日本人の2人に1人はがんにかかり、3人に1人はがんで命を落としています。 私たちにとって、がんはとても身近な病気。その中でも、近年「子宮頸(けい)がん」が若い女性に急増し、問題視されています。子宮頸がんは原因や発生のしくみが解明されているがん。予防の第一歩は正しく知ることから始まります。
子宮にできるがんを広く「子宮がん」と呼んでいますが、子宮がんには「子宮体がん」と「子宮頸がん」があります。子宮体がんは、ホルモンバランスや肥満、糖尿病、未妊娠などと深く関わっているといわれ、閉経した 50~60 代の女性に多いのが特徴です。一方、子宮頸がんは、性交渉によるヒトパピローマウイルスへの感染が原因のがん。こちらは 20~30 代の女性に急増しています。
妊娠時に赤ちゃんを育てる場所が子宮体部。この部分に発生するがんが「子宮体がん」です。対して、子宮の入り口付近にできるがんを「子宮頸がん」といいます。この2つのがんは、原因や構造、発症しやすい年代、治療法などが大きく異なるため、全く違うがんとして扱われています。
子宮頸がんの発生には、そのほとんどに「ヒトパピローマウイルス」(Human Papillomavirus:HPV)というウイルスへの感染が関連しています。ヒトパピローマウイルスには 100 種類以上のタイプがありますが、子宮頸がんの原因となるのは約 15 種類。主に性交渉によって感染するため、性交渉経験を持つ全ての女性が子宮頸がんになる可能性を持っています。
ヒトパピローマウイルスは、女性の約80%が一生に一度は感染しているという報告があるほど、ありふれたウイルス。感染しても多くの場合はその人の免疫力によってウイルスは自然に排除されます。
しかし、この機能がうまく働かず、ウイルスが子宮頸部に残ってしまって長期間の感染が続くと、その部分の細胞が少しずつがん細胞へと進行していくことがあります。つまり、子宮頸がんとは、誰もが感染するヒトパピローマウイルスの感染が長期化したときに起こる病気なのです。ウイルス感染からがんに進行する要因には、喫煙や妊娠回数などが関わっているといわれています。
やっかいなことに、子宮頸がんの初期段階には、顕著な自覚症状がありません。進行すると、不正出血(月経時以外の出血)、おりものの異常(おりものの量や色の変化など)、性交時の出血や痛み、下腹部痛や腰痛、月経の変化(月経が長引く、量が増えるなど)といった症状が現れることもあります。
子宮頸がんの治療には外科手術のほか、放射線療法や化学療法などがあり、
がんの進行度合いや患者の年齢などによって選択されています。
早期がんに対しては、「凍結療法」「高周波療法」「レーザー治療」などが用いられることもあります。
外科手術は最も一般的な治療法。がんが見つかった子宮頸部の組織を円錐状に切除する「円錐切除術」、子宮を摘出する「単純子宮全摘出術」、子宮と膣の一部を含めて骨盤壁の近くから広い範囲で切除する「広汎子宮全摘出術」などの術式があります。
X 線や高エネルギー線を使ってがん細胞を破壊し、腫瘍を縮小させる治療法。放射線を体外から照射する外照射、針やカテーテルなどを使ってがん細胞に照射する腔内照射があります。放射線療法は手術と併用することもあります。
抗がん剤を使用し、がん細胞を殺したり、細胞分裂を停止させたりして、がん細胞の増殖を停止させる治療です。抗がん剤は経口的または血管や筋肉注射で 投与され、血流に入って全身のがん細胞を破壊するため、全身療法とも呼ばれています。