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福島の“今”を届けたい
「女子の暮らしの研究所」の取り組みから
福島県郡山市

 

▲商品開発の打ち合わせを行う研究員の女の子たち

東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で一変した暮らしを見直し、“女の子目線”でさまざな情報を発信する「女子の暮らしの研究所」(日塔マキ代表)の活動が被災地で注目されている。「女子力」への期待と魅力が高まる中、大学生や社会人の女の子が集まり、“福島の今”を届けようとする取り組みを紹介する。(公明新聞2014年5月5日付)

3.11被災地最前線発 復興“倍速”への視点

女の子目線で「原発後」発信/“18歳以上お母さん未満”の28人
ラジオ番組制作/伝統工芸品の新開発/語り部ツアーなど


福島県出身の女の子たちでつくる「女子の暮らしの研究所」は、震災と原発事故から1年9カ月が経った2012年12月、同県郡山市で設立された。「不安を抱える女の子たちが本音で語り合い、これからの生活について考える環境をつくりたかった」と、日塔さんは立ち上げの経緯を振り返る。

現在は、“18歳以上お母さん未満”の女性28人が「研究員」として所属し、ボランティアで「暮らし」や「魅力」をテーマに情報発信を続けている。

LABOLABO


▲ラジオ番組で暮らしに必要な情報や震災後の気持ちを発信する日塔さん(中)ら

そんな彼女たちの活動の一つが、ラジオ番組「女子の暮らしの研究所 LABOLABO(ラボラボ)ラジオ」の制作。番組は毎週火曜日の夜9時から郡山コミュニティ放送(同県郡山市)で放送され、インターネットの動画サイトでも視聴することができる。

「ラボラボ、ラジオーッ」―明るく元気な掛け声とともに番組はスタートする。進行役は研究員の女の子たちだ。福島県での暮らしに必要な情報や、震災後の気持ちを自分たちの言葉で伝え、「震災後、生活と密接になった問題にも目を向けていこう」と、法律や政治、経済などの話題も取り上げている。

番組への反響は大きく、「普通の女の子が法律の話をするなんて驚き」「現実と向き合う姿に感動した」といった声も寄せられた。「福島での暮らし方を一緒に考えたい」。難しい話題も分かりやすく伝えようと、研究員の女の子たちは日々勉強を重ねている。

かわいい発想

暮らしの情報発信とともに同研究所で行っているのが、震災と原発で傷ついた福島県のイメージを変えようとする「ふくしまピースプロジェクト」。福島県のピース(かけら)を身に付け、福島の魅力を感じとってもらおうと、伝統工芸品に“今どきの女の子”たちのあこがれるイメージ「かわいい」を掛け合わせた商品を企画開発している。

▲伝統工芸品の会津木綿を使った「ふくいろピアス」

昨年3月、第1弾として、同県会津地方の工芸品「会津木綿」を使った「ふくいろピアス」を企業との共同プロジェクトで作成した。3種類の形をしたピアスの中には、太陽や海、山、空などをイメージした8色の会津木綿があしらわれている。「このピアスを通して、福島の女の子と全国の女の子がつながり、福島のことを考えるきっかけになれば」と日塔さん。女性ならではの素敵な発想だ。

今年3月には第2弾として、会津漆器の技法をつかったアクセサリー、「omoi no mi(想いの実)」も完成した。研究所に所属する3人の職人が、震災後の女の子の思いを4色の漆で表現し、ヘアゴムやピンバッジとして全国に届けようとしている。

「ふくしま考」の旅

福島県内の被災地を、研究員の女の子がガイド役となって案内するツアー、「Re:trip(リトリップ)~ふくしまの『これから』を考える旅~」も話題になっている。ツアーでは、福島第1原発から20キロ圏内の南相馬市小高区などを訪れ、現地の被災者が語り部となって、津波被害や放射能汚染の問題を伝える。その際、ガイド役の女の子たちが着る服は青いワンピース。「福島に来たことで、放射能への怖さもあるはず。そんな参加者の気持ちを少しでも軽くしたいから」との思いからだ。いかにも女性らしい細やかな心配りに感心させられる。

ツアーを始めたきっかけは12年5月。それまで原発事故で立ち入りが制限されていた小高区を訪れた日塔さんは、時間が止まっている光景に驚く。人ごとだと思っていた自分を猛反省し、「多くの人に被災地の現実を知ってもらおう」「当事者ではないが、できることがあるはず」と計画を思い立った。その後、何度も地元住民との協議を重ね、実施にこぎ着けた。

これまでに全国から200人以上が参加しているが、関心を持ってくれる人たちが増える一方で、参加者同士のコミュニケーションづくりが今後の課題とも語る日塔さん。福島県でNPOを立ち上げるような人が増えれば、過疎化の歯止めにもつながるのでは、と期待を寄せている。

ほかにも、同研究所では定期的なカフェイベントを開催し、参加した女の子がおいしく、楽しく、真剣に福島県のことを知る場所も提供している。

「きっかけはなんでもいい。福島のこと、福島の思いを知ってもらえれば」。一変した環境と向き合いながら、これからの暮らしを真剣に考える28人の女性たちの姿は、まばゆいばかりに輝いていた。

取材後記

「観光って光を観るって書くけど、話し合いの中で前向きになれたよ。まさに光を観る思いだ」。被災地をめぐるツアーの協議で、日塔さんはこう言葉を掛けられた。ある人からは、「今日、死のうと思ったけど、話し合いがあるから死ぬのをやめて来たんだ」とも。自分たちの行動が意味あるものだと感じた瞬間だったという。当時を思い返し、目にはうっすらと涙が浮かんでいた。被災地に一筋の光を届けた「女子力」は、今後も多くの人を照らし続けていくに違いない。