2019年6月20日
自公両党が取りまとめた認知症基本法案を提出する古屋副代表(中央右)ら=20日 国会内
■公明案ベースに議論進む
自民、公明の与党両党は20日、認知症の人が「社会の一員として尊重される社会の実現を図る」ことなどを明記し、施策の強化を図る「認知症基本法案」を衆院に共同提出した。公明党から党認知症対策推進本部長の古屋範子副代表らが出席した。席上、自民党の田村憲久政務調査会長代理は「公明党が一歩先を行っていたが、このほど与党案として取りまとめ、共同提出となった」と述べた。法案提出の経緯や意義などについて古屋副代表に聞いた。
■党推進本部長 古屋副代表に聞く
――法案提出までの経緯は。
2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるといわれています。公明党が昨年実施した「100万人訪問・調査」運動でも、認知症に関する不安の声が多く寄せられました。認知症の本人・家族が希望を持って暮らしていけるための施策の充実は喫緊の課題です。公明党は、いち早く、この課題に本格的に取り組み、15年に政府に認知症施策の国家戦略(新オレンジプラン)を策定させました。
17年8月には党内に対策推進本部を設置し、「総合的な認知症施策の推進に向けた提言」をまとめ、同年12月に政府へ提出。提言の最初の項目に掲げたのが、国を挙げた総合的な取り組みを進める理念や枠組みなどを法的に規定する「基本法」の策定でした。
翌18年9月には、他党との議論のたたき台になるよう公明党としての骨子案を発表しました。まず自民党に働き掛け、まとめたのが、今回提出した法案です。
――基本法案の意義は。
一連の公明党の取り組みを受け、政府は18年12月に関係閣僚会議を設置し、今月18日には認知症施策の新たな「大綱」を発表しました。ここには党認知症対策推進本部が5月29日に政府へ提出した提言が随所に反映されています。基本法が制定されれば、政府の取り組みに加え法的な面でも、認知症施策を本格的に前進させる確かな土台ができます。
――法案のポイントは。
「目的」には、予防などを推進しながら、認知症の人が尊厳を保ちつつ社会の一員として尊重される共生社会の実現を掲げています。当事者の意思を大切にし、家族・関係者も含めて寄り添っていくという「理念」も示しました。
認知症に関する課題は予防、ケア、街づくり、教育、生活支援など多岐にわたるため、法案では国や自治体、事業者、国民の責務を定めました。これにより公明党が一貫して主張してきた、省庁や自治体の枠を超えた総合的な施策の推進が見込まれます。
また、政府に目標と達成時期を定めた「認知症施策推進基本計画」の策定を義務付け、地方自治体についても努力義務としました。これを策定する際は、当事者や家族、関係者からの意見を聞く規定を盛り込みました。
今回の基本法案には、これら重要な内容が盛り込まれています。今後、野党とも幅広い合意を形成し、早期成立をめざします。
法案の骨子
●政府に認知症施策推進基本計画の策定義務。都道府県・市区町村には努力義務
●国や自治体が行う施策として、安心安全な地域づくり、権利利益の保護、生活支援
●認知症・軽度認知障害の早期発見・早期対応
●専門的な医療機関の整備
●相談体制の整備
●65歳未満で発症する「若年性認知症」の人の就労支援
●認知症の日(9月21日)、認知症月間(9月)を定める
●首相を本部長とする認知症施策推進本部を設置