阪神・淡路大震災23年 防災力高め「想定外ゼロ」へ

公明新聞:2018年1月17日(水)付

防災ボードゲーム「RESQ」を囲み、地域性を生かしたルールなどについて活発に意見を交わす明石高専防災団のメンバー防災ボードゲーム「RESQ」を囲み、地域性を生かしたルールなどについて活発に意見を交わす明石高専防災団のメンバー

意識啓発の“担い手”に
兵庫の明石高専防災団 ゲーム制作 減災PJも

1995年1月17日午前5時46分。激しい揺れが兵庫県南部地域を襲った。阪神・淡路大震災である。以来、23年。関西各地では今、被災経験のない若い世代も加わり、あらゆる危険に備える「想定外ゼロ」をめざした防災・減災対策が進みつつある。その断面を追った。=関西支局特別取材班


壊滅的な被害をもたらした阪神・淡路大震災。当時の状況を知らない世代が増える中、震災について学び、防災意識を啓発しようと活動を進めている若者たちがいる。その一つが明石工業高等専門学校(=明石高専、兵庫県明石市)の学生でつくる「明石高専防災団」。全員、防災士資格を持つメンバーだ。

工夫を凝らし小中学校でも活用進む

「改善点はある?」「地域に応じてルールを変更できるのでは」。10日。同高専の校舎の一室で、明石高専防災団のメンバーたちが、自ら制作したすごろく型の防災ボードゲーム「RESQ(レスキュー)」を囲み、活発に意見を交わしていた。

防災団が誕生したのは2015年7月。同高専の1年生の必修科目に「防災リテラシー」があることから、「学んだことを生かせれば」(渡部桂太朗=19、元防災団代表)と思い結成したという。RESQの制作は主要な取り組みの一つで、16年冬に完成。現在、防災知識の向上へ5カ所以上の小中学校や、各地のイベント会場などに設けられた体験ブースで活用されてきた。

ゲームは駒を進めて救急セットや消火器など防災グッズを獲得しながら、人命救助に関する課題をクリアして得たポイントを競うもの。またゲームのコース中には「非常用持ち出し袋を置く場所として最適な場所は?」といったクイズも。防災団のメンバーが被災者から実際に聞いた体験や、神戸市のホームページに掲載されている「あの時役立った私の知恵」などを基に出題している。「いかに楽しく学べるか工夫を凝らしてきた」と渡部さんは胸を張る。

一方、防災団がもう一つ力を入れてきたのが、明石市東二見地区で住民と共に実施中の減災プロジェクト(PJ)だ。地域から「若い世代のアイデアが欲しい」という声を受け、16年10月から活動を開始した。

同地区は高齢化が進み老朽化した家屋が多い上、海抜2メートルに位置し、津波の被害も想定されている。このため、竹谷夏葵さん(18)らを中心に、要援護者対策として「まち歩きワークショップ」を開催。街の危険箇所の点検や避難経路の調査などを行ってきたという。

明石高専防災団が結成されて2年半。昨年末には、これらの取り組みが評価され兵庫県から表彰された。「これまで被災者らが継承活動などを通じ、まいてきた種が震災を経験していない若い世代の間で芽吹いてきている」。そう語る同顧問の大塚毅彦教授の顔に笑みがこぼれた。

公明党は、震災の教訓を踏まえ若い世代の力を生かす施策と防災意識の向上を進めてきた。中でも甚大な被害に見舞われた神戸市では、地域の消防団に大学生でも入団できるようにすることを主張。昨年4月までに、69人の学生消防団員が誕生している。

女性ならではの視点光る

賞味期限迫る常備食使いアレンジ・レシピを提案

百貨店で常備食をアレンジした料理を振る舞う「防災女子」のメンバー各地の震災を教訓に、女性の視点を防災に取り入れようと奮闘する大学生や母親たちがいる。二つのグループの活動を紹介する。

「材料を入れたポリ袋を沸騰した鍋に入れるだけ。簡単なのにおいしい!」。14日、神戸市の大丸神戸店内で行われた「おいしい常備食フェア」での来店者の反応だ。調理を実演していたのは神戸学院大学社会防災学科の女子学生らを中心につくるサークル「防災女子」のメンバー。賞味期限が迫った災害時用に蓄えている常備食を調理し、食べたら買い足すことで常に新しい備蓄をキープするローリングストック方式を活用したアレンジ・レシピを提案している。

この日、振る舞ったのは、鯖の缶詰を使った炊き込みご飯やメープル味の蒸しパンなど3種類。材料となった商品を買って行く客も。

メンバーの藤井寛香さん(20)は「被災時、食べ慣れた味の食事を取れるとホッとすると思う。もっとレシピを広めたい」と意気込んでいた。

わが子に合った防災リュックを考え準備

「災害時、行政の支援に頼るだけでなくママたちにも防災を考えてほしい」――。こう話すのは兵庫県三田市で2017年度、「さんだ女子防災部」を立ち上げた益田紗希子さん(38)。行政の助けを受けながら、益田さんを含めて3人の母親らが中心になって主に乳幼児を抱える親世代を対象に、定期的な防災イベントを開いている。

昨年の8月と11月に行われたイベントでは、東日本大震災で被災した母親の体験談を学びながら、防災リュックの中身を検討。離乳食やおむつ、お気に入りのおもちゃなど、子どもの成長度合いや好み、アレルギーなどを考慮に入れ、それぞれの家庭に合った準備を考えた。活動はマスコミにも取り上げられ、県外からも参加者が。さんだ女子防災部のイベントは2月にも予定されている。

全国初、奈良市に外国人観光客の避難所

年間150万人の外国人が訪れる奈良市。市が誇る観光地・奈良公園の近くに、外国人観光客のための避難所が、全国で初めて整備された。これは、奈良県外国人観光客交流館「猿沢イン」を活用するもので、県と市、民間が協力して災害時に250人規模の受け入れをめざす。

猿沢インには英語や中国語を話せるスタッフが常駐し、イスラム教徒の礼拝室も完備。水や毛布、イスラム教の戒律に沿った「ハラル」対応の非常食なども備蓄される予定だ。

大阪の地下街「人命第一」に訓練重ねる

1日に数十万人が往来する巨大地下街では、地震や火災、津波などの発生時、人々をどう安全に避難させるかが課題となっている。

大阪の繁華街・梅田や難波の地下街では、管理会社が全店舗に呼び掛け、避難訓練を年3~4回実施。各店舗の避難誘導旗や消火器の点検も毎月行っている。2015年度には大阪市議会公明党の推進で、出入り口の止水板設置など、大規模地下空間の浸水対策に対する市の補助制度も創設。整備が進んでいる。

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