主張シリア難民の受け入れ 祖国復興担う人材、日本が育成を

公明新聞:2016年5月24日(火)付

政府は20日、内戦が続くシリアから逃れた難民の若者を留学生として受け入れる支援策を打ち出した。

シリアは世界最大の難民発生国である。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2011年にシリアで内戦が始まってから今年5月までの時点で、480万人以上が故郷を離れることを余儀なくされた。今も欧州諸国や周辺諸国にシリアから大量の難民が押し寄せ、世界規模で深刻な問題となっている。

日本では11年以降、63人のシリア人が保護を求め、難民申請をした。しかし、認定されたのはわずか3人にとどまる。難民となって就学の機会を失ったシリアの若者を積極的に受け入れることで、日本は、難民の保護に前向きである姿勢を国際社会に示したい。

シリアなど内戦が長引き、テロが頻発するような国の若者を支援することは、極めて重要である。

例えば、ドイツの社会学者であるグナル・ハインゾーン・ブレーメン大学終身教授の学説「ユース・バルジ(若者の急増)」は、現在の国際情勢分析の主流になっている。同学説によると、男性人口に占める15~29歳の比率が3割を超える国では、紛争やテロが起こりやすくなるという。

そうした国では、若者が雇用機会に恵まれない傾向にあり、血気盛んな年代の若者が社会に絶望し、一斉に過激な行動に出るためであると同教授は指摘する。

シリアの総人口における平均年齢は約23歳(14年時点)。世界銀行によると、シリアの15~24歳までの若者の失業率は30%以上と極めて高い。シリアの平和と安定の鍵は若者が握っているといっても過言ではない。

シリア難民の若者の受け入れは、公明党が政府に強く求めていたものだ。党難民政策プロジェクトチームなどは昨年12月、谷合正明事務局長(参院議員)らがヨルダンのシリア難民キャンプなどを訪れて行った現地調査を踏まえ、岸田文雄外相に要請したほか、山口那津男代表も今年1月の参院本会議で安倍晋三首相に提案していた。

紛争終結後のシリアの復興に貢献できる人材を日本が育てていきたい。

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