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円滑な転嫁へ監視強化
消費税率8%

消費税率が8%に引き上げられて、ほぼ半月が経過した。中小企業の取引においては消費税の引き上げ分を上乗せする転嫁が円滑に進むかどうかが、今後の経営戦略のカギとなる。適正に転嫁できなければ、増税分の負担が中小企業の経営を圧迫し、景気全体を悪化させかねない。政府は転嫁拒否行為に対して、新たに法整備を行い監視体制を強化するなど、下請けイジメに対しては厳しい姿勢で臨んでいる。実情を追ってみた。(公明新聞2014年4月16日付)

特措法に基づき「Gメン」配備

買いたたきなど深刻


商店主に消費税の適正な転嫁について説明をする三宅主任(右)=4月初旬 東京・墨田区


3月末、中小企業庁の消費税転嫁対策室に、意を決した様子で一本の電話が入った。

「買いたたきの被害を受けている。救済してほしい」。内装業を営む経営者からの通報だった。従来は税込み単価で値決めをしていたが、消費税が8%になる4月以降は「税抜き単価にする」と取引先から言われた。具体的には、これまでの単価を1.05で割り戻し、そこで出た端数は一方的に切り捨てるという内容だった。

この業者の場合、加工当たりの単価は数百円。取引相手にすれば「たかが端数」だが、百円単位で仕事をしている側にすれば、切り下げ額の合計は年間数十万円、パート従業員二人分の給料になる。

「ノー」と言えず

昨年10月、消費税の転嫁拒否を取り締まる消費税転嫁対策特別措置法が施行された。同法に基づき、監視活動に当たるため全国に配置されたのが、中小企業庁の転嫁対策検査官、通称、「転嫁Gメン」だ。彼らの前歴は営業や金融畑をはじめ多彩だが、中小企業庁転嫁対策室によると、共通するのは商慣習や取引慣行に熟知した民間企業出身の50、60歳台のベテランという点。三宅正記主任(61)もその一人だ。

「Gメン」は通報をもとに情報収集や立ち入り検査に当たるほか、適正に転嫁がなされるよう、商店街や町工場などに出向き、パトロール活動を積極的に行う。特措法ができたことで警告しても改まらない悪質事例については社名公表を含め、厳しい構えで臨むことになっている。

その一方で、救済が難しいケースも少なくない。製造加工業を営む男性からは「取引先に現行単価から一律10%カットと通告された」という相談が寄せられた。これまでも単価引き下げは繰り返されてきた。原材料費が上がる一方で、人件費などを切り詰めて応じてきたが、これ以上圧縮できる要素はない。ただ、「取引先からの要求に対しては『ノー』とは言えない。救済をお願いするかどうかは、もう少し考えたい」と言って、電話は切れた。

「買いたたきや減額に遭っても辛抱している」。これが三宅主任の偽らざる実感だ。中小零細企業が我慢する理由は、その多くが取引先と強い依存関係にあるためだ。要求を受け入れなければ、仕事量を減らされたり、ひいては取引停止になることを懸念している。

今回の特措法は、こうした“泣き寝入り”を抑制する効果が期待されている。冒頭、紹介した内装業の経営者も、これまでは取引先からの度重なる切り下げ要求を受け入れてきたが、幅広く転嫁対策を盛り込んだ特措法の存在を知り、同法による救済を申し出た。

製造業、最も多く

今月7日、中小企業庁はこれまでの対応実績を公表した。それによると、昨年10月から3月までの転嫁拒否行為に対する公正取引委員会と中小企業庁における調査件数は2054件。このうち861件で立入検査を行ったほか、指導件数は大規模小売事業者36件を含む1199件あった。

最も多い業種は製造業で489件、行為類型別のトップは、やはり買いたたきで940件に上る【グラフ参照】

三宅主任は「消費税が転嫁できずに困っている人、救済を求めている人の状況を少しでも改善するために私たちがいる。秘密は厳守し、報復行為を恐れる側の気持ちに配慮しながら慎重に対応をする。ぜひ信頼して相談してほしい」と語る。

消費税転嫁に関する相談、問い合わせは、消費税価格転嫁等総合相談センター専用ダイヤル0570(200)123、または中小企業庁の消費税転嫁対策室03(3501)1502まで。


中小企業への“報復”防ぐ対策必要

公明党税制調査会事務局長
西田 実仁 参院議員

公明党の推進で特措法が施行され、買いたたきや減額といった消費税の転嫁拒否に対して迅速、大量な処分が可能になった。転嫁カルテル、表示カルテルを独占禁止法の適用除外にしたり、転嫁Gメンによる監視活動も加わった。1997年の前回引き上げ時に比べて、転嫁拒否対策が強化された。

その上で、党としては転嫁できずに苦しむ中小零細事業者が多いことを前提に、中小企業が本当のことを話しても、取引先からの報復措置などに遭うことなく円滑に転嫁が進むよう、丁寧な対応を政府に申し入れている。中小企業の倒産件数は減っているが、今後、転嫁できずに廃業する事業者が増えないよう、公明党のネットワークも駆使して注視し、必要に応じて改善を求めていく。

政府は今月から385万社の全中小企業を対象に書面調査を始めた。大規模小売事業者への調査も行う。今月20日前後には支払い期限を迎える。その時期に転嫁されていない実態がないかどうか、高い関心をもって見守っていきたい。