主張NAFTA再交渉 日本企業に影響も。動向に注視を

公明新聞:2017年8月16日(水)付

米国、カナダ、メキシコの3カ国が関税を撤廃するなどして、貿易の活発化をめざす北米自由貿易協定(NAFTA)。その再交渉が16日から20日にかけて行われる。日本企業に及ぶ影響も大きく、動向を注視すべきだ。

1994年に発効したNAFTAは、巨大な経済圏を構築している。国際通貨基金(IMF)によると、NAFTAの域内総生産(GDP)は約2200兆円で、約1760兆円の欧州連合(EU)を超える(2015年)。

域内では関税がかからないNAFTAの利点を活用しようと、賃金水準が低く、安い労働力が容易に確保できるメキシコに、世界中から多くの企業が生産拠点を置き、メキシコで作った製品を米国に輸出するようになった。

日本貿易振興機構(JETRO)によると、日本からメキシコに進出した企業は1046社(16年10月)。中でも、トヨタや日産などの自動車大手に加え、部品メーカーの進出が目立つ。16年のメキシコでの自動車生産台数は約140万台に上り、その7~8割が米国向けだったという。

メキシコから米国への輸出が増加する一方で、米国のメキシコに対する貿易赤字は拡大し、2016年には約7兆円に達した。カナダに対する貿易赤字は約1兆円に及ぶ。トランプ米大統領は「NAFTAは米国史上最悪の破滅的な合意だ」と不満を訴え、再交渉の運びとなった。

再交渉で日本企業への影響が懸念されるのは「原産地規則」の見直しである。乗用車の場合、部品の62.5%以上をNAFTA域内で調達すれば関税がゼロになる。この比率の引き上げが議論される。

メキシコで生産される日本車には日本製の部品も使われているが、今後、より多くの米国製部品を使うよう求められることも予想される。日本企業は対応できるようにしておく必要がある。

ロス米商務長官は、再交渉で話し合われる項目を「米通商交渉の新基準」と強調しており、NAFTAにとどまらず、10月に予定されている日米経済対話でも、米国製部品のさらなる調達など同様の要請をしてくる可能性が高い。日本政府は再交渉の経過をきちんと検証すべきである。

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