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公明党 平和創出ビジョン
~対立を超えた協調へ~
はじめに
複雑化する国際環境
国際社会は、地政学的対立、戦争、核の脅威、気候変動、人知を超える新興技術の台頭といった複合的な危機に直面している。特に日本周辺の安全保障環境は厳しさを増し、ルールに基づく国際秩序が揺らいでいる。
信頼醸成による紛争予防
公明党は、2024年8月6日に「平和創出ビジョン」の2025年発表を表明し、平和創出ビジョン策定委員会のもとで議論を重ねてきた。その中核として、「北東アジア安全保障対話・協力機構」の創設を掲げる。この常設の対話枠組みは、対立する当事国が参加し、信頼醸成を通じて紛争を未然に防ぐビジョンの要であり、地域の安定に不可欠である。
日本の使命
地球規模の課題を解決するには、多国間の協調が不可欠であり、日本は、70年以上にわたり国際協力を通じて築いた信頼を財産に、平和外交の先導者として国際協調主義と多国間主義を掲げ、人間の尊厳と法の支配を主導する役割を果たすべきである。加えて、政治・経済危機を防止するための取り組みを強化し、国際社会の安定と持続可能な発展を支えることが求められる。
公明党の平和外交
公明党の結党理念と人間の安全保障
1964年に結党した公明党は、<生命・生活・生存>を最大に尊重する人間主義を貫き、人間・人類の幸福を追求してきた。福祉、経済、環境、教育の政策を、特定のイデオロギーに縛られず、庶民の多様な声を丁寧に集約して形づくってきた。この理念を基盤に、公明党は平和外交の軸として「人間の安全保障」を据える。「人間の安全保障」とは、一人ひとりの人間に焦点を当て、その保護と能力の向上を通じて、豊かで持続可能な社会を築くことを目指す理念である。これは法の支配を支え、日本の平和と繁栄を保ちつつ、国際社会の安定に貢献する。
公明党の平和外交の実績
公明党は、現実を直視しつつ、平和への歩みを着実に進めてきた。1992年の「PKO協力法」により、自衛隊の国連平和維持活動への参加を可能とし、「一国平和主義」を超えた国際貢献を開始。20年以上にわたり地雷除去支援を継続し、2015年の「平和安全法制」で日米同盟を強化した。2022年の「国家安全保障戦略」では、安全保障に関わる総合的な国力の第一の柱として外交力を位置付け、その強化を明確に打ち出した。これらの実績は、人間の安全保障を具体化し、国際協調を推進する基盤となっている。
政党外交による国際協調
公明党は結党以来、政党外交を通じて日中国交回復やアジアとの友好関係を築いてきた。この10年間で延べ30か国を訪問し、中国、韓国、ASEAN各国などの首脳と対話。シリア難民キャンプ、ガザ地区、ウクライナ避難民支援の現場を視察し、人道支援を強化した。ASEANでは海上保安協力や地雷除去支援を推進し、協調の絆を深めてきた。核兵器禁止条約の締約国会議に与党で唯一議員を派遣し、核廃絶の揺るぎない決意を世界に示している。これからも公明党は、勇ましさを振りかざすことなく、またポピュリズムに陥ることなく、対話による平和を追求する。
平和の心の継承
戦争の悲惨さや核兵器の非人道性を直接体験した被爆者や戦争体験者の高齢化が進み、その数は急速に減少している。数多くの証言が、平和の意味を次世代に伝えてきたが、今こそ、「平和の心」―命の尊厳を守り抜く決意、人間を信じる力、対話と共生を求める願い―を、社会全体で継承する時である。広島・長崎の被爆体験、沖縄戦、全国の空襲や戦災、引揚げの体験など、平和の証言は、かけがえのない「人類の遺産」である。それは繰り返してはならない歴史の教訓であると同時に、「平和を願う心」を未来へつなぐ懸け橋である。公明党は、この「平和の心」を継承する取り組みを推進し、次世代が平和を“自分ごと”として考える社会を築く。さらに、「平和を創り出す主体」を育てる取り組みを一層強化していく。
平和創出ビジョンの意義
平和創出ビジョンの意義と重点課題
