主張学習支援の対象拡大 中卒、高校中退者に寄り添って

公明新聞:2017年9月6日(水)付

子どもの学ぶ機会を広げる好機にしたい。

厚生労働省は、経済的に困窮している家庭の子どもに対し、自治体が実施している学習支援事業の対象を広げ、現在の小中学生に、高校中退者や進学していない中学卒業者も加える方針を決めた。

学習支援事業は、公明党の推進で成立した生活困窮者自立支援法に基づき、15年にスタートした制度だ。高校進学の後押しが主な目的で、ボランティアや元教員らが、公共施設などで勉強を教えたり、家庭や学校に居場所がない子どもの相談に乗っている。国は自治体が行う事業費の半分を助成している。

経済的理由による教育格差が次世代にも引き継がれる“貧困の連鎖”を断ち切る上で、学習支援事業には大きな役割が期待されている。しかし、年間5万人弱に上る高校中退者や、中学を卒業しても家庭の事情などで進学できなかった約1万人の生徒は対象外になっている。この中には、生活困窮世帯が少なくない。

こうした子どもたちの置かれた環境は厳しい。例えば、ハローワークに行っても高卒者用の求人には応募できず、中卒者に対する求人は極めて限られている。

“貧困の連鎖”を防ぐためにも、高校中退者や中卒者の高校への復学、進学を後押しすることは重要だ。この点に、学習支援事業の対象を広げる狙いがあることは言うまでもない。

気を付けたいのは、単なる学習支援では不十分であるということだ。例えば高校中退者の場合、中退した理由として「授業に興味がわかない」「人間関係でつまずいた」など、学校生活になじめなかったことを挙げるケースが多い。

高校中退者への学習支援を行う都内のNPO法人では「人間関係でつまずいた子どもには人間関係の形成から、また、学力不足なら基礎学力が向上するように指導する」と、学力向上に限らず、生活習慣を含めた支援の重要性を訴える。こうした現場の声を生かす視点が求められよう。

子どもたち一人一人に寄り添い、その可能性を開き、将来の選択肢が広がるような取り組みにすべきであることを、重ねて指摘しておきたい。

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