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障がい者スポーツ振興を! 文科省認定の国内唯一の研究拠点を追う

7日から開かれるロシア・ソチ冬季五輪。その1カ月後には、同じくソチでパラリンピックが行われ、日本勢のメダルラッシュに期待が高まっている。今回は、医科学の観点から、トップアスリートたちを支えてきた和歌山県立医科大学(和歌山市)の取り組みを追ってみた。(公明新聞2014年2月1日付)

和歌山県庁から車で5分ほど走った先にある商業施設「フォルテワジマ」。買い物客でにぎわう建物の5階に、一見、スポーツジムのような空間が広がる。

ここは、和歌山県立医科大学みらい医療推進センターが運営する「げんき開発研究所」(所長=田島文博・同大教授)。最新鋭のトレーニング施設や分析装置を備えている。

この研究所を含めた同センターは2013年4月、文部科学省から、国内で唯一となる障がい者スポーツの医科学研究拠点として認定された。

現在までに複数の大手スポーツメーカーが共同研究を申し出ているほか、パラリンピック選手のメディカルチェック(医学的診断)を行っている。

3次元解析、人工気候室… 医科学の視点で動作チェック

1月中旬、研究所を訪ねると、14台の高速度カメラで撮影し、3次元での動作解析が可能なスペースでは、熊本県から訪れたという女子プロゴルファーがスイングのフォームを確認していた。「もっと飛距離を長くしたいので」と意気込む。三井利仁副所長は「ここでは車いすや装具での動作確認も行っています」と語る。

研究所内では、人の足が床を押すのに対応して、床が人の足に与える反作用の力などを測定する「床反力装置」や、地球上の全ての気候を再現することができる「人工気候室」、車いすのまま、急勾配の坂での走行練習が可能な「トレッドミル」などを備えている。田島所長は「これらの設備が1カ所に集まっているのは国内でもここだけ」と強調する。

▲3次元での動作を解析するため、スポーツ選手の体にマーカーを着けて高速度カメラで撮影する

また、研究所に所属するスタッフも充実している。田島所長は、リハビリテーション医学の専門家。1983年から始まった大分国際車いすマラソン大会や、パラリンピック日本代表出場選手のメディカルチェックを担当するなど、約30年間にわたり、障がい者スポーツを医科学の観点から研究してきた。

一方、三井副所長は、パラリンピック日本選手団監督の経験者だ。コーチとして、世界のトップ選手のフォームなどの動作解析データを基に、個々の日本人選手にとって最良のトレーニング方法を実践。日本人選手のメダルラッシュを陰で支えてきた。海外からの評価も高く、国際パラリンピック委員会陸上競技部門認定の世界で7人の競技・コーチ資格取得者として名をつらねている。

田島所長は、ハーフマラソンに出場した車いす選手では、レース前と比べて体内の免疫機能が大きく向上したとの分析結果を示した。また、最近の研究成果から「運動すると筋肉からホルモンが分泌され、全身の細胞が活性化する。そういう意味で、運動は“万能薬”と言える」と強調する。

実際、食道がんを患って入院した80歳代男性の場合、がんと診断されてから運動療法を実施。手術した翌日から歩行訓練を始めるなど、徹底的に運動を行った結果、退院時には歩いて自宅へ帰ったという。田島所長は「高齢化社会を迎えた今、医科学的なデータを基にした運動メニューを実践すれば、健康増進、医療費削減につながる」と今後の展望に期待を寄せる。

経験豊富なスタッフ 適切な運動で健康増進の効果も期待

また、研究所に所属するスタッフも充実している。田島所長は、リハビリテーション医学の専門家。1983年から始まった大分国際車いすマラソン大会や、パラリンピック日本代表出場選手のメディカルチェックを担当するなど、約30年間にわたり、障がい者スポーツを医科学の観点から研究してきた。

一方、三井副所長は、パラリンピック日本選手団監督の経験者だ。コーチとして、世界のトップ選手のフォームなどの動作解析データを基に、個々の日本人選手にとって最良のトレーニング方法を実践。日本人選手のメダルラッシュを陰で支えてきた。海外からの評価も高く、国際パラリンピック委員会陸上競技部門認定の世界で7人の競技・コーチ資格取得者として名をつらねている。

▲特定の温度、湿度のもとで身体への影響を測定できる「人工気候室」

 

公明、選手支援拡充など推進

 

▲公明党議員と意見交換する田島所長(左端)

公明党は、スポーツ振興政策を総合的に進めるため「スポーツ庁」の設置などを主張し、2011年にはスポーツ基本法の成立を推進した。また、08年のパラリンピック北京大会ではメダリストへの報奨金制度を実現するなど、障がい者スポーツの選手たちの支援拡充を訴えてきた。

13年度補正予算案と14年度本予算案には、20年東京五輪・パラリンピックに向け、スポーツ関連予算として合計約463億円が盛り込まれている。このうち、パラリンピックの活動拠点に関する調査研究に約2200万円が計上されるなど、選挙強化支援策の充実が図られている。

田島所長は、企業の障がい者雇用が義務化された改正身体障害者雇用促進法(1976年)の制定などにより、障がい者が経済的にも自立し、積極的にスポーツに取り組める環境づくりが進んできたことを強調。公明党議員が障がい者スポーツの振興に貢献してきたことを紹介するとともに、20年東京五輪に向け「さらなる学術的な検証が必要になる」と語っている。