〈導入の効果と事例〉ドクターヘリが救った命

実際、ドクターヘリはどのくらい役に立っているのでしょうか? ここでは、リアルな“データ”と、実際にドクターヘリを利用した人の“生の声”を紹介。さまざまな角度から、ドクターヘリの貢献度を探ります。

数値で見る実情・実績

わが国では2001年より厚生労働省の「ドクターヘリ導入促進事業」が開始され、ドクターヘリの活動が始まりました。現在までの運行の実情や実績を数値で確認してみましょう。

60,049件

日本航空医療学会が2012年5月に発表したドクターヘリの運航実績によると、2011年度は全国27道府県32機のドクターヘリで12,923件の救命搬送を実施。中には1,000人以上を救護した医療機関も。
1999年10月から1年半に及ぶドクターヘリ試行的事業における運航実績も加えると、60,049件もの運航実績を重ねたことになります。

日本航空医療学会 資料
ドクターヘリ出動件数データ

出動件数の推移

出動件数の推移

運航実績の推移

運航実績の推移

0件

6万件以上という運航実績を記録しながら、2012年5月現在までドクターヘリにおける人身事故は0件。無事故を続ける安全な運航で大切な命を支えています。

約80円

ドクターヘリの運航にかかわる費用は1カ所あたり年間で約2億1000万円。各都道府県に1機ずつ配備すれば約100億円となります。これは国民1人当たりの負担に換算するとおよそ80円程度なのです。

数値で見る救命効果

ドクターヘリの救命効果はさまざまな調査データによって裏付けられています。その一部を紹介しましょう。

22.2分間短縮

ドクターヘリが出動した場合、救急車での搬送に比べると、医師による初期治療開始の時間が22.2分間も短縮されました(※)。一分一秒を争う救命救急現場では、この時間短縮によって救命率の大きな向上が見込めます。
※2003年 厚生労働科学研究「ドクターヘリの実態と評価に関する研究」より

死亡率27%減

ドクターヘリが出動した際の治療結果について、興味深い報告があります。2004年度、ドクターヘリで運ばれ転帰調査ができた1,592例の中で、実際の死者は363人。しかし、陸路または水路で搬送されていたら496人になっていたと推定されています。推定値に比べ、死亡は27%減、社会復帰は45%増。ドクターヘリの導入によって死亡率を大幅に減少させ、社会復帰の可能性を広げたことが明らかになったのです。

ドクターヘリの2004年度治療効果

  死亡 植物状態 重症後遺症 中等度後遺症 社会復帰 合計
実績 363 22 89 246 872 1,592
推定 496 35 168 290 603
増減 -133 -13 -79 -44 269 -
成果 -26.8% -37.1% -47.0% -15.2% 44.6% -
益子邦洋ほか「平成16年度厚生労働科学研究」、平成17年3月

16.7日間短縮+113万円減

日本医科大学千葉北総病院の益子邦洋・救命救急センター長らが、実際にヘリコプターや救急車で同病院に運ばれた患者を比べた結果、ドクターヘリと救急車では、ドクターヘリの方が平均入院日数が16.7日間も短くなり、治療費も低く抑えられていることが分かりました(※)。

平均入院日数
ドクターヘリでの搬送の場合=21.8
救急車で搬送の場合=38.5
入院中の治療費
ドクターヘリでの搬送の場合=平均約132万円
救急車で搬送の場合=平均約245万円

※2003年1月~2006年3月、千葉県四街道、富里、八街の各市から同病院に搬送された重症の外傷患者70人(うちドクターヘリ搬送26人、救急車搬送44人)を対象。いずれも同病院までの距離が15~20キロ、救急車はヘリコプター運航時間外の夜間、早朝や悪天候時などに使用。調査結果は搬送された患者の年齢や重症度などを補正。(「毎日新聞2007年7月13日付より抜粋)

「命を救われた!」感謝の声が推進の原動力