2025年は「戦後80年」「被爆80年」「国連創設80年」の節目であり、平和を希求する機運が高まる年である。だが、国際社会は地政学的対立、核の脅威、AIの急速な進化による新たなリスクに直面し、人間の安全保障がかつてないほど脅かされている。この現実を前に、公明党は「人間の安全保障」を基軸に、「北東アジア安全保障対話・協力機構」をビジョンの要として、「核廃絶」「AI」とともに重点課題として掲げる。「北東アジア安全保障対話・協力機構」は、対立する当事国が集う常設の対話枠組みとして、信頼醸成を通じて軍拡競争への危険な回帰を防ぐものである。平和創出ビジョンを提示し、大衆とともに、対立を超えた協調へと導く平和の潮流を創り出す決意である。
平和創出ビジョンの射程
平和創出ビジョンは、2025年から2035年までの10年間を射程とする。2030年はSDGs達成期限と日本のG7議長国就任(予定)、2032年は日本の国連安保理非常任理事国選挙への挑戦、2035年は戦後90年の節目だ。この10年は、日本が平和のために力を発揮する重要な時期であり、「平和の心」を確実に継承する貴重な機会である。
平和創出ビジョンの構成
ビジョンは、「平和の基盤づくり」「現実への行動」「ソフトパワーの強化」の3つの視点で構成する。重点課題である「北東アジア安全保障対話・協力機構」「核廃絶」「AI」を最優先に据え、これまで党が積み重ねてきた取り組みを結び合わせ、包括的な平和創出を目指す。
Ⅰ.平和の基盤づくり(国際的なルールや仕組みを構築)
➀北東アジアにおける安全保障対話・協力機構
- 北東アジアの安全保障環境
北東アジアの安全保障環境は厳しさと複雑さを増している。公明党は、北朝鮮問題については、日朝平壌宣言に基づき、米国・韓国および国際社会と連携して、核・ミサイル・拉致問題の解決を図り、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を目指す。ロシアに対しては、北方領土問題の解決と平和条約締結を堅持し、ウクライナ侵略を許容せず、国際法の遵守と軍撤収を求める。中国とは、重要な関係を維持し、率直な対話を通じて懸念を指摘しつつ、力による現状変更に反対し、責任ある行動を求める。人権尊重と透明性を促し、共通課題で協力し、「戦略的互恵関係」を推進する。
- 「北東アジア安全保障対話・協力機構」の創設
公明党は、こうした北東アジアの安全保障環境下で、紛争を未然に防ぐため、対立国を含む多国間の対話による信頼醸成が不可欠であると考える。このため、OSCE(欧州安全保障協力機構)を参考に、北東アジアにおける安全保障対話・協力機構の創設に向けた議論を深めてきた。
OSCEは、北米、欧州(ロシア、ウクライナを含む)、中央アジアの57か国が参加する世界最大の地域安全保障機構だ。1975年のヘルシンキ最終議定書を起源とし、1995年に常設機構化。冷戦下で東西対話を促進し、軍事的透明性を上げる信頼醸成措置や安全保障対話の制度化、紛争予防や危機管理、復興支援などを通じて機能してきた。NATOとは異なり軍事力を持たず、対話による「ソフトパワー」で活動し、ウィーンに常設事務局と参加国の常駐代表部を置く。現在も、隔週で大使級の実務者が集まり協議しており、ロシアも継続して参加しているため、ウクライナの停戦監視や和平支援での役割が期待されている。
冷戦期の東西対立時には信頼醸成措置が存在したが、現在のアジアには、OSCEのような包括的な常設の安全保障協力機関はない。ASEAN地域フォーラム(ARF)など地域的な枠組みはあるが、常設ではなく、紛争調停機能も十分ではない。特に北東アジアでは、対話に基づく常設の信頼醸成機関が不可欠である。
公明党は、平和創出ビジョンの中核として、「北東アジア安全保障対話・協力機構」の創設を提唱する。北東アジア・北太平洋地域において、対立する当事国が参加する常設の対話枠組みを新たに設置すべきである。対象国としては、2003年から2007年までの六者協議に参加した日本、米国、韓国、中国、ロシア、北朝鮮を少なくとも含めることを想定する。
