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環境を破壊する海底ごみ
香川県の取り組み

 

海底にたまったごみは、漁業に悪影響をもたらし、生態系破壊にもつながる。その大半は、陸地で発生した生活ごみ。瀬戸内海に面した香川県は、内陸部も含めた同県の全17市町、漁師と協力し、海底ごみ回収処理事業を行っている。内陸の自治体も参加した取り組みとしては全国初だ。 (公明新聞2014年6月14日付)

漁師ら協力し回収処理

全国初 内陸部含め全市町が参加


6月6日午前9時、香川県の高松漁港で瀬戸内漁協理事・男谷勝さん(47)の漁船に乗り、底引き網漁に同行した。港から10分ほど移動した沖合で底引き網を下ろす。待つこと約30分。網を引き上げると、海藻やタコ、イカ、フグなどに混じってペットボトルや空き缶などの海底ごみも入っていた。

底引き網からペットボトルを取り出す漁師の男谷さん=6日 香川・高松漁港の沖合

「ペットボトルが自然に溶けてなくなることはない。いつまでも海底に残ったままだ」。男谷さんは、ごみを手に取りながら現状を説明。ペットボトル以外にも、バイクや自転車、洗濯機、金庫などが底引き網に掛かったこともあるという。回収は漁師のボランティアだ。ごみの仕分け作業は時間もかかるが、「みんなで少しずつでも回収しないといけない。大切な海の環境を守るため、漁師として協力していきたい」と意気込みを語っていた。

同漁港には、漁業者が持ち帰ったごみを保管するためのコンテナも設置されている。この日、地元の高松市がごみの運搬・処理に訪れ、コンテナからペットボトルなどが入った袋がトラックに積み込まれていった。

海底ごみの回収処理事業は、2013年度に発足した「香川県海ごみ対策推進協議会」を中心に取り組んでいる。漁業者が底引き網漁などで掛かった海底ごみを港まで持ち帰り、分別して漁協などで保管。その後、ペットボトルなどの一般廃棄物は地元市町が運搬・処理し、家電などについては県が対応する。処理費用は県と内陸部も含めた全17市町で負担する。

海のごみは、(1)海岸ごみ(2)漂流ごみ(3)海底ごみ――の三つに分類される。海岸に捨てられたり、流れ着いた海岸ごみは、09年施行の「海岸漂着物処理推進法」に基づき対策が実施されているが、海中や海面の漂流ごみや海底ごみは責任の所在が不明確。漂流ごみは、航行の安全性の問題などから、国や自治体が回収を行っている。だが、海底ごみは全国的に対策が遅れている。

ポリ袋やペットボトルなどのごみが海底を覆うと、その部分に酸素が供給されず、海底がヘドロ化して魚の餌が死滅する。そうなると海藻も育たず、魚がすめない環境になってしまうという。海の生態系に与える影響は深刻だ。

ペットボトルやポリ袋推計約1万3000トン

瀬戸内海


香川県は山、川、里、海を一体と見なし、全県挙げて豊かな海の実現をめざす「里海づくり」に取り組んでいる。その重点課題の一つが、海ごみだ。国の推計によれば、海底ごみは、瀬戸内海だけで少なくとも約1万3000トン以上あるとされている。11年度、県が播磨灘海域で実施した調査では、ペットボトルやポリ袋、プラスチック製品などの生活ごみが97%を占めていることが判明している【グラフ参照】。

「瀬戸内海の海ごみの多くは、沿岸に住む私たちの生活ごみ」。県環境管理課・大倉恵美課長補佐が指摘するように、瀬戸内海の海ごみのうち外海から入ってくるのは、わずか7%。海ごみの多くは、陸地で発生した生活ごみが、川を通じて海に運ばれたものだ。

県はこうした実態を踏まえ、「海底ごみの処理は、陸域・海域両面から取り組む必要がある」との認識に立ち、内陸自治体にも費用負担を呼び掛け、全市町が賛同して事業は開始された。漁師によるボランティアについては県内漁協に協力を依頼。13年度は17漁協が参加し、17トンを処理できた。

回収作業と併せて、パンフレット配布やCM放映など、ごみの発生を抑制するための啓発活動など、総合的な対策を推進。大倉課長補佐は「家の前に落ちているごみを一つ拾うだけでも、海をきれいにすることにつながる」と強調する。

内陸部の自治体の意識も高い。県中央部に位置する綾川町は、町内を流れる綾川の清掃活動に長年取り組み、海の環境保全に貢献してきた。町担当者は「山と海は川でつながっている。切っても切れない関係だ」と語る。

「瀬戸内海国立公園」は今年で指定80周年を迎えた。昨年開催された「瀬戸内国際芸術祭」も国内外から注目された。大倉課長補佐は「瀬戸内海にとって節目の時期を迎えている」と指摘し、「海底ごみ回収処理事業を、将来的には瀬戸内海全域に広げていきたい」と決意を語っていた。

環境省 支援措置を検討


高松市による海底ごみの運搬作業=6日 高松漁港

海岸ごみについては、海岸漂着物処理推進法に基づき、各都道府県で計画が策定され、回収処理、発生抑制の取り組みが進んでいる。12年度補正予算には、14年度末までの補助事業も盛り込まれた。

環境省によれば、同法施行後、海岸清掃活動などにより、海岸ごみの回収量が年々増加している。11年度には、海岸ごみ約7万トンのうち、約6万トンが回収されている。日本の全海岸線の約2割で、こうした作業が実施されている。

一方、同法に盛り込まれていない漂流・海底ごみ対策については、現存量など詳細なデータがないこともあり、立ち遅れていた。

こうした中、環境省は漂流・海底ごみ回収処理に対する支援措置の検討を進めている。同省海洋環境室・多田佐和子室長補佐は「自治体から海底ごみ対策を求める声も上がっている。しっかりと受け止め検討したい」と語っている。