参院選2010

ズバッと答えます!

 

続く政治不信、二大政党制への失望。これからの第3勢力の役割とは?

2大政党制は時代遅れ?

 2009年、わが国でも野党第一党の民主党が衆議院で過半数を大きく上回る議席を獲得し、本格的な政権交代が起こりました。
 国民の多くの期待を受けた鳩山・新政権でしたが、「政治とカネ」をめぐる問題、暫定税率や高速道路無料化などのマニフェスト違反、「官から民への改革」に逆行する郵政見直し問題、迷走する普天間基地移設問題などにより、その期待は失望感に変わっています。一方、野党第一党の自民党も執行部への批判や離党者が相次ぎ、政権を奪還するのもままならないと見られています。

 今、国民の多くは「政権交代しても、何も変わっていない」と感じ、2大政党に失望して、政治不信を強めており、第3勢力に注目が集まりつつあります。

2大政党制の本家イギリスでも地殻変動

 「『英国という車には“道に迷ってます”とステッカーが張られているようなものだ。その後を追うことは非常に危険です』。ブレア前英政権で内閣官房長(官僚トップ)を務めたターンブル卿(きょう)は日本にそう警告する」(毎日新聞4/17)───マニフェスト、シャドーキャビネット、党首討論、小選挙区……
最近のわが国の政治・選挙制度はイギリスの政治システムがモデルとされていますが、その2大政党制の本家・イギリスで地殻変動が起こりました。
 5月6日に行われた下院総選挙(定数650)で最大野党の保守党が306議席獲得し、与党・労働党(258議席)を逆転し第一党になりましたが、過半数の議席には届きませんでした。過半数を第一党が確保できない「ハング・パーラメント」(中ぶらりん議会)になるのは1974年以来36年ぶりで、イギリスの二大政党制が曲がり角にきていると伝えられています。

 イギリスでは議会制度が確立した18世紀にはすでに2大政党制でした。現在の労働党と保守党になったのは20世紀初めから。1928年に普通選挙となり、自由党は衰退し、拡大する労働階級が基盤の労働党が2大政党の一翼となりました。労働党は都市部の労働者を、保守党は地方の自営業や資本家を主な支持層とする2大政党制となりました。
 この2大政党で第二次大戦後から現在まで計6回の政権交代を繰り返してきましたが、一方で2大政党が獲得する得票は低くなってきました。70年代までは2大政党が9割の得票を占めていましたが、80年代には70%台におち、前回(05年)の選挙では67%と初めて7割を切り、今回も65%と、「2大政党離れ」が進み、2大政党が有権者の民意を反映できなくなったとの指摘もあります。

 また、今回の選挙で第3党の自民党は23%の得票を獲得したものの57議席にとどまり、労働党は27%の得票で4倍以上の258議席を獲得しました。これは小選挙区制度によるもので、この選挙制度の民意を十分に反映できない「不公平さ」が際立ってきており、イギリス国内では中選挙区制や比例代表制の導入など選挙制度改革論議が活発化しています。

 このように、2大政党制の本家・イギリスでも多様化した有権者の民意に2大政党制が対応できず、機能不全に陥っていると指摘されています。

ヨーロッパの政治状況

国名政権の形態
イギリス2大政党による政権交代
→5月の総選挙で変動の可能性あり
ドイツ連立政権(第1党と第3党)
イタリア
オーストリア連立政権(第1党、第2党)
オランダ連立政権(第1党、第2党、第7党)
ノルウェー連立政権(第1党、議席同数の第4党の2政党)
スウェーデン連立政権(第2・3・4・5党)
フィンランド連立政権(第1・2・4・6党)
 我が国では、イギリスのような2大政党による政権交代が健全な民主主義とのイメージがあります。
しかし、ドイツ、イタリア、オランダなど民主主義が成熟したヨーロッパ先進諸国は2大政党制ではなく、第3極政党などとの連立政権が主流なのです。
 これは、第3勢力と政権を組むことで国民の幅広い民意を政治に反映することが可能となり、安定的な政権運営ができるからだと考えられています。

2大政党制の欠点  河合秀和氏/学習院大学名誉教授に聞く

英総選挙と今後の政治 識者に聞く
二大政党制の限界露呈
多数政党による同意形成型の政治求める

 

5月6日に行われた英国総選挙を受け、二大政党制の限界や今後の政治の在り方について、河合秀和・学習院大学名誉教授に聞いた。

――英国総選挙の結果をどう見ますか。

河合秀和・学習院大学名誉教授 今回の英国総選挙は「二大政党」で知られる国で、二大政党制という3世紀続いてきた英国政治の在り方を問う選挙になった。選挙結果は、この制度が現実の中でいかに不十分になってきたかを示している。

総選挙で、財政問題をめぐって労働党と保守党がありきたりの非難を応酬する中、自由民主党のクレッグ党首が初めて両党と対等に党首討論に現れ、「新しい選択肢」があることを強調し、世論の支持は急増した。自民党は個々の政策をめぐる争いではなく、二大政党制そのものに対して異議を唱えた。

これまで理論上の話だったハングパーラメント(中ぶらりん議会)が現実味を帯びてきた。今後、各党による政権構想のすり合わせ交渉が行われることになる。連立政権が大半の欧州では、時間をかけてすり合わせるのが通例だが、英国でもその過程が始まった。

――二大政党制は限界を迎えたのでしょうか。

河合 二大政党制を含めて政治の在り方そのものが問われるようになった。

二大政党制では選択の幅が狭くなるため、議会内の多数と国民の多数との間に大きなズレが生じてくる。仮に保守党政権が誕生しても、全有権者から見れば23%しか支持を受けていない。

また、政権に賛成か反対かが問われるため、意見が多数になってくると、二つではまとめきれなくなる。価値観が多様化する中、英国型二大政党制には限界がある。

有権者の意見を広く取り付けるには、比例代表制が根本的な解決方法になる。欧州の多くは比例代表制を導入している。比例代表制は、政治について様々な要求を満たすことが可能だ。今は、多数政党による同意形成型の政治が求められているのではないか。

――「第三勢力」を掲げる公明党の役割は何でしょうか。

河合 昨年夏の政権交代で、日本は二大政党の時代になると思われたが、実際にはそうはならなかった。今後、第三党の公明党をどう政治に入れていくか、これが政治を進める上で重要となる。

公明党にとって10年間の自民党との提携は大きな財産だ。それとともに、(国・地方議員の連携による)「チーム3000」がある。そのうち3割を女性議員が占める意義は大きい。縦割りでなく、"横割り"の考え方や地域で働く人の感覚を大事にする政治。これは必ず実を結ぶと思う。

(公明新聞 5月10日付)

ページの先頭にもどる