童相談所 と警察との全件共有が議論に。当時の私に議会質問でも恒常的な連携を制度的に整備すべきと求めました。
ありがたいことに、千葉市 でも既に児相における警察OBの配置を進め、援助要請マニュアルも警察に周知されていました。当時の児相課長が警察に自ら持ち込み説明してきた汗の結晶で、敬服しました。

まとめ①
2年前のこれらの議会質問では、一時保護所の話題にかなり時間を割きましたが、それは一時保護所の運営が安定・充実しないと、児童が保護されても安定せず、それ以降の大人による働きかけも効果が薄くなる、児童相談所  のマンパワーをアウトリーチに割けなくなる、と私なりに考えたからです。

まとめ②
現在、千葉市 内に1か所の #児童相談所 を増設するように会派として求めるなど、その後も様々な取組み。
私の政策も 一時保護所 と職員体制の整備は「ホップ」で、増設は「ジャンプ」。
「ステップ」は?
…里親制度やアウトリーチの充実が必要で、これまで単独で新潟市、会派で福岡市を視察。

その後①
議会質問で終わりではなく、答弁後の設備・体制向上の進捗を毎年、現地視察し確かめてきました。そして、今夏は自分だけでなく、公明党千葉市議会議員団 全員で一時保護所に出向き、空調設備も含めた、猛暑の中での児童の生活現場を視察しました。
小中学校でのエアコン整備が騒がれる中、私は一時保護所の空調が心配でした。頼れる親のいない児童のことが心配でした。
設備は整っていましたが、運用がいまいちの印象で、だからこそ視察してよかったと思いました。

 

 

 

児童相談所

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後②
で、政策第二段階「ステップ」の里親 さん。
先日の千葉日報に掲載された里親夫婦と、千葉市 の里親制度の実情と課題について、今週、腰を据えて懇談。
これからの 児童養護 の核となる重要な役割。ここでも学ぶべきは当事者・現場からです。

 

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久しぶりの追記です。
これまでも、虐待専従チームの設置、夜間相談・指導員の増員についての議論を重ねてきましたが、そこを省略し、

今回は、令和2年第3回定例会での質疑を掲載します。
【今回の主な質疑】
①質問)新型コロナウイルスによる一斉休校期間中における要保護児童等の状況をどのように把握しているか

答弁)児童虐待リスクが高まる恐れがあることから、要保護児童対策地域協議会(要対協)のケース延べ651人について、3月と4月に児相、各保健福祉センター、保健所、学校が原則目視で状況確認をし、一時保護などの緊急性の高い児童はおりませんでしたが、継続支援を実施しました。

評価)今夏に判明した市原市での虐待死事案では、目視確認を怠ったことが虐待を見落とした直接の原因とされていることから、国からの指示より先んじて、市内の関係機関が協力して目視確認していたことを評価しました。

 

 
②質問)国が努力義務として定めた、区役所を入口とする「子ども家庭総合支援拠点」を千葉市でも設置して、児相のみで全件を対応する現在の虐待対策体制を抜本的に整備すべき

答弁)子ども家庭総合支援拠点の令和4年度からの設置を検討します。

評価)初めての具体的な答弁です。令和4年度の設置開始、令和6年度の全市展開に向けて、身近で寄り添える区役所で虐待リスクを適切に把握できる体制整備を目指します。
さらに、子ども家庭総合支援拠点と要対協との関係などについても質疑を行うなど、単に新たな機関を作ることが目的ではなく、これから詰めるべき詳細についても議論を始められたことは、意義深かったと思います。

 

 
③質問)被虐待児の自治体を超えた転居によって支援から抜け落ちないように、自治体間で情報を共有する広域連携システムを千葉市で導入すべき

答弁)令和3年度から遅滞なく導入してまいります。

評価)昨年の野田市での死亡事案では、転居元の沖縄県との連携が問題になり、昨年の質疑で本市と他自治体との連携方法を問うたところ、現場の職員が何とかFAXで対応している実態が明らかになりました。そこで、昨年から本システムの導入を求めてきましたが、来年度には間違いなく導入するとの強い約束でした。

 

 
④質問)どのような体制でも、児童の保護や専門家育成などの面で、現在の児相では既にキャパシティを超えており、児相の増設、分所・支所の設置を具体的に検討し、課題を整理すべき

答弁)増設も含めて最適な在り方を検討し、増設にあたっては、来所者の利便性、施設の役割分担、住民と児童のプライバシー保護、一時保護所増設の必要性を整理して検討します。

評価)平成28年第1回定例会で、児相の増設を初めて当方が要望した当時とは全く雰囲気が異なり、他の全会派も今回の議会で要望するなど、「いよいよ」の感があります。

 

 
⑤質問)現在の1所長・1課長・9班制を見直し、総務系の部署の設置も含め、組織を再編成すべき

答弁)組織として人事・経理・施設管理を迅速かつ適切に処理する必要性は年々高まっており、人材育成も含めて最適な組織の在り方を検討します。

評価)虐待通告件数の急増により急激に大きくなった児相の組織は、構造がいびつになっており、早急に整備する必要があります。また、福祉・心理の臨床の専門家が「いい仕事」をするには、総務系が整備されていないとできません。私自身が少年院や少年鑑別所の教官として現場で最も痛感していたことで、専門家の増員は全国的に求められていますが、専門家を機能させるための総務系の整備は初めての提案で、前向きな答弁でした。

