広がる 子育て支援パスポート

公明新聞:2017年1月19日(木)付

企業が割引や優待

子育てに優しい街へ――。自治体が企業・店舗と連携し、子育て世帯を対象に、各種割引や優待サービスなどを提供する「子育て支援パスポート」が各地で広がっている。現在、46都道府県が発行しており、昨年から全国での相互利用も可能になった。内閣府も全国共通マークを作るなど積極的に推進する。各地の取り組みを紹介する。

各都道府県が取り組むパスポート事業の大まかな仕組みは(1)小中学生までの子どもがいる世帯対象に自治体などがパスポートを発行(2)同事業に賛同・協賛する地域の企業・店舗がサービスや特典を提供する――というものだ。

事業の名称、対象となる子どもの年齢や利用条件、提供するサービス内容のほか、パスポートの登録・受け取り方法なども都道府県によって多少異なる。

パスポートの形やデザインも、カードやクーポン券、チラシ、携帯画面など都道府県によってさまざまだ。中には、カードを発行せず、子育て世帯が協賛店舗に来た際、店員が目視で確認し、サービスを提供する方法を採用している地域もある。

サービスの主な提供例としては、乳幼児連れの外出サポートやポイント加算などのサービス・商品割引などがある。今年4月からは全都道府県で導入される。

内閣府では「今後も、全国規模の企業などに協賛店舗の拡大や広域的な利用を働き掛け、地域ぐるみで子育てを応援する文化、雰囲気を醸成していく」方針。

最多の2万店が協賛 埼玉
スマホアプリで発信 京都


自治体が創意工夫

埼玉県では2007年5月から、パスポート事業「パパ・ママ応援ショップ優待カード」を開始。16年12月末現在、協賛店舗数は2万1033店舗と全国1位を誇る。県担当課は、拡大した要因の一つに「地元のタウン誌を発行する地域とつながりが深い企業に、協賛店舗の働き掛けを依頼していること」を挙げた。

もう一つの特徴は、県民への事業の認知度が圧倒的に高いことだ。14年度に県民対象に行った調査では、同カードを「知っている」「持っている」と答えた人が9割を超えた。同県では、小中学校や出生届提出などの際に同カードの配布を続けており、この地道な努力が実を結んだといえる。

さいたま市内で4人の子どもを育てる主婦は「レストランやレジャー施設など、外出時には、いつもカードを提示しています。経済的にも本当に助かっています」と語る。

一方、京都府では、07年7月から「きょうと子育て応援パスポート」の名称で始めている。15年度からは、子育て世帯の外出をサポートするため、地元のNPOと協力して、独自にスマートフォン(スマホ)向けのアプリを開発。登録すれば、パスポートをスマホ画面に表示することができるほか、協賛店舗ごとに提示した際の特典情報がすぐにチェックできる。府担当課では「週末に府外に出掛ける子育て世帯も少なくない。全国展開に伴い、さらにサービス向上を図っていきたい」と意気込んでいる。

パスポートの全国相互利用に伴い、全国展開の企業も協賛店舗の拡大に動いている。日本マクドナルドでは昨年11月、子育て支援パスポートを提示することで「ハッピーセット」のチーズバーガーセットを100円引きの390円で提供するサービスを全国に拡大している。

他の外食大手も、協賛の判断を各店舗ごとに委ねていた状況だったが、一連の動きを踏まえ「協賛していない地域の店舗に対し、パスポート事業に関する情報を提供する」と積極的に推進していく方針を決めた。

地方発の有意義な事業

東レ経営研究所 主任研究員 渥美由喜氏

パスポート事業は、子育てに優しい街づくりをめざす行政が旗振り役となり、その主旨に賛同する地元企業が地域振興や社会貢献活動の一環として取り組む事業だ。地域に根差す有意義な事業であり、地方発の子育て支援策の成功例の一つと言える。

国や地方自治体の予算は限られている。その中で、子育て支援をいかに充実させていくかは大きな課題だ。給付といった従来型の財政支援だけでなく、パスポート事業のように行政に備わる「信用力」を使って、企業と連携し、支援の手を広げることも重要だ。

子育て世帯にとっては、社会全体で子育てを応援してくれている、との安心感につながる。協賛企業の中には、子育て世帯の利用が増え、売り上げ増につながっている企業もある。

公明党は、与党の一員として、子育て支援に一番熱心で、中核的な役割を果たしている政党だ。子育て支援パスポートのように企業が参画しやすい政策の提言に期待したい。

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