主張法人税引き下げ 徹底議論で課題乗り越えよ

公明新聞:2014年7月25日(金)付

自治体や中小企業の不安解消必要

政府の「骨太の方針」に、「数年で法人実効税率を20%台に下げる」との方針が明記された。35.64%(東京都の場合)と世界的に見て高いといわれる法人税を引き下げて、日本の企業の国際競争力を高める目的だ。年末の税制改正に向けて越えるべき課題も多く、注視していきたい。

その一つは、企業の経営姿勢だ。帝国データバンクが6月に全国2万社余りを対象に、法人税が減税された場合の引き下げ分の使い道を聞いたところ、「内部留保」と答えた企業が20.5%と最も多く、「借入金の返済」も16.3%に上った。回答企業の3分の1が、設備投資など積極的な経営戦略を示しておらず、減税の効果に水を差しかねない。

一方で、積極投資を考える企業は51.3%と半数を超え、投資総額は6.2兆円程度増加すると見込んだ。減税分の多くが設備・研究開発投資や給与の増額、人員の増強といった分野へ向かわなければ、政府の意図する経済の好循環につながらない。「設備にある程度投資した後は、いつかやってくる不況に備え内部留保を蓄えたい」との“本音”も聞こえたという。企業に、持続的な成長を追求する経営意識を持つよう促す必要がある。

財源確保も容易ではない。景気回復によって、今年度の税収増は1兆5000億円程度を見込むが、財務省は「(増収分は法人税減税の)恒久財源にならない」と素っ気ない。国・地方合わせた法人関係税収の6割は地方財源なので、自治体に不安を与えないためにも安定財源確保は必須だ。

代替財源の“候補”に上がっている外形標準課税(資本金や従業員数などの事業規模に応じて課税)の対象拡大も一筋縄ではいかない。帝国データバンクの調査でも、中小・小規模企業を中心に41%が反対した。税制面で政策に配慮する租税特別措置や税制優遇措置の見直し・縮小も、政策効果が薄れると反発が強い。

来年度は、基礎的財政収支(税収・税外収入と、国債費を除く歳出との収支)の赤字を2010年度比で半減させる目標時期に当たる。目標が達成されなければ、国際的な信用と国債に対する信認性を失いかねない。欧州諸国で見られた、「法人税のパラドックス(逆説)」と呼ばれる法人税減税が税収増につながる現象に光が当たっているが、日本で同様の効果が得られるか検証が必要だろう。

年末には、消費税10%への引き上げ判断と軽減税率の制度設計も迫ってくる。国民の納得を得るために、徹底した議論をしなければならない。

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