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地域一丸の「むらづくり」
若手農家が集落の伝統を発信
宮崎・えびの市

 

宮崎県えびの市に広がる、えびの盆地の南西部にある田代自治会が昨年11月、農林水産省主催の2013年度農林水産祭・むらづくり部門で、最高の賞「天皇杯」を受賞した。住民総出の水路の保全活動や伝統文化の継承などが高い評価を得たもの。地区の若者が活動の中心となり、世代間のパイプ役として、住民一丸の「むらづくり」に大きく貢献している。同自治会の取り組みを追った。(公明新聞2014年2月16日付)

農林水産祭「天皇杯」を受賞

静かな田園風景が広がる田代地区では、全124世帯のうち、44%の54戸が農業を営む。地区内で管理する湧水を利用した水稲や野菜の栽培が盛んに行われている。

▲集落の成り立ちの起源である「陣の池」を視察する公明党宮崎県議団

その農業を支えてきたのが、先人たちが残した地域資源だ。明治時代初期に建設された「天宮隧道」もその一つ。天宮台地の地下を通る手掘りの地下水路で、今も湧水の利活用に役立っている。

同地区の下村典義さん(77)は「水を粗末にするな」と言われて育ったという。湧水池である「小池」や、ため池の「陣の池」も貴重な資源として、入って泳ぐことは固く禁じられている。水と土地に対する畏敬の念は、湧水池をはじめとする集落の“宝”と共に、世代から世代へと受け継がれてきた。

しかし、豊かな自然を活用する一方で、作物を栽培する農地は区画が狭く散在し、生産効率が悪いという課題もあった。その影響で、次第に若者が集落から離れ、農業者の不安感も強まっていったという。

▲住民総出で実施される水路保全活動

こうした中、同地区では住民の営農維持に対する危機感から、1992年には市内の他地域に先駆けて国の「中山間地域農村活性化総合整備事業」を活用。農業生産と生活環境の基盤整備を一体的に進めてきた。

同地区の前原良一自治会長(72)は「集落内での意思疎通を図った結果、『集落の農地は集落で守る』という意識が芽生えた」と話す。同事業の実施を契機に農業の生産性が向上し、農家の収入も増加。地区内の認定農業者13経営体のうち11経営体で後継者を確保することができた。

また、農業施設の管理を通して住民同士の交流も進んでいる。農業従事者が非農業者に対し、水路などの施設管理の重要性を説明。こうした保全活動は、農業者が行うべきものとの考えが根強く残っていたが、今では住民総出の保全活動が定着している。県農政水産部の白地浩二副主幹(46)は「事業を通じて、集落の一体感が生まれたのは、他地域の参考になる」と語る。

祭りなどのイベントで世代間交流

営農体制が整う中で、09年には若手農業者を中心とした「田代ひまわりロードプロジェクト」が設立された。同プロジェクトは、U・Jターン者や新規就農者を含む23人で構成。10年からは「ひまわりロードまつり」を開催し、30年ほど前に途絶えていた地区の夏祭りも復活させた。同プロジェクトメンバーの結婚式をヒマワリ畑で行うというユニークな取り組みも好評だ。

▲満開のヒマワリ畑で行われた結婚式

ほかにも、月1回の公民館だよりの発行やソバ打ち大会など、若手農業者が地域活性化の起爆剤となり、世代間の交流を担っている。12年に完成した手づくり水車も「若手」が、住民全員の財産として作り、地区のシンボルになっている。

同プロジェクトに所属する市畜産農政課の鶴内講一郎主事(33)は「世代を超えた交流も天皇杯受賞のポイントになった」と笑みをこぼす。

農村集落における担い手の確保が全国的な課題となる中、若者が奮闘する田代自治会は、今後の「むらづくり」の手本として注目される。

公明党は長年、中山間地域の活性化を図るため、産業や生活基盤の整備を推進。2000年には、農家や生産組織に対して直接交付金を支払う「中山間地域等直接支払制度」の導入を後押しするなど農業経営や地域活動をサポートしてきた。