公明党の「地方創生」

全国の取り組み 実例01 「起業しやすい街」で活性化

「アシ☆スタ」主催の女性向け起業講座「アシ☆スタ」主催の女性向け起業講座
(いずれも「アシ☆スタ」提供)

仙台市が挑む特区構想

日本一起業しやすい街をめざす!――。仙台市は現在、企業や民間非営利団体(NPO)法人の設立促進を柱にした「ソーシャル・イノベーション(社会変革)創生特区」の実現に取り組んでいる。これは、政府が区域を指定して特例で規制を緩和する「国家戦略特区」として、同市が国に申請しているもの。多くの起業家を輩出し活躍を後押しすることで、同市だけでなく、東北全域にも雇用創出など成果を行き渡らせる。

審査や手続きの短縮・簡素化/企業、NPOの設立後押し
雇用創出など成果を東北全域へ

仙台市は2014年2月、13年度から17年度までの市政プランとなる「仙台経済成長デザイン」の目標に「新規開業率日本一」(09年全国4位)と明記。「実現のための一つのツール」(政策企画部)として、実施の妨げとなる規制を緩和する国家戦略特区の募集に応募した。
その背景には、東日本大震災を機に新たな企業やNPO法人を設立する動きの広がりがある。震災後、「人のために尽くしたい」「地域コミュニティーの拠点づくりをしたい」という市民の意識も高まっているようだ。
こうした流れを加速させ、人口減少に直面する東北全域の活性化につなげるのが、特区応募の狙いの一つ。

需要高い起業支援

特区構想の具体的な施策の柱が、企業の設立推進だ。  これまで、それを担ってきたのは仙台市起業支援センター「アシ☆スタ」。もともと行っていた起業や経営に関する相談体制を強化するため、14年1月にオープンした。これにより、起業に関する相談件数は、14年12月には前年同月比で3・5倍に達するなど、潜在的な“起業希望者”の発掘に大きな成果を上げている。女性の起業相談件数も、14年4~12月までの9カ月間で13年度の3倍近い。いずれも起業支援への需要の高さを裏付けている。
特区構想では、規制改革によって「アシ☆スタ」を「起業ワンストップ支援センター」として拡充し、相談・情報提供のほか、一部の届け出書類の受理にも対応。具体的な審査業務をワンストップ(1カ所)で行う仕組みづくりをめざす。
課題となっている規制は、起業手続きに関する窓口が法令ごとに異なっていること。それが起業希望者の負担になっている。店舗などの各審査についても、法令に基づく審査機関が独立して行っているため、時間がかかる。
法人の設立場所を管轄する公証役場で定款認証を行う現行制度についても、起業希望者の身近な場所で手続きができるよう改革する。これにより、首都圏などからIターンやUターンし仙台市で起業しやすくなることが見込まれる。
「起業促進の“旗印”になる」。「アシ☆スタ」を所管する地域産業振興部の髙橋三也部長は特区構想の意義を語るとともに、「仙台で事業を立ち上げ、東北各地で展開し、雇用創出など成果を還元していく形もあり得る」と歓迎する。一方、「起業よりも経営を続けていく方が難しい。事業継続をサポートしていく仕組みも重要だ」と強調する。

NPOを選択しやすく

特区構想のもう一つの柱は、NPO法人の設立支援だ。法人設立までの手続き期間を短縮することで、起業形態の選択肢としてNPO法人を選びやすくする。
具体的には、設立申請した団体が公告・縦覧される期間(2カ月間)を短くしようというものだ。
NPOの支援を行う特定非営利活動法人「せんだい・みやぎNPOセンター」の伊藤浩子・事務局長兼常務理事は、NPO法人設立のハードルが下がることに期待を寄せるとともに、「縦覧期間は社会的な認知や信頼性を確保する意義がある。期間を短縮する代わりに、事業計画を可視化できる仕組みが必要ではないか」と指摘する。

政府、今春にも指定

国家戦略特区は13年末に法案が成立し、第1弾として現在までに「東京圏」「関西圏」をはじめ、新潟市、福岡市など6区域が指定されている。
政府は第2弾を“地方創生特区”として、今春をめどに区域指定する方針。候補には仙台市のほか、愛知県(モノづくり産業強靱化スーパー特区など)や秋田県仙北市(田沢湖・玉川温泉を中核とした医療・農林ツーリズム特区)などが名乗りを挙げている。
さらに政府は、特区制度の枠組みを通じて、インターネットを活用した遠隔医療や、無人飛行機による荷物の配送、自動走行車の公道での走行など最先端技術の実証実験を過疎地域で行う考えだ。

2015年1月15日付公明新聞掲載

※政府は3月19日、仙台市と愛知県、秋田県仙北市を地方創生特区に指定することを決めた