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なぜ? 高速道路の逆走
20日から危険運転致死傷罪を適用

 

公明党が推進して20日に施行された自動車運転死傷行為処罰法では、刑法から同法に危険運転致死傷罪の規定を移し、この適用対象として、新たに「高速道路の逆走」を追加した。一方通行で、間違うはずのない高速道路上で、なぜ逆走が起こるのか。その背景とともに、対策を探った。(公明新聞2014年5月23日付)

高齢者の事故が多発/各高速道路会社へ通報件数は1日約3件

高速道路でハンドルを握っているとき、目の前に突然、逆走車が現れたら……。想像しただけでもゾッとするが、逆走車は必ずしも珍しくないようだ。

NEXCO東日本、中日本、西日本と首都高速、阪神高速、本四高速の高速道路6社に確認したところ、高速道路上の逆走車について、ドライバーなどから寄せられた通報件数(延べ)は2011年1253件、12年1291件、13年1176件を数えた。確認されただけでも、ここ数年ほぼ1日3件超で推移している。

事故件数については、11年14件、12年21件、13年19件(警察庁まとめ)となっているが、これをドライバーの年代別でみると一つの大きな特徴が浮かび上がる。65歳以上が他の年代を大きく引き離して11年57.1%、12年61.9%、13年36.8%となっている。高齢者の逆走事故をどう防ぐか、大きな課題だ。

このほか、ドライバーが逆走する背景として指摘されているのは、認知症、あるいはその疑いのあるケースや「飲酒・酒気帯び」がある。

高速道路は一方通行が常識だが、どういう場所でドライバーは逆走をするのか。幾つかのパターンを挙げてみる【図表】。サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)から本線に戻る際に、本線の入り口と出口を「間違え」て本線を逆走するケース。さらに、インターチェンジで目的の出口を通過してしまったことに気付き、慌ててUターンして逆走することもある。料金所では、入り口を通過した後で出口専用路に誤進入すれば逆走になる。

一般道と異なり、高速で走行する閉鎖空間での逆走は、重大事故につながる可能性が高い。このため、高速道路各社も安全確保の観点から逆走防止対策を講じている。進行方向を示す矢印の路面表示を拡大したり、逆走注意の看板を目立つように設置。さらに、車に逆走していることを知らせる表示板を設置している場所もある。また各会社では、逆走車が確認された場合は、情報板やハイウエーラジオを通じて随時、情報提供を行っている。

事故を未然に防ぐためにも、高速道路で逆走車を発見した場合は、料金所の係員に伝えるか、最寄りのSA・PAの非常電話、または同乗者が道路緊急ダイヤル(#9910)で通報することも大事だ。

仮に、行き先を通り過ぎてしまっても、次のインターチェンジで降りる。絶対にバックやUターンをしないことをドライバーは肝に銘じたい。

もし出くわしたら?/走行車線で車間距離十分に取る

モータージャーナリスト 菰田 潔氏


逆走車に出くわしたときの対応などについて、日本自動車ジャーナリスト協会副会長でモータージャーナリストの菰田潔氏に聞いた。

逆走車をゼロにすることは現実的には難しいので、逆走車に遭遇しても事故につながらないように心掛けることが大切だ。

逆走車は「左側通行をしている」つもりでいるため、追い越し車線をセンターライン寄りに走ってくる。そのため、走行車線を走っていれば衝突の可能性は大きく減る。車間距離を十分に取ることも大事だ。そうしていれば、前の車が逆走車を確認して左によけても自分もよけることができる。逆走車に認識させる意味では日中でもヘッドライトを点灯して走ることも効果がある。

高齢者による逆走事故が増えていると言われるが、昔は高齢者のドライバー自体が少なかったが、今ではその割合が増えていることも起因している。高齢になると、目や判断能力の衰えは避けられない。特に日常的にハンドルを握っていない高齢者が逆走する可能性がある。

高齢者の逆走対策としては直接、音声で「逆走しています」とドライバーに知らせる新しい仕組みをつくることだ。カーナビのGPS機能は数十センチ単位で位置を特定できる。逆走した場合にはカーナビを通じて音声で伝える。カーナビが付いていない車は、ラジオをつけていればそこからの電波をキャッチして、逆走を知らせることができるようにする。これらは今でも技術的に可能な取り組みだ。