この構想は、これまで学識経験者や国内外の外交関係者とも意見交換を重ねてきた。石破茂首相が「設立に向けて努力をしていきたい」と国会質疑の中で支持を表明し、中満泉国連事務次長も「大きな意義がある」と評価、「対話のプラットフォームから始めて制度化する」と提案している。
第一段階として、災害対策や気候変動対策などの共通課題をテーマに議論を開始し、協力を深めて信頼醸成を図る。この分野で国際会議を開催するなど、日本がリーダーシップを発揮し、この構想を戦略的に推進する。将来的には、OSCEのような常設の国際機関への発展を目指し、その場合、事務局を日本に設置することも検討する。
公明党は、米国、中国、韓国などとの対話に積極的に取り組む用意がある。とりわけ、2025年1月の日中与党交流協議会や同年4月の党訪中で中国側に構想を説明し、意見交換を行ってきた。今後、党内に「平和創出ビジョン推進委員会」を設置し、そのもとで「北東アジア安全保障対話・協力機構」のさらなる具体化を図っていく。公明党は、アジアの平和と安定を主導する決意のもと、この構想の実現に取り組む。
②核廃絶
唯一の戦争被爆国として、核兵器の威嚇や使用、核共有の導入に断固反対する。非核三原則を堅持し、「核兵器の役割低減に関する首脳級会合」の提案や核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加を通じて、核廃絶の議論を積極的に進める。核保有国と非保有国の「橋渡し」役を担い、NGOと連携しながら核兵器禁止条約の署名・批准に向けた環境整備を進め、署名・批准を果たしていく。
2024年11月の国連総会で、核被害者援助と環境修復の決議が日本を含む賛成で採択された。広島・長崎への原爆投下や福島での原子力災害の経験を活かし、日本が被害者支援と環境修復を主導する。
「核使用」と「核秩序崩壊」のリスクを防ぐため、米国、ロシア、英国、フランス、中国の5核保有国による恒常的な対話枠組みを提唱する。核兵器国が非核兵器国に対して核兵器を使用しないことを約束する「消極的安全保障」の誓約とその先に見据える「先制不使用」の合意に向けて、日本は首脳外交を積極的に展開する。
非核兵器地帯条約の法規範性を高め、地域的な拡大を目指す。NPTに先行するかたちで発効した「ラテン・アメリカおよびカリブ地域における核兵器禁止条約(トラテロルコ条約)」をはじめとする主要5条約(他にはラロトンガ、バンコク、ペリンダバ、セメイ)において、全ての核兵器国による附属議定書の批准を促す。朝鮮半島の非核化を進め、北東アジア非核兵器地帯構想を実現する。
原爆遺構、証言、映像などの資料保存と、軍縮・不拡散教育を強化し、被爆の実相を国境や世代を超えて伝える。原爆遺構の世界遺産化にも取り組む。
③AI(人工知能)
- 「人間中心のAI社会」を目指して
急速に進化するAI関連技術は、少子高齢化等の社会課題に対応する一助となり得る一方で、人間の知的能力を代替する機能を有するがゆえに、人権、民主主義、安全保障などで様々なリスクをはらんでいる。世界がAIとの共存と平和を模索する今、公明党は、人間主義を貫き、人類の幸福を目的とする国民政党として、倫理観や道徳性といった普遍的かつ内在的な人間の尊厳をより高めていく「人間中心のAI社会」を構築するべく、先見性と実効性を兼ね備えた政策の推進を図る。
- 高い倫理観とスキルを兼ね備えたAI人材育成
「人間中心のAI社会」の構築には、ユネスコの「AI倫理に関する勧告」や日本の「人間中心のAI社会原則」等の理念を踏まえ、高い技術力のみならず、人権意識や遵法精神をはじめとした倫理観も兼ね備えたAI人材が不可欠である。そこで、欧州連合のARISA(人工知能スキルアライアンス)プロジェクトや欧州スキル戦略を参考に、不適切なAI利用が平和や人権を脅かす事態を未然に防ぐ人的基盤を構築するべく、良識あるAI人材の育成プログラムや認証制度創設を目指す。
- AI技術の軍事利用の規制
