主張看護師の特定行為研修 地域医療の充実に役割大きい

公明新聞:2018年1月18日(木)付

自宅や介護施設などで療養する高齢者への医療提供体制の強化を急ぎたい。

医師の指示を待たずに一定の診療補助を行える看護師を養成する「特定行為研修」制度がスタートして、2年が経過した。

一定の診療補助とは、例えば、患者が脱水症状を起こした際に医師の指示に基づいて行う点滴などが挙げられる。

問題は、医師が身近にいない在宅介護や施設介護でケアを行う看護師が、重い脱水症状が疑われる場面に遭ったケースだ。医師と連携を取っている間にも症状が深刻化する恐れがある。

こうした事態に備え、医師への事後報告を条件に看護師自らの判断での診療補助を可能にするのが特定行為研修である。現在、呼吸確保のための医療用管の交換や床ずれで壊死した組織の処置など、高度な技術が必要な38種類の行為が指定されている。

わが国は、2025年には「4人に1人が75歳以上」という超高齢社会を迎える。自宅などで療養する高齢者の増加は避けられず、地域の医療提供体制の充実が急務の課題となっている。

それだけに、看護師による“安全でタイムリーな処置”をめざす特定行為研修に対する期待は大きい。住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるようにする「地域包括ケアシステム」の構築にも、重要な役割を担っている。

気になるのは、研修修了者が全国で約600人と伸び悩んでいることだ。受講促進に取り組む必要がある。

一つは、現在、54カ所にとどまっている国指定の研修機関を増やすことである。この点、政府が2018年度予算案に「研修機関導入促進支援事業」を盛り込み、研修を行う大学や医療機関に機材購入費などを補助するようにしたことは評価できる。

看護師への支援も欠かせない。国の指定を受けた講座を受講する場合に限り受講費の一部が支給される「一般教育訓練給付金」が利用できる点を、改めて周知することも必要ではないか。

厚生労働省は、25年までに研修機関300カ所、修了者10万人の目標を掲げている。取り組みを格段に加速するよう求めたい。

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