悲劇の「歴史」検証を望む

公明新聞:2017年4月30日(日)付

小池都知事「多磨全生園」訪問に寄せて
全国ハンセン病療養所入所者協議会 藤崎陸安事務局長

東京都の小池百合子知事は今月1日、東村山市にある国立ハンセン病療養所「多磨全生園」を訪問した。応対した全国ハンセン病療養所入所者協議会の藤崎陸安事務局長(73)に話を聞いた。

今回、現職都知事として約58年ぶりに、おいでいただいたことを非常にうれしく思う。都議会で何度も知事に訪問を呼び掛けてくれた、公明党の谷村たかひこ都議の努力に感謝したい。今回は限られた時間だったので、次回はぜひ、園内と(隣接する)国立ハンセン病資料館をじっくり視察してもらいたい。

知事に面会時に伝えたのは、「歴史」の検証だ。昭和の初めから戦前・戦後にかけて「無らい県運動」が全国的に広がった。いわゆる患者を地域からあぶり出して療養所に送り込む「らい狩り」だ。これによって各地で、さまざまな悲劇が生まれた。どういう実例があったのか、北海道や愛知、大阪など、療養所がない所でも検証が行われている。ぜひ都でもやってほしい。

また、入所者の郷土訪問も強く求めたい。周囲の偏見や差別から、帰郷を果たせない状態が続いている。しかし、幼い頃に過ごした故郷が今、どのようになっているのか。それを知りたいと願うのは人情だ。他県では、県職員が出身者のいる療養所を回り、訪問を呼び掛けている。都でも同様の取り組みを急いでほしい。

療養所の将来構想公明の主導に期待

今も、身内にハンセン病の関係者がいることで、結婚が破談になるケースが実際にある。多磨全生園の平均年齢は約85歳だが、私たちが死んでも偏見・差別がなくならない限り、ハンセン病問題は終わらない。各地の療養所を“歴史の教訓”として残し、同じ過ちが起こらぬよう語り継いでいくことが必要だ。

療養所がある地方議会ごとに、その将来構想を議論する党派を超えたプロジェクトチームがあっていい。公明党に、そのイニシアチブを取ってもらえたらありがたい。(談)

公明新聞のお申し込み

公明新聞は、激しく移り変わる社会・政治の動きを的確にとらえ、読者の目線でわかりやすく伝えてまいります。

新聞の定期購読