今後も、日本はLAWS(自律型致死兵器システム)をつくらず、使用しない立場を堅持しつつ、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みにおける政府専門家会合(GGE)での議論・交渉を前に進め、LAWS開発を禁止する技術的要件等の規制の具体策を含め、国際社会の合意形成を図るべきである。また、AWS(自律型兵器システム)やAI-DSS(AI意思決定支援システム)については、国際人道法に則った国際ルール構築に向けた協議を進めるべきである。また、核軍縮及び核廃絶の観点から、核兵器の運用へのAI関与及び判断を一切、認めるべきではない。こうした観点からも、2026年のNPT運用検討会議において、日本は最善を尽くすべきである。
- AIの平和利用を促進
「人間中心のAI社会」の構築という、国際社会が一致した価値観のもと、AIの平和利用等を積極的に推進すべきである。平和創出の主な具体例を、以下に示す。
紛争予防・復興支援: 紛争兆候の早期検知や地雷除去など復興支援へのAI活用。
災害対策・救難対策: AIによる災害予測や被害把握により効果的で迅速な災害対応を図る。また、多言語AIチャットボットで被災者支援を強化。
気候変動対応: 省エネ型AI開発や、データセンターへの電力供給に再エネを最大限利用するなど、AI利用に係る電力増大の低減を目指す。
医療の向上: いわゆる「AIホスピタル」で医療の質向上や感染症対策を推進。
サイバーセキュリティ:生活経済に甚大な影響を及ぼすサイバー攻撃の対処について、AIによる効率化を図る。
認知領域対策: ディープフェイク等偽情報のAI判定ツールの開発・普及や、「OP(オリジネーター・プロファイル)」技術の標準化で権利利益の侵害に対応。
④国連改革
2025年は国連創設80周年、2026年は日本が国連加盟70周年の節目である。国連は国連憲章に基づき、国際社会の平和と安定に不可欠だが、ウクライナ侵攻やガザ情勢での安保理常任理事国の拒否権行使など、紛争の平和的解決が十分に機能していない。現在の安保理の仕組み・構成は、現代の国際社会の課題に対応するには限界がある。2024年9月に国連で採択された「未来のための協定」に基づき、安保理改革を進める。具体的には、安保理の常任・非常任理事国の枠の拡大などを、G4(日本、インド、ドイツ、ブラジル)やアフリカ諸国と連携し、議論をリードし、改革に向けた統合モデルの作成を目指す。
「未来のための協定」では、Beyond GDP指標の策定も明記された。これはGDPを超え、持続可能な未来を示す指針だ。「Well-beingが高い社会」を目指す日本が、この指標策定の議論を主導する。
⑤海洋秩序
近年、アジア地域で海洋権益を巡る問題が顕在化し、海上犯罪が複雑化・多様化している。エネルギー資源を海外に依存する海洋国家・日本にとって、海洋秩序の維持と航行の自由の確保は極めて重要だ。軍同士の偶発的衝突やエスカレーションを防ぐため、海上保安機関による秩序維持が欠かせない。日本はアジア諸国の海上法執行能力の向上に貢献していく。
「法の支配」に基づく自由で開かれた海洋秩序の構築に向け、アジア諸国の海上保安機関職員を招いた「海上保安政策プログラム」を今後もより一層推進する。公明党の提案により、このプログラムは海上保安庁と政策研究大学院大学が連携する形に発展した。今後、太平洋島しょ国や南アジアにも対象を拡大し、人材育成と相互理解の促進を図る。
日本の平和と紛争防止のため、EEZ(排他的経済水域)の活用を進める。浮体式洋上風力発電の導入時に、ドローン基地局の機能を付加して海上保安に役立てたり、魚礁効果を活かしたスマート漁業を推進したりするなど、新技術を活用して海洋の安全と利用を多角的に確保する。
Ⅱ.現実への行動(喫緊の課題に具体的に対応)
⑥復旧・復興支援
- 地雷除去支援
公明党は、1998年の対人地雷禁止条約(オタワ条約)への参加や地雷探知・除去機の開発、ODAを活用した海外供与を推進し、カンボジアやベトナムなどで地雷除去を支援してきた。カンボジアでは地雷対策センター(CMAC)と連携し、人材育成を含む長期的な支援で被害を大幅に低減。その経験を活かし、コロンビアやラオスなどでCMACが技術指導、日本が機材供与を行う第三国支援も実現した。
