職業訓練を通じて建築技能者の養成をめざす厚生労働省の緊急育成支援事業が、いよいよ本格的に動き出す。今月下旬から各地の業界団体などを拠点に全国17か所で、職業訓練生の募集が順次始まる。
支援事業は、離職者や転職者、新卒者らを訓練生として募り、建設現場で不足している型枠工や鉄筋工、とび工の職種を中心に職業訓練を行う。2週間から6カ月程度の訓練を受講した訓練生は、ハローワークで就職の斡旋支援も受けられる。
建設技能者の育成は、現場での仕事を通して必要な技術や知識、経験を身に付けさせる「OJT(職業内訓練)」と呼ばれる手法が主流である。だが、建設現場では技術、知識を教える人や時間を振り向ける余裕がなくなっている。このため、技術を習得する途中で離職する若者も多い。
一方、現在の公的な職業訓練施設では、型枠工や鉄筋工などの技術の訓練メニューを受けられるところは全国でも少ない。そうした施設のない地域の人は訓練機会が限られてしまう。これらの課題が、建設技能者の不足が指摘されながらも、その補充が進まない一因となっている。
今年度から業界団体と厚労省が連携し、充実した職業訓練の実施に着手したことを歓迎したい。事業は、今後5年間で5000人の人材養成を目標に掲げている。2020年の東京五輪・パラリンピックの開催や東日本大震災の復興、老朽インフラ対策などで建設需要は高まっており、育成が急がれる。
厚労省は今後、職業訓練を受けられる地方拠点を増やすことも検討する。妥当な方向性だが、深刻な人材不足を補うため、養成する人材の目標数を、さらに上積みできないか、検討してほしい。
また、支援事業については、一般の求職者に知られていないのが実情ではないだろうか。ハローワークと連携した広報活動などで事業の周知徹底をしてもらいたい。
まだ数は少ないが、女性の建設技能者が活躍する現場では、女性ならではの視点によって、作業の段取りが円滑になるなどの成果が出ている。人材の裾野を広げるため、女性にも募集を積極的に呼び掛けるべきだ。

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