主張災害からの回復力 国連が「強靱な社会」提唱

公明新聞:2014年7月28日(月)付

大震災の経験生かし世界に貢献を

今や国際社会の指導理念となった「人間の安全保障」を20年前に提唱した国連開発計画(UNDP)が、24日発表の報告書で「人々が進歩し続けるために=脆弱を脱し強靱な社会をつくる」をテーマに掲げた。

UNDPは国際的な開発支援活動の中で、世界が取り組むべき課題をいち早く提起してきた。

軍事による「国家の安全」に目を奪われていた世界に対し、貧困から生まれる欠乏や恐怖を取り除き「個人の安全」を守ることで紛争の芽を摘むことができるという「人間の安全保障」の理念も、こうした現場感覚に裏打ちされていた。

今回の報告書が提唱した、大規模自然災害や武力紛争、さらには金融危機のリスクに対する「強靱な社会」の構築も、国際社会にとって待ったなしの政策テーマである。

特に、大規模自然災害に対する脆弱性は開発途上国に限った話ではない。多くの先進国も近年、大地震や巨大台風、大洪水などに襲われ深刻な被害を受けている。

報告書は「国として備えを固め、優れた政策をもっていてもショックは発生する。したがって、中心に置く目標は回復である」「国の強靱性には災害からの回復力が含まれる」と強調している。東日本大震災の復興に全力を挙げる日本にとって、真摯に受け止めるべき指摘である。

日本の場合、大規模自然災害や原子力災害に対する法制度は整備されていた。しかし、阪神大震災のときは政府が迅速な対応ができず、災害対策基本法の改正を迫られた。東日本大震災では、原子力災害に対する不備が明らかになり立法措置がとられた。「備えを固め、優れた政策をもっていても」とは、とても言えない態勢であった。

さらに現在、日本の「回復力」が問われている。前民主党政権で遅れていた復興は、自公連立政権になってようやく進み出した。しかし、困難な状況は続いている。日本がこの震災復興で確かな成果を上げることができれば、世界にとっても貴重な経験になることは間違いない。

安倍首相は東京都内で行われた報告書の発表に際し「来年3月に仙台市で第3回国連防災世界会議を主催する。日本の経験、教訓、防災技術を世界と共有する」と述べ、クラークUNDP総裁は「日本は防災と人間の安全保障のリーダーである」と応じた。

震災からの復興を通じて、世界の強靱化に貢献できる成果を積み上げていきたい。

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