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自転車を活かす道

古倉宗治氏インタビュー 「国は体系的な自転車計画の策定を」

Profile:三井住友トラスト基礎研究所 研究理事 古倉宗治(こくら・むねはる)氏
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自転車事故が「歩道だけ」増えている

古倉氏

自転車の交通事故発生場所(2011年)

交差点は事故が最も起こりやすい最悪の場所です。また、交差点の事故の割合は自転車以外の事故が約35%であるのに対して、自転車事故は倍の約70%に上っているということで、交差点における自転車事故がいかに多いかということがわかります。また、車道は危険で歩道は安全という神話がありますが、事故件数は車道よりも、歩道が多いということが、私が今年調べたデータで分かってきました。また、時系列的に見ると、2001年と2011年のデータですが、自転車事故の数は大幅に減っています。交差点も減っていますし、車道も減っていますが、ただ、唯一例外なのが、歩道が増えているということ、すなわち、「歩道だけ」が相対的に危険度を大幅に増やしています。

歩道では自転車が歩行者をはねるよりクルマにはねられる確立が高い

 
なぜ、安全と思われてきた歩道でのクルマとの接触事故が増えているのでしょうか。
古倉氏

歩道上の自転車事故(2011年)

歩道上での自転車事故は約13600件あり、このうちの対歩行者は約1100件しかありません。 これに対して、歩道上でクルマにはねられている自転車が10000件ある。つまり歩行者との事故件数の9倍くらい自転車と自動車の事故が歩道上で起こっているのです。その理由は沿道の駐車場の出入りのクルマが歩道上の自転車をはねるというものです。自転車が車道を走っていれば、沿道出入りのクルマとの距離もありますから事故は起こりにくいのですが、自転車が駐車場側の歩道のぎりぎりのところを走っていることによって、駐車場から出てきたクルマに出合い頭でぶつかってしまう。つまり、歩道では自転車が歩行者をはねるより、クルマにはねられる確率の方がきわめて高いということです。逆に、歩車道区分ありの車道の場合、自転車が普通に左側を走っていて、クルマが後ろから引っかけるという事故は、約1500件しかありません。つまり、車道を正規に左側通行すれば全自転車事故の1%の1500件くらいしか事故が起こらないのに、歩道上を走っていたらその6、7倍の10000件くらいのクルマにはねられる事故が起こっていることになります。このように、歩道における自転車の走行の問題は、歩行者に対する脅威はもちろんですが、自転車自身がクルマにはねられる事故の脅威の方が大きいということがわかります。なお、車道の通行割合は約3割程度はありますので、逆算しても車道でのひっかけ事故よりも歩道での衝突事故が圧倒的に多いのです。

自転車が車道を走ることで「見落とし」を防ぐことができる

 
交差点で起こる事故の主な要因はどのようなものなのでしょうか。
古倉氏
交差点の事故については、巻き込み事故が非常に多いのですが、東工大の鈴木先生の分析によると、自転車が歩道から交差点に入る場合と、車道から交差点に入る場合とでは、左折のクルマが気づいたという割合は、歩道からの自転車は4割ですが、車道からの自転車は7割が「気づいた」と答えています。この気づき率の差が大きいのです。例えば都内の事故の
 

クルマが駐車場から車道に出ようとする際、車道の左側走行をする自転車は視界に入るが、歩道を走る自転車は死角に入ってしまう。

多い交差点について見ますと、左折巻き込み、右折巻き込み等、ほとんどすべての事故が歩道から入ってきたと思われる自転車です。信号機のない交差点でも、横から出合い頭で出てくる自転車、これは駐車場から出るクルマが歩道を走る自転車の場合とほぼ同じケースで、やはり歩道を走っている自転車との接触事故が圧倒的に多い。どうしてこのようになるのかについては、自転車事故における自転車とクルマのそれぞれのエラーの種類を調べた調査によると、総数300件と抽出数はそれほど多くないのですが、認知ミスが圧倒的に多いのです。「見落とした、見えなかった」という認知ミスの割合が、自転車62%、クルマ79%です。一方、ハンドル操作ミスは自転車で2%、クルマは0%です。つまり車道をふらふら走って危なそうでも、認知さえしていれば、少なくともクルマ側のハンドル操作ミスをするということはほとんどないのです。したがって、車道で後ろから引っかける事故は少ない、また、歩道通行及び歩道から交差点に進入することが危険であるということは認知ミスの実態からも裏付けられるのです。

米国のマニュアル 「歩道通行は自転車とクルマの衝突事故の重要な原因」

古倉氏
海外のマニュアルは徹底して、クルマから見えるように走るということを強調するように作られています。交差点の手前で車道から歩道に上がって渡るという方法は間違いであるとしています。クルマから認知されないことが事故につながるということをよく理解しているのです。アメリカ連邦交通省の自転車情報センターの文書には、次のようなQ&Aが紹介されています。「問い、自転車は歩道を走るべきでしょうか」。これに対する答えは「いいえ。自転車の歩道通行は自転車とクルマの衝突事故の重要な原因です」と。また、「自転車団体は公的機関とともに、歩道走行ではなく、車道走行を強調する多くの情報や文書を出しています」とも付け加えています。
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