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自転車を活かす道

小林成基氏インタビュー 「暮らしに基盤を置いた移動の自由をどうす確保するか」

Profile:NPO自転車活用推進研究会 理事長・事務局長 小林成基(こばやし・しげき)氏
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この転換点において、政治がどうしていけばいい、何から手をつければいいと考えますか。

抜け道と化す通学路に車を入れないことから

小林氏
通学路から始めるべきでしょう。ヨーロッパでは、通学路にクルマを入れないところから始めました。子どもたちを守れなかったら、社会は成り立ちません。たとえば昨年、京都府亀岡市での自動車の暴走によって、登校中の多くの子どもが亡くなるという痛ましい事故が発生してしまいました※1。この道はバイパスの抜け道になっていました。時速30キロ制限にして、ガードレール付けてでは、何の解決にもなりません。どうしてクルマを入れないようにしないのでしょうか。「通学路のクルマを止めたら、渋滞が激しくなる」などと言う人がいますが、実際にヨーロッパはそれをやってます。通過交通が問題であることはヨーロッパではかなり早くから認識されていて、日本に依然としてあるような“抜け道マップ”というものは禁止されています。当たり前のことです。生活道路をクルマでぶっ飛ばすというのは全く理解しがたい行為です。
 
日本の交通もクルマ優先からの転換が必要な時期に来ているのでしょうか。

自転車を優先するあまり公共交通をつぶす恐れがある

小林氏
そう思います。そして、「自転車が優先されるべきだ」という考えも捨てるべきです。歩いて暮らせる街づくりということが最大の眼目です。その中で、クルマをどう規制し、どうクルマを使えばいいのかというところを議論しなければなりません。クルマをスムーズに走らせるために、人を歩道橋の上に上げてしまう方法を自転車にも踏襲したら、すべて崩れていきます。自転車を利用する環境を進めることによって、バスなど公共交通機関から、客を奪ってしまうことは間違ってもあってはならないことです。


ポロクル
(借りると車道を走るように誘導されるのは日本初)

人間が自由にさまざまな選択肢で移動する、活動できる街を作るかということが重要なのであって、単に自転車の問題なのではありません。 自転車のブームがあって、バイクシェア※2など、自転車のことばかり考える傾向が強まっていることをかえって懸念しています。
自転車が見直されていることはいいことですが、“自転車至上主義”になってしまうのはいかがなものか。本当に重要なことは人間がどうしたら、安全に平和に楽しく暮らすことができるかです。幸せな暮らしづくりというところから考えていくと、今、嫌々自転車に乗っている人に、「もっと自転車に乗りなさい」というのは酷だと思います。乗りたい人が乗ればいいのです。

緩やかな高齢化によって歩ける街を作り上げてきたヨーロッパ諸国

小林氏
ヨーロッパの高齢化のスピードはわが国に比べて約4倍もゆっくりで、街の作り方や暮らし方を何十年もかけて変える準備ができました。歩いて暮らせるコンパクトシティはその一つの結論ですが、街なかの自由な移動のための選択肢の代表がが自転車だったというわけです。パーソナルな移動の手段として、クルマではなくて、自転車にとどまれと言っているわけで、やっぱり歩いて暮らせる街づくりのためにどうするかということが考え方の原点にある。日本ではまだ何か勘違いが続いていて、いずれは電気自動車が普及すればなどという幻想がありますが、現在のクルマを乗ることができない人が電気自動車になったからといって乗ることはできませんから。 日本でクルマの免許証をもっていない人は数千万人もいます。クルマなしで生きる……その気になれば、それほど難しいことではないはずです。でも、クルマだけが大事で、クルマが大手を振って歩ける街づくりをしてしまったのですから、これを戻していくのは、実際のところ、かなり大変な作業になっていくと思います。日本も既にいくつかの都市で取り組みが始まっています。クルマ社会の典型的な都市である北海道の札幌市でも、交差点もまっすぐに走行できる自転車レーンにトライしています。


交差点もまっすぐ走行できる自転車レーン
(札幌市)

これからの自転車も走れる道の整備の基本は、「路面に描け、現場で教えろ」です。 時代の流れから少し遅れ気味の感じはありますが、私たち日本国民は「やればできる、始めれば変わる」力を持っていると信じています。
※1 亀岡市の事故
2012年4月23日、京都府亀岡市の府道で、無免許運転の軽乗用車が登校中の小学生と引率の保護者の列に突っ込み、10人がはねられ、3人が死亡、7人が重軽傷を負った事故。原因は居眠り運転とみられている。
※2 バイクシェア
レンタル自転車をいつでも、借りられ、どこでも返却できるというシステム。パリの「ヴェリブ」が有名。日本でも各地で導入が試みられており、横浜ではみなとみらい地域では「baybike」が稼働している。写真は札幌市の「ポロクル」。
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