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自転車を活かす道

小林成基氏インタビュー 「暮らしに基盤を置いた移動の自由をどうす確保するか」

Profile:NPO自転車活用推進研究会 理事長・事務局長 小林成基(こばやし・しげき)氏
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1昨年、警察庁から「自転車は車両であり、車道走行が原則」との通達が全国の自治体や警察本部に出されました。
また、昨年は国交省と警察庁による「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」※1も発表されました。自転車を取り巻く環境は徐々に改善されているようですが、どう見ていますか。

2012年は「自転車元年」

小林氏
2012年は「自転車元年」とも言うべき一年だったと思います。2011年の東日本大震災を契機に、自転車の利用が見直されるようになり、利用者が急増しました。それとともに、自転車が絡む事故やトラブルも増え、利用の在り方について、しっかりと考えなければならないという認識が高まりました。その助走期間を経て、昨年11月の国によるガイドラインなど、いろいろな形に結びついていきました。そのきっかけの一つとなったのが、2011年12月に公明党が発表した「自転車走行環境の整備についての緊急提言」※2であったと思います。画期的な提言でした。


路上駐車スペースの内側に
自転車レーンを設置(東京都港区)

ただ、この提言が示したように、すべての道に自転車レーンを作るのは実際には難しいので、行政は考えた挙句、ネットワーク計画を作るということをガイドラインに盛り込みました。道路のすべてに自転車レーンを作るのではなくて、自転車のネットワークができそうなところを、しっかり決めてくださいと自治体に促している。 それは公明党が「すべての道に作れ」とした提言が生きた最大のポイントであろうと思っています。
 
始まった取り組みを線にし、面へと広げていくためには何が必要でしょうか。

800自治体の約7割が「自転車計画なし」

小林氏
道路管理者と交通管理者、つまり自治体と警察の担当者が気がついてくれないとどうしようもありません。ありがたいことに少しは気が付いてくれたような気がします。残念ながら気がつかないところはさっぱりだめです。ガイドラインを出す前に国交省が、人口密集地域のおよそ800自治体に調査をしました。その内容は、ネットワークなど、自転車の計画について、「何らかの動きがあるか」「計画があるか」「計画はないが、これからやる予定はあるか」という設問です。すると、「全く考えてない、計画も考えてない」と回答した自治体が72%にも上りました。その理由が、「そんなことをやっている場合じゃない」「そこまで考えられる状況ではない」と。本来、一番解決しなければならない問題であるはずです。さらに言えば、自転車のことよりも前に真剣に考えなければならないのが高齢社会への対応だと思います。
 
世界一のスピードで進む高齢社会への備えがまだ十分ではないと。

高齢社会の備えが全くできていない日本の現状

小林氏
全くできていません。日本には高齢社会に対するしっかりとした認識がいまだにありません。例を挙げますと、内閣府が2005年に行った調査で日常の買い物を不便と感じるいわゆる「買い物難民※3」が高齢者の16・6%にも上ることが報告されました。これを受けて経済産業省は対象者を600万人と推計し4年ほど前に、買い物難民のための政策を出しました。ひとことで言えば、高齢者は自宅で、パソコンなどの通信端末から注文すれば、NPOやボランティアが食べ物を届けてくれるといういわゆる買い物代行サービスです。しかし、それは本当の意味で買い物難民対策とはいえません。買い物難民に物を届けてあげることはあくまで対処療法であって、対策などとはいえないのです。出歩く足もなければ、バスもない、道も安全じゃない、という状況を放置しておいて、「食べ物を届けてあげますよ」と。全く物事の本質を取り違えてます。
※1 安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン
国土交通省道路局と警察庁交通局が有識者の提言を受けてとりまとめ、2012年11月29日に発表した。各地域において、道路管理者や都道府県警察が自転車ネットワーク計画の作成や整備、通行ルールの徹底等を進められるようにすることを目的に作成された。
※2 自転車走行環境の整備についての緊急提言
2011年12月19日、党自転車等の利用環境整備推進プロジェクトチームはここ数年の自転車利用者の急増に伴う事故発生への対応として、走行環境整備とルール遵守の教育・徹底に絞った緊急提言をまとめた。
提言全文[約1.2MB] http://www.komei.or.jp/policy/various_policies/pdf/2011bike.pdf
※3 買い物難民
食料品や生活必需品の買い物に困る人を指す。帯広畜産大学教授の杉田聡氏が名付け親。郊外型大規模店の出店に伴う商店街の閉店や公共交通の廃止などがその大きな要因となっている。買い物弱者と呼ばれることもある。
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