 

 
⑥質問)児童相談所で保護した児童に対する食費単価を見直す必要があるのではないか

答弁)(成長期の児童への食事と食習慣は重要であるとしたうえで)食費単価は、平成4年の開所以来見直しを行ってこなかったことから、適切な単価を検討します。

評価)これまで食費単価の見直しがされてこなかったことを、当局が言い訳せずに、率直に認めたことに驚きました。これは千葉市だけが遅れているのではなく、全国の政令市の児童相談所が抱える、共通の構造的な課題です。ただ、総務系が弱い組織のしわ寄せを、このような形で児童にかぶらせてはいけません。今後に向けて非常に誠実な答弁でしたので、全国をけん引する改革を期待しています。

 

 
⑦質問)保護した児童が18歳で進路が決定していない場合の措置延長や施設退所後のアフターケアに取り組むべき、そのためにも、他市より少ない自立援助ホームの増設を積極的に支援すべき

答弁)措置延長やアフターケアの必要性は高く、自立援助ホームは、義務教育を終了した児童に対して、日常生活の援助や指導、就職に向けた支援等を行うなど、児童の社会的な自立にとって重要な役割を担う施設であると認識しており、今後の設置については、開設希望の申し出があった際に、既存施設の入所状況や本市児童の入所ニーズ等を踏まえ、検討してまいります。

評価)議場では、人口比において近隣市と比べて、千葉市における自立援助ホームの数がかなり少ないことを指摘しました。これは、まず量的問題の指摘です。
さらに、質的な問題として、答弁では児童のニーズという視点が提起されましたが、制度的にも、支援事業は児童本人や関係者が自立援助ホームに直接申請できるものではなく、児相に申請する制度ですから、入所状況そのものは、そのケースワークに大きく左右されます。ニーズがないのではなく、ケース機能に課題があります。

そして、これは私の個人的な経験ですが、主に未成年の彼女たちに住居と仕事を提供するのが、東京の風俗業の大人ではなく、千葉の児童養護の大人であるかどうかで、彼女たちの将来が左右されます。(そう言ってしまえるほど、千葉の女子非行のベースは、東京の「夜の街」への流出が密接です。)

すなわち、家庭での生活が困難になった千葉市の女子児童を、千葉市で受け入れる受け皿をきちんと用意して、受け入れるサイクル、ケースワークの流れを作ることです。その受け皿としての自立援助ホーム増設への支援を重ねて強く要望しました。

 

 

 

⑧質問)千葉県では、昨年1月に野田市で小学4年生の女子児童の虐待死の事案を受け、今後は虐待死事件について一切情報を公表しない方針を決め、本年、近隣市で虐待死亡事案が発生した際には、県の担当部門が情報を公開しないように当該市に助言をしていたという件に関連して伺います。
児童虐待事案に関する情報の公表について、千葉市ではどのように考えているか。

答弁)児童虐待事案に関する情報の公表にあたっては、極めて慎重な取扱いが求められることから、千葉市個人情報保護条例をふまえ、個々の事案の状況に応じて判断すべきものと考えております。

 

評価)もとより被害児童本人の性被害や心理判定等の詳細について、どこまで個人情報を公開するかは慎重を要し、保護者(特に母親)のみを吊し上げにしてバッシングするような報道姿勢に賛成できませんが、それと自治体が当事者で責任を問われているような事案の情報を、当該自治体が自ら非公開にしようとすることとは別の問題です。県の第三者検証委員会に参加された有識者をはじめ多くの専門家からも、千葉県に対して「隠蔽する動きだ」「当事者意識がなさすぎる」との批判の声が聞かれました。このことは重要な教訓と考えます。

米国では病院や学校などの専門家からの虐待通告が最も多いのですが、日本では近所からの通告が最も多く、良くも悪くも、いわゆる「世間の目」が機能している社会です。
そのような社会において、「通告(協力)してくれ、でも情報は出さない」という姿勢は通用しませんし、児童虐待問題が明らかにされず、その問題への世間の関心が下がり、通告に至らないケースが増えてしまうことは、不幸な児童を増やしかねません。

さらに申し上げれば、死亡事案であれば、県警が発表しないことはあり得ないので、非公表を前提にするのではなく、その公表の在り方を吟味すべきと考えます。
千葉市の答弁は、個人情報保護条例に基づいた非公表をベースに考えるものではなく、また当時の県の方針に倣うものでもないことは確認できましたが、今後、さらに論点を整理しなければならないと考えます。

 

 

 

平成30年ころの質疑などは全然掲載できておらず、

付け加えた令和2年第3回定例会の質疑でも、議場で行った子ども家庭支援拠点と要対協との関係に関する質疑も掲載できておらず、

まだまだ不十分なページですが、

今後も児童虐待防止に取り組む限り、書き足していこうと考えています。

 

 

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