今後は、ウクライナの地雷除去に注力する。リスク回避の教育・啓発、探査・除去機材の供与、被害者への医療・義肢支援、カンボジアとの三角協力を進める。2025年には、横浜でのアフリカ開発会議(TICAD9)で地雷・不発弾対策のイベント、ウクライナ地雷対策会議の主催、オタワ条約締約国会議の議長国として国際連携をリードする。日本の技術を活用し、非人道的な地雷のない世界を目指す。
- 復旧・復興支援を通じた平和外交
ウクライナやガザ地区など紛争地域では、戦争の終結が急務だ。復旧・復興は平和定着に不可欠であり、日本の戦後復興や災害復興の経験を活かし、周辺国、国際機関やNGOと連携して支援する。人道支援、開発、平和構築を一体的に進めるネクサスを促進する。
- 防災による国際貢献
「仙台防災枠組2015-2030」に基づき、防災・減災の協力を推進。東日本大震災などの経験を踏まえ、激甚化する自然災害への各国連携を強化し、防災の主流化を目指す。
⑦気候変動
パリ協定から10年、1.5℃目標の達成が急務だが、2024年の世界平均気温は産業革命前比1.55℃を超え、アメリカの協定離脱による気候変動対策の後退懸念も強まっている。欧州の熱波や日本の熱中症急増、農業被害による食料危機など、気候変動は命や生活を脅かしている。このままでは2050年までに極度の貧困層が4000万人増加し、気候難民は最大2億人を超える見込みだ。気候変動は人間の安全保障と平和を脅かす最大の課題だが、公明党はこれを国際連帯の好機であると捉える。
- 1.5℃目標の達成に向けて
1.5℃目標に向け、2050年カーボンニュートラルを加速し、国内の脱炭素化を強化。科学的根拠に基づく「気候変動に関する第三者機関」を設置し、若者や社会的弱者の声を反映した野心的な削減策を国際社会でリードする。気候変動が紛争の原因とならないよう、気候難民や水・食糧問題への国際支援を積極的に推進する。
- 日本の技術力による国際貢献
日本の技術を活用し、途上国の排出削減を支援。成長志向型カーボンプライシングのほか、浮体式洋上風力やペロブスカイト太陽電池など、地域性や生物多様性を考慮した再生可能エネルギーを推進し、循環経済を創出する。アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)を拡大し、日本がリーダーシップを発揮。CO2排出量世界一の中国との戦略的パートナーシップで、CO2排出削減を牽引する。
- プラスチック汚染対策
プラスチック汚染対策では、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」に基づき、国際条約策定をリードし、国際機関と連携を強化する。
⑧SDGs
- 2030年SDGs達成とポスト2030年への議論
2030年SDGs(持続可能な開発目標)の達成には、協調と行動の加速が不可欠である。日本はSDGsの達成を加速し、ポスト2030年の新たな国際目標策定に向けた議論を官民で喚起し、国際社会をリードする。日本が主導するアフリカ開発会議(TICAD)を通じて、アフリカと協働していく。
デジタル化による価値創出でSDGsを推進し、デジタル格差是正と包摂的成長を目指す。日本は途上国のICTアクセス拡大や人材育成を強化し、誰一人取り残さないデジタル社会を実現する。気候変動や防災では、人工衛星データを活用した国際協力を推進。宇宙技術の平和利用で、防災・減災の連携を主導する。
SDGsを国家戦略とし、SDGs推進基本法(仮称)の制定を目指す。国際連帯税やデジタル税など革新的な資金調達や公正な国際金融の議論を主導し、企業・NPOの活力を結集する。公明党は「人間の安全保障」の理念のもと、教育、保健、食料・農業、平和構築、難民保護などを推進する。
- 国際保健(グローバルヘルス)
感染症は人の移動や経済に影響し、脆弱な国家や貧困層に打撃を与える。公明党は、COVAXファシリティーへの参加促進やケニアのスナノミ対策など、国際保健を推進してきた。
