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公明新聞:2013年5月30日(木)付

外国人案内所に認定制度

今年4月、月別の訪日外国人旅行者数が推計で初めて90万人を突破し、過去最高を記録した。こうした中、注目されているのが、外国人観光案内所の認定制度だ。この制度が導入されたことによって、観光サービスの質が向上。外国人が安心して旅行できる環境づくりが進んでいる。各地の案内所の取り組みを追った。

全国で342カ所 サービスの質高める
訪日旅行者数 4月、初めて90万人突破

月別の訪日外国人旅行者数の推移人気スポット、東京都台東区の浅草は、多くの外国人旅行者でにぎわう。近くを流れる隅田川の対岸には、開業1周年を迎えたばかりの東京スカイツリーがそびえ、「ワンダフル!」と感嘆の声を上げながら、写真撮影する姿も。

日本政府観光局(JNTO)の発表によれば、今年4月の訪日外国人旅行者数(推計)は、前年同月比18.1%増の92万3000人となり、単月として初めて90万人を突破。これまで過去最高だった2010年7月の約87万人を更新した【グラフ参照】。円安の影響や、格安航空会社の路線が充実したことが、大幅な集客増の要因。外国人旅行者が安心して旅行できる環境づくりを進めてきたことも奏功している。

そうした取り組みの一つが、外国人観光案内所の認定制度だ。観光庁の指針に基づき、JNTOが認定を行う。12年10月から開始され、全国で342カ所(13年3月現在)の案内所が認定を受けている。

同制度の特徴は、案内所のサービスを「見える化」したことだ。提供するサービス内容や機能などにより、案内所を三つのカテゴリーに分類。全国の交通機関の利用方法や観光情報を提供し、英語・中国語・韓国語の3カ国語で対応できる案内所は「カテゴリー3」とされ、来日して最初に訪れる地域や特に多く訪れる地域にあることも求められる。

英語が話せるスタッフが常駐し、広域観光情報などを提供できる案内所は「カテゴリー2」。何らかの形で英語対応ができ、ローカルな観光情報を提供できる案内所は「カテゴリー1」とされ、最も多い197カ所ある。

見える化とともに、ネットワークの構築も大きな狙いだ。カテゴリー3の案内所が、カテゴリー2の案内所へ観光客をつなぐといったような、案内所同士の連携を促す。それぞれの利点を共有できれば、案内所全体として機能の底上げも期待できる。観光庁の担当者は「観光客が最終的な目的地へ行くまで、切れ目のない案内所同士のネットワークを構築したい」と述べている。

顔の見える対応で「日本」伝える
アジアの民間交流の拡大に期待


サービス内容が一目で分かるように記載されたTICの看板東京都千代田区丸の内にある、JNTO直営の観光案内所「ツーリスト・インフォメーション・センター」(TIC)。受付カウンターでは、フランスから来日した男性2人に対し、富士山への行き方などについて女性職員が丁寧に対応。2人とも満足そうな笑顔で案内所を後にした。

同センターでは、春になると桜前線マップをスタッフが手作りで作成し、外国人旅行者から問い合わせの多い最新の開花情報を提供している。2階部分には、着物の試着など日本文化を体験できるスペースも設け、多様なニーズに対応してきた。

JNTO担当者は、「日本に来て初めて分かる情報もある。顔の見える対応で的確な情報をタイムリーに提供できるのが案内所のメリットだ」と強調する。

京都府・市が共同で設置した京都総合観光案内所(愛称・京なび)は、西日本で唯一、カテゴリー3に認定された施設。JR京都駅ビル内にあり、利便性が高いことが大きな特徴だ。

黒を基調としたデザインで、内部には京都文化に関する小物が展示され、古都ならではの魅力に触れることができる。12年11月以降、来場者数(スタッフが対応した数)は前年同月と比べ軒並み大幅に増えた。市担当者は「京都の玄関口の案内所として、ますます役割は大きくなる」と話す。

一方、福岡県の福岡市観光案内所(中央区天神)では、韓国からの旅行者が外国人利用者のうち6~7割を占める。中心スタッフ3人中2人が、韓国語を話すことができる。「案内所も旅の思い出の一つ。良い印象を持って母国に帰ってもらうことが役目だ」と担当者は語る。

訪日外国人旅行者数が過去最高となった4月。JNTOによれば、韓国や香港、シンガポールなどアジア地域からの客足が特に伸びた。

中国、韓国からの旅行者も数多く案内所を訪れている。両国との関係が難しい時だからこそ、観光を通じた民間交流の果たす役割は、ますます大きくなっているといえよう。

公明「観光立国」リード

公明党は一貫して「観光立国・日本」の実現に取り組んできた。とりわけ06年には観光立国推進基本法の制定を強力に促進。その際、観光行政の司令塔である観光庁の設置について衆参両院での決議の可決を後押しし、08年10月に正式に発足した。

5月24日に公明党が政府に提言した「日本経済再生のための成長戦略」の中でも、観光ビザの発給要件緩和や外国人の慣習にあった施設・案内表示・サービスの提供など、訪日観光客増大のための環境整備を訴えている。

党国土交通部会長の高木陽介衆院議員は「海外からの観光客を呼び込むことが経済成長にとっても重要だ。円安の影響で訪日外国人数は増えているが、一過性のものとすることなく、観光ビザの発給要件緩和などに取り組んでいきたい」と語っている。

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