主張中小企業の事業承継 後継者探しに知恵絞りたい

公明新聞:2017年5月25日(木)付

中小企業が経営者の高齢化と後継者不足に直面している。国内企業数の99.7%を占める中小企業は、日本経済の屋台骨だけに深刻だ。

「2017年問題」と指摘されるように、団塊世代の経営者が今年から70歳を迎える。20年頃には数十万人の経営者が一挙に引退時期に差し掛かる。こうした中、60歳以上の中小企業の経営者の半数超が、後継者難や事業の将来性などを理由に廃業を予定しているという。

日本の中小企業には、国際的にも優れた技術を持つところが少なくないが、廃業が急増すれば、長年培ってきたノウハウが失われかねない。日本経済の基盤を守り、国際競争力を保つため、後継者問題の対応は待ったなしである。

既に国は対策に乗り出している。経済産業省は今年度、中小企業の後継者が新規設備導入などの経営革新を進めた場合、最大200万円を補助する「事業承継補助金」制度を創設した。中小企業庁の調査では、経営者が若返った企業は利益率や売上高が向上する傾向にあり、事業承継を後押しする意義は大きいと言えよう。

とはいえ、忘れてはならないのは、事業承継には計画策定から後継者のフォローまで、さまざまな支援策が求められるということだ。

公明党が先週発表した政策提言「成長戦略2017」で「今後5年程度を事業承継の集中実施期間」とし、「事業承継ネットワーク」の構築や相談体制の充実など多彩な政策を求める理由もそこにある。

とりわけ重要な支援策は後継者探しであろう。東京都墨田区は、区内の製造業の事業承継を促すマッチング支援を14年度から開始し、約90社が活用するなど成果を上げてきた。参考にしたい。

一方で、「区内だけではマッチング先が少ない」(墨田区経営支援課)ため、広範囲のネットワーク構築を求める声もある。

この点、都議会公明党が重点政策に、創業を望む人と後継者難の事業者を引き合わせる都独自の「後継者バンク」創設を掲げたことは注目に値する。こうした政策を東京から全国に広げ、中小企業の活性化が経済再生のけん引力となるようにしたい。

 

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