途上国の保健インフラ整備を支援するとともに、グローバルファンド等においても、日本の医薬品や医療機器を活用し、支援の質を高める。
WHOなど国際機関のもとで、パンデミック条約など世界が協力を強化する仕組みを実効性があるものとして構築するとともに、参議院決議を踏まえ、台湾のWHO加盟承認を後押しするなど対策の空白地域を埋める取り組みを主導する。
公明党の「国際保健推進委員会」は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成に向け、医療体制整備や人材育成、世界的な健康危機対応の枠組みを推進する。
- 政府開発援助(ODA)
ODAは安全保障環境の改善と国際秩序強化に重要だ。グローバルサウスからの信頼が日本の安全保障を強固にする。非軍事原則と「人間の安全保障」を堅持し、GNI比0.7%の早期達成を目指す。ODAの透明性・説明責任を強化し、NGO経由の支援や組織基盤整備を拡充する。
⑨司法外交
日本はICC(国際刑事裁判所)への人材派遣や相互研修を通じて活動を支援する。ICCの独立性と公平性を守り、国際的な法の支配を重視する。力による現状変更を防ぐため、司法外交を展開し、新たな国際秩序形成を目指す。集団殺害(ジェノサイド)の処罰・防止に関する条約の批准を進める。
⑩人権
国内人権機構を含む人権救済制度の設置を、過去の議論を踏まえ検討する。部落差別解消法やヘイトスピーチ解消法の効果を評価し、海外の人権救済制度の調査を続ける。LGBTQ+の人権擁護のため、ERC(Equal Rights Coalition)に加盟し、多様性と包摂性を高める。国・地方公共団体から民間企業まで「ビジネスと人権」に関する理解を促進し意識を向上させる。その上で、特に支援が必要な中小企業を含め企業が企業内部のみならず国内外のサプライチェーンにおける人権尊重の取り組みを進められるよう、国際機関の知見・情報も活用しつつ、企業活動への公的支援を継続的に推進する。
⑪遺骨収集
先の大戦の戦没者約240万人のうち、未収容遺骨は約112万柱、収容可能な遺骨は約59万柱ある。戦没者への敬意は平和意識を高め、国際和解を促す。戦後80年を迎え、遺族の高齢化が進む中、一日でも早く遺骨収集を加速する。国立追悼施設設置の検討を進め、収集の選択肢を増やす。
⑫平和の創造拠点としての沖縄
沖縄県は復帰から長年にわたり、県民の努力と沖縄振興計画により大きく発展してきた。今後も振興策を総合的・積極的に推進し、「持続可能で強い沖縄経済」、「世界の平和と安定のための創造拠点としての沖縄」を実現する。
在日米軍専用施設・区域の7割以上が集中する沖縄の基地負担軽減は喫緊の課題であり、日米同盟の抑止力を強化しつつ、嘉手納以南の土地返還計画の加速化、訓練の県外分散移転、在日米軍再編を通じて、負担軽減を実現する。凶悪犯の起訴前身柄拘束移転の日米地位協定明記を検討し、基地周辺自治体と基地司令官等の定期協議開催、日本側の基地立ち入り権確立を推進し、協定の不断の見直しを追求する。
Ⅲ.ソフトパワーの強化(次世代や持続可能性を重視)
⑬教育
教育は生命の尊厳を守り、平和を築く世界共通の手段であり、「人間の安全保障」を支える「人への投資」として重要だ。日本は質の高い教育、女性・子ども・若者のエンパワーメント、紛争・災害下の教育機会確保を国際的枠組みも活用し、リードする。学校の軍事利用を防ぎ、教育を守る「学校保護宣言」への日本政府の早期署名を求める。
教育は「子どもの幸せ」を目指し、一人ひとりに光を当てる「輝き教育」で、平和に貢献する地球市民を育てる。国際的な教育者の交流と協力を日本が主導し、持続可能な社会を築く。「教育の自立性」を確立し、平和を担う次世代を育む基盤を築く。
公明党は、紛争地域の平和構築に貢献する人材育成を目的に、シリア難民留学生の大学院受入れ制度を創設した。今後、厳格な選考のもと、ガザやアフガニスタンなど紛争からの復興を目指す地域出身の優秀な若者を対象に、学びの機会を提供する。
⑭文化芸術・スポーツ
