2020年度から必修化 小学生にプログラミング教育

公明新聞:2017年7月19日(水)付

論理的に考える力養う
専用ソフト使い仕組み理解
作品コンテストや教育フォーラムも計画
千葉・柏市が先行実施

今年3月の学習指導要領の改定を受け、2020年度から、小学校でプログラミング教育が必修化される。コンピューターを動かすプログラムを作ることで、論理的に考える力を養うことが目的だ。そうした中、千葉県柏市は今年度から、全市立小学校の4年生を対象に授業を開始。必修化に向け、いち早く動き出した同市の取り組みを紹介する。

今年度から全市立小学校で

「できたよ!」「おもしろーい!」――。柏市立松葉第一小学校(渡邉美佐代校長)のパソコン教室を訪ねると、4年生の児童が与えられた課題に夢中になって挑戦し、クリアするごとに歓声を上げていた。

児童が取り組むのは、プログラミングと呼ばれるコンピューターを動かすための命令を入力する作業だ。

授業ではまず、スクラッチと呼ばれるプログラミングソフトの基本操作を学ぶため、市が作成した動画を視聴。その後、アドバイザー役のICT(情報通信技術)支援員・田中香穂里さんの指導を受けながら、実際に入力作業を始める。

最初の課題は、画面上でネコのキャラクターを動かすこと。「前に進む」「壁にぶつかったら方向を変える」「足を交互に動かす」などの命令を少しずつ増やし、「ネコが歩いて左右の壁にぶつかって方向を変える」という動きを繰り返すプログラムを完成させる。

クラス担任の吉田一希先生は「いつもの授業以上に、生き生きとした子どもたちの表情を見ることができた」と話していた。

「プログラミング教育は情報リテラシー(情報を読み解く能力)の一つ」と位置付ける柏市は、今年度から市立小学校全42校の4年生(118学級、約3600人)を対象に、総合的な学習の時間を当てて授業を実施している。

いち早く授業を開始できた理由について、市教育委員会学校教育課の佐和伸明副参事は、「1987年度から市立田中北小学校で約10年間にわたりプログラミング教育を実施した経験が生きている」と述べ、同教育が受け入れられやすい環境にあると指摘する。

さらに、市は99年度から全市立小中学校にICT支援員を派遣するなど、外部講師を積極的に活用する体制が整っている。

2016年度には、市立小3校で実証授業を実施。授業後のアンケートでは大半の児童が「もっといろいろなことを表現したい」(98.3%)、「普段の授業より、真剣によく考えた」(88.5%)などと回答した。佐和副参事は「児童が将来、どのような職業に就くとしても、論理的に考える力は求められる。必ず役に立つと思う」と強調する。

今後、校外での親子体験会などのイベントを開く。また今年度中に、児童が作成した作品の発表の場として、プログラミング作品コンテストを実施するほか、同コンテストの表彰の場を兼ねた教育フォーラムの開催を計画しており、プログラミング教育の普及活動に取り組む方針だ。

文部科学省は、20年度から実施する小学校の次期学習指導要領の総則で、プログラミング教育の実施を明記した。

文科省によると、必修化といっても新しい教科はつくらず、総合的な学習の時間や算数などの教科の中で行うとしており、自治体や学校現場の判断に委ねられる。このため、文科省や自治体の支援も欠かせない。

教える側への支援を 慶應義塾大学理工学部 山口高平教授

コンピューターは、大ざっぱな命令や間違った命令では適切に動かない。プログラミング教育では、そうした筋道を立てて正確に伝える能力、つまり論理的思考力を身に付けることができる。

欧米では既に、自分の考えを表現する手段として、小学生からプログラミング教育が必修化されている。日本は、世界的に見れば遅れているのが実情だ。

近年、プログラミングを活用した新しいシステムが、既存の産業構造を変革している。例えば、銀行のATM(現金自動預払機)が今では街中にあるように、生活の身近なところでプログラミングが活用されている。学校現場では、こうした事実を丁寧に伝える教育を展開してほしい。

そのためには、教える側への支援も大きな課題となる。しっかりした教材を作るなど、教員をサポートする体制整備が欠かせない。

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