文化芸術は国境を越えた共感を生み、「心の安全保障」として平和の礎となる。海外との友好ネットワーク拡大のため、「文化芸術省」創設を提案する。
子ども・若者向けに文学、マンガ、アニメの翻訳・普及を進め、平和文学や原爆証言を世界に発信。コンテンツクリエイター育成で異文化交流を推進する。スポーツは相互理解を促し、子ども、高齢者、障がい者が共に楽しめる環境で共生社会を実現する。
⑮女性
女性や子どもは紛争・災害で影響を受けやすく、紛争予防・和平交渉・平和構築・核廃絶などで女性の平等な参画が不可欠だ。「女性・平和・安全保障(WPS)」行動計画の実効性を高め、平和・人権・防災などで活躍する女性リーダーを育成し、国際機関やNGOでの活動を支援する。
意思決定への男女平等参画を進め、審議会への女性登用を促進し、参画率を公表して進捗を「見える化」する。特に女性関連の決定では女性を半数以上にする。ジェンダー平等と収入格差是正のため、共育て環境を整備し、性別役割意識の解消を官民で啓発。リスキリングやリカレント教育の機会を提供する。
⑯若者
「国連未来サミット」では、若者の「意味のある参画」が強調され、「未来のための協定」に基づき、学校や地域、意思決定、国際会議での若者参画を促進する。日本が国連に拠出している「ユース非核リーダー基金」を拡充・強化する。また各地域に若者議会を設置し、核兵器や気候危機に取り組む若者団体を支援する「ユース基金」(仮称)を創設する。
「若者・平和・安全保障(YPS)」を主流化し、YPSとWPSを車の両輪として推進する。テロや紛争に関わる若者が平和の担い手となるよう、権利やエンパワーメントの国際規範制定を支援。日本は軍縮・人道・平和構築に取り組む若者を育成し、あらゆる機会で支援する。
⑰地方発
- 地方における「平和の取り組み」
すべての地方自治体が「核兵器廃絶」と「平和構築」に貢献するため、全国各地で平和意識調査を実施し、将来世代の平和意識を高めるとともに、被爆・戦争体験の継承に向けた課題解決に取り組む。戦争や被爆の遺構を保存・活用し、修学旅行での平和学習やピースツーリズムを推進する。さらに、広島、長崎、沖縄の3県が連携して「ピースツーリズム・サミット」を開催し、地域の平和の取り組みを全国や世界に発信する。
- 広島、長崎、沖縄の連携
被爆都市の広島・長崎、国内唯一の大規模地上戦を経験した沖縄による「核兵器廃絶」と「平和構築」に貢献する。各国首脳や国会議員に3県訪問を促し、人道的視点の理解を深める。
北東アジア非核兵器地帯構想や「核兵器の先制不使用」をNPT再検討会議で議論するため、広島、長崎、沖縄の3県で国際会議を開催し、核廃絶の機運を高める。核軍縮・平和構築の専門家や若手リーダーの育成を支援する。
広島、長崎、沖縄3県は、核兵器へのAI導入禁止や自律型致死兵器の規制など、平和・安全保障に関する国際機関の誘致を求める。
広島、長崎、沖縄が連携し、原爆や沖縄戦を学ぶ「平和学習ノート」を作成し、被爆体験のVR活用などDX化を進めて地方における「平和の取り組み」を支援する。
- 自治体SDGs
地方自治体による平和教育、経済・文化交流、観光振興、環境問題での協力推進により、相互理解を高める。地方自治体は「誰一人取り残さない」社会の実現に重要な役割を担う。SDGs達成に向けた取り組みを加速し、地域の優良事例を国内外に積極的に発信・共有する。
- 外国人共生
外国人労働者・留学生が増加する中、共生社会の実現が重要だ。国や自治体は官民の支援体制を構築し、草の根交流や自治体間交流を促進。市民の相互理解を深め、国際協力を拡大する。
むすびに
本ビジョンは、外交関係者、若者団体、NGO、アカデミアなど多様な人々との対話を通じて構築させていただきました。また、広島、長崎、沖縄など公明党の都道府県本部とも連携し、地方自治体の平和への取り組みや、公明党の政策立案アンケート「We connect」に寄せられた声も反映いたしました。
ご協力いただいた皆様に心より御礼申し上げます。今後も有識者や市民社会、国民の皆様との対話を継続し、議論を進め、ビジョンを推進してまいります。